内側縦アーチ高率の違いによる歩行時の母趾外転筋について
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- 藤田 翔平
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 安倍 浩之
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 小林 裕和
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 下 嘉幸
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 岡田 英治
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 森下 真樹
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 大野 加代子
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 田中 亜沙美
- (有)ふらむはぁとリハビリねっと 訪問看護事業部
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- 常盤 香代子
- 大阪リハビリテーション専門学校
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- 福山 支伸
- 若狭医療福祉専門学校
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- 田中 伸幸
- 岸本病院 リハビリテーション科
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- 川口 善教
- 岸本病院 リハビリテーション科
Description
【目的】<BR> 歩行において内側縦アーチの機能は、接床時の衝撃緩衝作用や立脚期全般の足部の運動性などに重要な役割を担っている。Mini-Soumi研究(1982)では健常者の70%以上に足の構造異常が認められると報告されており、内側縦アーチ高率(以下アーチ高率)に注目して歩行時の筋活動を見ることは意義深い。<BR> 長腓骨筋・長母趾屈筋・後脛骨筋・母趾外転筋(以下AH)などの筋群は内側縦アーチ保持に作用すると考えられており、我々は第24回東海北陸理学療法学術大会にて、アーチ高率と歩行時の筋活動様式(活動開始時期・活動時間・活動終了時期)の関係について報告した。その結果、AHの筋活動において、アーチ高率の高い者は主に立脚中期以降から相動的に活動し始め、アーチ高率の低い者は立脚期全般にわたって多相性に活動していた。今回、アーチ高率の違いが歩行時AH筋活動のピーク値とその出現時期にどのような影響を与えるのか筋電図学的分析を行なったので、若干の考察を加えて報告する。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は整形外科的疾患のない健常成人18名(男性8名・女性10名、平均年齢23.1歳±2.57歳、平均体重61kg±9.48kg)であり、測定足は軸足とした。アーチ高率の測定は、まず、軸足を体重計の上に乗せ、均等な荷重がかかるような立位保持とした。そして、その姿勢で舟状骨高を計測し、大久保が提唱している足アーチ高率(舟状骨高/足長×100)を算出した。<BR> 筋電図の測定は、10m自然歩行におけるAH筋活動をNORAXON社TeleMyo2400TG2を用いて計測した。まず、AHの最大等尺性収縮時の筋活動を3秒間計測し、筋電波形をMyoResearchXPに全波整流化し、平均電位を算出した。そして、歩行時立脚期のAHのピーク電位を、3秒間最大等尺性収縮の平均電位の百分率(%)として算出した。また、歩行立脚期におけるAH筋活動電位のピーク値出現時期(%)を調べた。<BR> 統計処理には、アーチ高率とAH筋活動電位ピーク値(%)又はAHピーク値出現時期(%)との関係を明かにするため、Fisherの相関分析を用いた。<BR><BR>【説明と同意】<BR> ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には事前に研究目的、測定方法を十分に説明し同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> アーチ高率の分類は鳴海(2002)らの分類を元に行った。L群(11%以下)4名、M群(11~15%の範囲内)10名、H群(15%以上)4名であった。<BR> アーチ高率とAHのピーク値出現時期との間に相関は認められなかった(r=0.025)。ピークが立脚期の前半に見られた者は4名、後半に見られた者は14名であった。尚、立脚期の前半にピークが見られた者は、L群が1名、M群が3名であった。<BR> またAHのアーチ高率とピーク値との間には負の相関を認めた(r=-0.723)。L群の平均ピーク値は77.85±7.9%、M群の平均ピーク値は50.3±19.2%、H群の平均ピーク値は32.2±9.1%であった。<BR><BR>【考察】<BR> Tittel.K(1994)によると、AHの活動は立脚期の約60%で始まると報告されており、当然、ピーク値出現時期はその範囲内にあると考えられる。今回の結果においても、ピーク値出現時期は主に立脚期の60~90%にあり、アーチ高率に影響を受けることはなかった。<BR>しかし、前述した4ケースにおいて踵接地期~足底接地期にピーク値が出現した。これら例外的な結果には、Toe-in歩行やToe-offが見られない歩行、また肥満などの要因が関与しているものと考えられるが、今後の検討課題である。<BR> 又、アーチ高率と歩行時AHのピーク値との間に負の相関を認めた。L群の平均ピーク値は77.85±7.9%、一方H群の平均ピーク値は32.2±9.1%であった。アーチ高率の低下に伴い、AHの活動が過剰になることを示唆している。<BR>以上の結果から、アーチ高率の低いケースでは立脚中期以降、母趾球に荷重が移行した際、heel-in、前足部の外転、足部アーチの低下などによる歩行効率の低下を極力避ける機序が働き、AHが過剰に活動するものと洞察される。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 足部内側縦アーチの低下がAHの筋活動に与える影響を調べた。先行研究では、「足部内側縦アーチの低下している場合、AHの筋活動は歩行立脚期全般にわたって多相性に活動する。」ことが分かった。今回は、足部内側縦アーチの低下している場合、AHの筋活動のピーク値とその出現時期について検討した。その結果、ピーク値出現時期は異常ではなかったが、過剰ピーク値を示した。<BR> これらの研究は、「足部内側縦アーチの低下が歩行時の疲労や外反母趾などの変形促進機序などに如何に関係しているのか」を解明するための先行研究である。足の構造異常が運動器に及ぼす影響を解明し、その是正を図ることによって予防学的理学療法の価値を高めることになると確信している。<BR>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), C3O3054-C3O3054, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549284992
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- NII Article ID
- 130004582340
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed