垂直跳びに影響を及ぼす因子の検討
Description
【目的】<BR> スポーツ選手の受傷部位の回復の評価を行うにあたり筋力や関節可動域などの機能レベルの評価のほかに、パフォーマンスの評価も重要となる。なかでも垂直跳びの能力はジャンプ動作を必要とするバレーボールやバスケットボール、ハンドボールなどの競技では重要な要素となる。また、サッカーでもヘディングで相手選手と競る際にどれだけ高く跳べるかは重要である。このように多くの競技種目で垂直跳びの能力は重要と判断できる。ジャンプ動作の先行研究では、垂直跳び動作は上肢―体幹―下肢の運動を使った全身運動であるとされている。とくに下肢筋力との関係は多くの先行研究で確認されている。しかし、垂直跳びは運動速度の速さが求められるためピークトルクだけでなくピークトルクの発生時間も影響するのではないかと考えた。そこで本研究では垂直跳び能力に影響を与える因子について検討した。<BR>【方法】<BR> 対象は、大学バレーボール部に所属する健常な男子9名(平均年齢20.7±0.4、平均身長174.5±2.7、平均体重68.4±2.)である。垂直跳び能力は、竹井機器工業製ジャンプMDを使用し、助走なくその場でできるだけ高く両脚にて跳ぶように指示した。2回実施し最大値を採用した。膝関節屈曲・伸展のピークトルクおよびピークトルク発生時間の測定には等速性筋力測定機器BIODEX(酒井医療)を使用し、角速度60°/secにてピークトルク値を測定し、それを体重で除し屈曲および伸展トルク体重比として求め、ピークトルク発生までの時間も測定した。また、体幹の筋力評価として大阪市大方式Kraus-Weberテスト変法を行った。統計学的分析としてスピアマンの順位相関係数検定を用いて、垂直跳び能力と左右の屈曲および伸展ピークトルク体重比、それぞれのピークトルク発生時間、Kraus-Weberテストの関連性を分析した。統計的有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR> 対象者にはあらかじめ研究の趣旨と内容、および個人情報の管理について書面および口頭にて説明し、同意の得られた男子大学生について研究を開始した。<BR>【結果】<BR> 垂直跳び能力と有意な相関を示したのは、右伸展ピークトルク体重比(r=0.52,p<0.05)、左伸展ピークトルク体重比(r=0.50,p<0.05)、Kraus-Weberテスト(r=0.68, p<0.05)であり、その他の評価項目とは有意な相関はみられなかった。<BR>【考察】<BR> 今回、垂直跳び能力と有意な相関が認められたのは、左右伸展ピークトルク体重比、Kraus-Weberテストであり、左伸展ピークトルク体重比、左右屈曲ピークトルク体重比、左右伸展および屈曲ピークトルク発生時間とは有意な相関を示さなかった。垂直跳びは助走なくその場でできるだけ高く両脚にて跳ぶ課題であり、股関節・膝関節屈曲位からの伸展運動となるため、大腿四頭筋の活動性増大は容易に想像でき、伸展ピークトルク体重比との高い相関は矛盾しない。西廣らは膝関節伸展筋のトレーニングで垂直方向の跳躍距離が延長すると報告しており、矛盾しない。Kraus-Weberテストは腹筋の瞬発力と持久力の評価であり、久保らは垂直跳びの動作評価から体幹は屈曲から伸展、最高到達点での身体の保持、着地の際には股関節・膝関節の屈曲に伴い体幹も屈曲し、その後伸展という一連の動作を一瞬で行う必要があると報告していることから、体幹の機能が垂直跳びと有意な相関があることは納得できる。しかし、今回着目したピークトルク発生時間は屈曲・伸展ともに有意な相関は示さなかった。その理由として、垂直跳びでは運動速度の速さが求められるため、高速度条件のもとでの筋力測定が必要であったが、今回は角速度60°/secと低速度の運動速度であったことが要因ではないかと思われる。Gauffinらは高速度の等速性膝関節トルクと跳躍能力に有意な相関関係があることを見出していることからも、今後の展望として角速度180°/sec、300°/secでの測定を行い再度検討していきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 競技復帰するにあたり、パフォーマンスの評価は非常に重要であるが理学療法の現場では困難なことも多く、筋力増強に終始していることも多い。本研究をすすめることで筋力増強のみでは不十分であることを認識し、増強させた筋をいかに速く収縮させ、パフォーマンスに生かしていく重要性を検証していきたい。<BR><BR>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), C4P3113-C4P3113, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549065216
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- NII Article ID
- 130004582495
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed