TKAクリニカルパスにおける杖歩行開始時期と最終アウトカムとの関連性についての検討

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【目的】<BR>当院では人工膝関節全置換術(以下TKA)施行患者に対し、クリニカルパス(以下パス)を導入し運用している。術後4日目より患肢全荷重での歩行訓練を開始し、平行棒内歩行、歩行器歩行、杖歩行へと安定し次第、段階的に歩行訓練を進め、T字杖200m連続歩行の獲得を自宅退院基準とし、術後28日以内での自宅退院を最終アウトカムとしている。これまで自宅退院の判断は、術後21日前後から始めているため、退院・転院調整の遅れが生じ、術後28日以降の退院となる場合もあった。1週間という期間での退院・転院調整は難しく、早期からの自宅退院の判断が望まれる。以前の調査で、当院TKAパス達成者と未達成者において杖歩行開始時期に統計的有意差が認められている事から、今回、杖歩行開始時期を基に、早期での自宅退院の判断が可能か検討した。<BR>【方法】<BR>対象は2007年1月から2010年5月までにTKAを施行し上記パスを使用した126例で、28日以内に自宅退院した群(以下達成群)87例(男15,女72、73.5±7.1歳)と、28日以降に退院した群(以下未達成群)39例(男4,女35、76.1±5.4歳)である。TKAパス126例中、14日で杖歩行開始していたのは19例で最も多かった。最頻値である14日での杖歩行を基に、術後14日以内で杖歩行開始(以下14日杖歩行)した症例を達成群と未達成群からそれぞれ算出し、28日以内自宅退院と14日杖歩行との関連性があるかχ2独立性の検定を用い検討した。<BR>【説明と同意】<BR>訓練の実施については初回に必要性と内容について書面にて説明し、同意を得ている。訓練結果等については院内掲示板等により患者・家族に周知している武蔵野赤十字病院個人情報保護方針および武蔵野赤十字病院個人情報保護要領(平成17年4月1日施行)の定めるとおり、個人を識別、特定できないようにしている。<BR>【結果】<BR>14日杖歩行開始したのは達成群87例中70例(80%)、未達成群39例中21例(54%)で両群合わせての合計は126例中91例(72%)であった。14日杖歩行開始できなかったのは達成群87例中17例、未達成群39例中18例で、両群合わせての合計は126例中35例であった。その内、深部静脈血栓症や関節内洗浄など、治療を要する術後合併症を有するものは達成群87例中3例、未達成群39例中13例であった。χ2独立性の検定を用いた結果、28日以内自宅退院と14日杖歩行との間に関連性が認められた(P<0.05)。<BR>【考察】<BR>28日以内自宅退院と14日杖歩行との関連性があった事から、14日杖歩行開始した場合、28日以内での自宅退院が見込まれる。杖歩行開始時点で退院の日程や自宅環境の調整を開始する事で、円滑な退院調整が可能と分かった。これにより術後28日を待たずに自宅退院を勧める事ができ、在院日数の短縮が図れると考える。未達成群の14日杖歩行例には、術後合併症に対する治療の為に28日を越えての退院となった例もあるため、合併症の状態が安定したらすぐにも自宅退院できる準備を整えていくべきである。14日杖開始日を基に早期での自宅退院の判断が可能であるが、14日杖歩行未達成の例にこそ、問題点を早期に描出し別の視点も考慮に入れて、時間をかけても自宅退院への訓練プログラムの変更をすべきと考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>術後2週の杖歩行開始した時点で自宅退院へ向けた調整を行っていくことにより退院調整が円滑になり、在院日数の短縮も図れると考えられた。今後は達成群・未達成群においての最終アウトカムに影響を与える因子のさらなる調査を継続する必要があると考える。<BR>

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