バドミントン選手における片脚立位バランス能力と足趾筋力の関係について
Description
【目的】立位姿勢の制御には足趾機能が影響するとされ,足趾筋力が強いほど姿勢制御能は高いとされる.スポーツ動作には姿勢制御が不可欠であることから,高いパフォーマンスを発揮するには高い姿勢制御能と足趾筋力の強さが必要であると考えられる.つまり競技レベルの高いトップレベルの選手は,高い立位姿勢制御能を有しており足趾筋力も強いと推測される.そこで今回,トップレベルのバドミントン選手と一般健常人の立位バランス能力と足趾筋力を比較し検討した.<BR>【方法】対象は病的機能障害を有しない男性16名.トップレベルのバドミントン選手群(以下、バドミントン群)として,バドミントン男子日本リーグ所属の7名(年齢25.6±3.9歳,身長175.7±6.9cm,体重75.0±4.8kg),一般健常人群(以下,一般群)として9名(年齢32.4±5.7歳,身長170.5±8.4cm,体重62.3±9.6kg)とした.<BR>測定項目は立位バランス能力が片脚立位バランス能力,足趾筋力は足趾把持力,母趾圧迫力,第2~4趾圧迫力とし,各2回ずつ測定して平均値にて比較した.片脚立位バランス能力は重心動揺計(Anima製,Gravicorder GS-7)を用いて,30秒間における総軌跡長,外周面積を測定した.足趾把持力の測定は,椅座位にて握力計(竹井工業製を改良)を足趾で握らせ測定した.母趾圧迫力,第2~4趾圧迫力の測定は,椅座位にてハンドダイナモメーター(Anima製,μ-tass F-1)を押させて測定した. 各測定項目を利き手と同側脚(以下,同側脚)利き手と対側脚(以下,対側脚)ごとにMann-whitneyのU検定を用いて2群間で比較し,片脚立位バランス能力と足趾筋力の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.なお危険率5%未満を統計学的有意水準とした.<BR>【説明と同意】対象16名には,研究の趣旨と個人情報の取り扱いについて十分に配慮することを説明し同意を得た.<BR>【結果】総軌跡長は,同側脚がバドミントン群:126.7±48.9cm,一般群:124.9±28.5cm,対側脚がバドミントン群:120.7±32.6cm,一般群:124.2±30.5cmであった.外周面積は,同側脚がバドミントン群:5.6±1.6cm2,一般群:5.3±1.3cm2,対側脚がバドミントン群:5.6±±2.0cm2,一般群:6.0±1.7cm2であった.足趾把持力は,同側脚がバドミントン群:13.0±3.6kg,一般群:10.1±3.7kg,対側脚がバドミントン群:12.5±3.7kg,一般群:10.2±3.4kgであった.母趾圧迫力は,同側脚がバドミントン群:14.3±2.6kg,一般群:10.3±5.0kg,対側脚がバドミントン群:11.6±5.2kg,一般群:10.4±5.0kgであった.第2~4趾圧迫力は,同側脚がバドミントン群:10.5±3.4kg,一般群:5.9±2.6kg,対側脚がバドミントン群:9.2±2.5kg,一般群:7.2±3.3kgであった.<BR>総軌跡長,外周面積,足趾把持力,母趾圧迫力では2群間に有意差は認めなかった.第2~4趾圧迫力は,同側脚ではバドミントン群が有意に高値(p<0.05)であったが対側脚では有意差は認めなかった.総軌跡長・外周面積と各足趾筋力の関係は,一般群では両脚ともに相関関係を認めなかったが,バドミントン群では同側脚の総軌跡長と第2~4趾圧迫力の間に負の相関関係(r=-0.93,p<0.05)を認め,その他では相関関係を認めなかった. <BR>【考察】一般群に比べバドミントン群では,高い片脚立位バランス能力を有してはいなかった.足趾筋力においては全ての項目で,バドミントン群の筋力が強く,特に同側脚の第2~4趾圧迫力では有意に強かった.また両脚間での比較では,バドミントン群では全ての項目で同側脚の筋力が強かった.これらはバドミントンでは,同側脚が前後左右へのステップ脚(体重の支持脚)となり,また1打ごとにコート中心へ戻るための蹴り脚となる.そのため同側脚の足趾筋力が発達したものと考えられる.また足趾機能分化の報告によると,第2~5趾は偏位した重心を中心に戻す作用があるとされており,コート中心に戻る際には特に同側脚の第2~5趾を主体に使用していることが考えられる.さらに同側脚の第2~4趾圧迫力は片脚立位バランス能力と強く相関しており,この点からもバドミントン競技においては,同側脚の第2~4趾圧迫力の強さが重要であると考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】片脚立位バランスと足趾筋力に関する研究は,転倒予防分野でのものが多くスポーツ分野での研究は少ない.今回の研究により,スポーツ選手においても足趾筋力の強さが片脚立位バランス能力に影響するということが示された.さらに足趾筋力には,競技特性が影響していると考えられ,今後さらに他競技での検討も必要であると考えられた.<BR>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), C3O3053-C3O3053, 2010
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549283840
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- NII Article ID
- 130004582339
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed