介護と就業継続に関する意識調査

DOI
  • 寺尾 詩子
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 清川 恵子
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 大槻 かおる
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 萩原 文子
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 大島 奈緒美
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 熊切 博美
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部
  • 三枝 南十
    (社)神奈川県理学療法士会 会員ライフサポート部

抄録

【はじめに、目的】 当部ではライフサイクルと就業継続に関する問題をテーマに、啓発活動、情報発信、会員支援事業を行っている。これまでは、20歳代、30歳代の女性理学療法士が多く、休会会員もこの年代が圧倒的に多いため、出産育児に関連した事業を中心に活動してきた。その活動の中で、子育てと同様に就業継続の問題となる「家族の介護」についても取り上げていく必要性があると感じてきた。介護は子育てと違い、時期、期間、負担の内容などが事前に想定しにくく、自分の問題として意識しにくい面がある。しかも誰もが当事者となる可能性がある問題である。そこで、どのくらいの会員が家族の介護に直面しているのか、どのくらい将来の介護負担について問題認識があるのかを把握することを目的に、アンケート調査を行ったので報告する。【方法】 調査対象は、当会会員3447名、調査期間は平成23年7月の1か月間で、方法は個別に質問紙、回答用紙、返信封筒を送付し、郵送にて回収した。質問紙の内容は、基本属性、介護負担の有無、介護の対象者・内容、将来の家族介護の可能性と介護に対する不安である。【倫理的配慮、説明と同意】 調査実施時は調査依頼文にて目的や学会などでの公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。【結果】 有効回答者数は945名で、回収率は27.4%であった。回収率の内訳は、男性26.1%(483名)、女性28.8%(460名)、年代別には40歳代が最も多く32.4%(152名)、次に30歳代が31.4%(364名)、50歳代が28.9%(35名)、20歳代が26.2%(378名)、60歳代以上が21.6%(11名)の順であった。現在介護中の人は945名中43名(4.6%)で男性19名、女性24名であった。年代別には20歳代が8名、30歳代が9名、40歳代が17名、50歳代が5名、60歳代以上が4名であった。介護対象者は両親が最も多く、次いで祖父母、配偶者、その他の順であった。そのうち負担、不安を感じているのは43名中31名(72%)で内容は、複数回答で経済面が16名(50.0%)、就業継続が12名(37.5%)、親族との関係・その他がそれぞれ7名(21.9%)であった。一方、介護中ではない902名を対象に、将来の家族介護の可能性について質問すると、可能性が「ある」が542名(60.0%)、「ない」が46名(5.1%)、「どちらともいえない」が313名(34.7%)であった。将来の介護に不安が「ある」との回答は497名(88.8%)、「ない」が63名(11.2%) であった。不安の内容については、就業継続が333名(67.0%)、経済面が327名(65.8%)、親族との関係性が145名(29.2%)、その他が56名(11.3%)であった。その他の内容としては「体力面」「精神面」が多く挙がっていた。また、その中にはあえて「就業継続」は不安内容として選択せず、その他として「体力面」「精神面」を挙げている場合が散見された。介護中だが負担、不安が「ない」と答えた人の背景としては、介護認定なし~要介護1の介護がほとんどで、要介護5の場合も施設入所での介護支援であり、同居者、親族の援助もある場合が多かった。また、将来、介護に関して不安がないと答えた人の背景をみると、性別、年齢、勤務施設、家族構成で特徴は認めなかった。【考察】 現在介護中、将来の介護の可能性ともに性別、年齢に割合の差はほとんどなく、理学療法士としての知識や経験があっても「不安」との回答者は圧倒的に多かった。以上より、誰にでも家族介護の問題は起こり得る問題であることが再認識された。しかし、今回の調査での回収率は低かったため、会員がどのくらい家族介護に直面しているかについての調査は不十分なものとなった。回収率の低さは郵送法で短期間に調査したことが大きな原因であるが、介護による就業の問題についての関心の低さが表れていることも否定できない。このことからも、就業継続の問題に家族介護があること、それは他人事ではない問題であるということを広く認識してもらうことが重要であると認識できた。したがって、今後の就業継続支援のための活動として、介護による就業継続の問題についての啓発活動、両立者の体験談や援助制度についての情報発信を行っていくことは必要な活動であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 さまざまなライフワークの中で理学療法士として就業が継続できる働きやすい環境を支援することで、理学療法士の地位や質の向上にもつながると考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Gb0790-Gb0790, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549001216
  • NII論文ID
    130004693694
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.gb0790.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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