足部内在屈筋筋力トレーニングによるアーチ形成効果について
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- ─トレーニング前後における縦アーチ長と横アーチ長の比較─
Description
【目的】 我々は、第45回および46回日本理学療法学術大会において、足部内在屈筋を中心とした足趾把持筋力値の測定方法の確立、トレーニング方法の確立、トレーニングによる筋力値向上効果を報告している。本研究の目的は、確立したトレーニングの実施前後におけるアーチ形成効果の有無について検証することである。【方法】 身体に際立った既往歴のない健常男性12名の左右それぞれ、計24足を対象とした。平均年齢は、29.3±4.6歳、平均身長172.5±7.3cm、平均体重64.9±12.8kgであった。アーチ測定は、縦アーチ長および横アーチ長とし、ベルケマンフットプリントを用いて静的立位で作成し、左右それぞれ計測した。縦アーチ長は、踵骨隆起より母趾中足骨頭までの距離を定規で計測した。横アーチ長は、第I中足骨頭部と第V中足骨頭部を結んだ距離を定規で計測した。足部内在屈筋の筋力トレーニング方法は、第46回本学会報告内容と同様にトレーニング肢位を股関節90°屈曲位の長座位とし膝関節伸展位、足関節最大底屈位で固定した。足趾は、SAKAI社製フィンガースリングC7791を用いて全趾それぞれを牽引し、屈曲最終域で設定負荷が加わるよう固定した。この時、足趾自動屈曲運動にて、DIP関節の屈曲運動が生じないことを確認し、第1趾ではMP関節屈曲、第2趾から第5趾ではPIP・MP関節屈曲運動を実施した。トレーニング期間は8週間、頻度は週3回で1日1回、回数は200回で、負荷量は、SANKO社製バネ秤(秤量10kg)を用い、3kgに設定した。運動のリズムは、慣れるまではメトロノームを使用し、1秒で屈曲し1秒で元の状態へ戻すことを繰り返し2秒に1回のリズムで左右同時に実施した。統計処理は、左右ともにトレーニング前の値とトレーニング後の値を、対応のあるt-testを用い検討した。なお、統計学的有意水準は危険率5%未満とし、統計処理には、SPSS;Version14.0(SPSS JAPAN Inc.)を使用した。【説明と同意】 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科倫理委員会の承認(21-34号)を得たのち、全被検者に本研究の目的、内容について説明し、書面にて同意を得た。【結果】 縦アーチ長として、左縦アーチ長はトレーニング前平均18.7±0.8cm、トレーニング後平均18.0±0.7cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。右縦アーチ長はトレーニング前平均18.7±0.6cm、トレーニング後平均18.0±0.8cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。両側の縦アーチ長は、トレーニング後に短縮した。横アーチ長として、左横アーチ長はトレーニング前平均10.4±0.4cm、トレーニング後平均10.1±0.4cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。右横アーチ長はトレーニング前平均10.4±0.4cm、トレーニング後平均10.2±0.4cmとなり、トレーニング前後で有意な差(p<0.01)がみられた。両側の横アーチ長は、トレーニング後に短縮した。【考察】 本トレーニング前後における縦アーチ長と横アーチ長は、両者においてトレーニング後に短縮を認め、いわゆるアーチ形成効果があることを示唆した。これは、動的支持機構である足部内在屈筋の筋力増大に伴いアーチ形成が可能になったと考える。また、足部内在屈筋筋力トレーニング肢位の足関節最大底屈位固定は、縦アーチおよび横アーチを骨性に制動される範囲に高められた肢位となり、アーチ形成位における短縮位までの足部内在屈筋筋力トレーニングが遂行できたと考える。このことに加え、足部内在屈筋筋力トレーニングとして主な短母趾屈筋および短趾屈筋の筋収縮力だけではなく、周辺および深層筋として位置する母趾外転筋、母趾内転筋、虫様筋、骨間筋、足底方形筋、小趾外転筋、小趾対立筋、短小趾屈筋などの筋収縮効率をも高めると同時に、筋力トレーニングが図られた結果としてのアーチ形成であることも推察された。本研究によって得られた動的支持機構としてのアーチ形成効果は、動的安定化機構の再獲得、衝撃緩衝としてのアーチ可動範囲の増大、自重負荷および足底部床の反力からの緩衝作用、重心軌跡の安定化としての作用が十分に発揮されるものと推察された。【理学療法学研究としての意義】 足部内在屈筋筋力トレーニングは、静的立位での縦アーチ長および横アーチ長を短縮させ、いわゆるアーチ形成効果が示唆された。動的支持機構としての縦・横アーチ形成には、足部内在屈筋筋力トレーニングは有効かつ重要な方法であり、アーチ形成に伴う効果も十分期待される。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Ca0212-Ca0212, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549005056
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- NII Article ID
- 130004692886
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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