肩関節内・外旋可動域に影響を及ぼす因子の検討

  • 山内 正雄
    愛媛県スポーツ医科学研究会 済生会西条病院
  • 末廣 忠延
    愛媛県スポーツ医科学研究会 済生会西条病院
  • 中川 誠一
    愛媛県スポーツ医科学研究会 宇和島社会保険病院
  • 近藤 正太
    愛媛県スポーツ医科学研究会 三津整形外科
  • 成田 甲子朗
    愛媛県スポーツ医科学研究会 三津整形外科
  • 定松 修一
    愛媛県スポーツ医科学研究会 松山赤十字病院
  • 吉田 宏史
    愛媛県スポーツ医科学研究会 松山赤十字病院
  • 越智 仁紀
    愛媛県スポーツ医科学研究会 真泉会第一病院
  • 山崎 準平
    愛媛県スポーツ医科学研究会 済生会松山病院
  • 加地 和正
    愛媛県スポーツ医科学研究会 ながやす整形外科クリニック
  • 小倉 好正
    愛媛県スポーツ医科学研究会 愛媛県高等学校野球連盟

Bibliographic Information

Other Title
  • 愛媛県下3高等学校のメディカルチェックの結果から

Description

【目的】愛媛県理学療法士会スポーツ医科学研究会では,愛媛県高等学校野球連盟の要請により,平成20年より高校野球メディカルチェック事業を行っている.目的は、肩・肘関節を中心に障害の早期発見と予防である.今回,アンケート調査と医師・理学療法士の検査による各部位の障害と,肩関節内・外旋の可動域の関係について検討したので報告する.<BR><BR>【方法】 愛媛県内の高校3校の野球部1年生に対して,アンケート調査とメディカルチェックを行った.内容としては,1)投球側,2)打撃側,3)野球歴,4)投手歴,5)病歴(1カ月以上続く痛みがあった部位),6)肩の圧痛・インピンジメント・筋委縮・棘上筋と棘下筋テスト,7)肘の圧痛・不安定性テスト・インピンジメント,8)肩関節と肘関節の可動域テストである.可動域テストは,背臥位にて肩関節90度外転位での内旋(以下2nd内旋)および外旋(以下2nd外旋),肘関節の屈曲・伸展,回内・回外の可動域を測定した.このうち,1)~5)はアンケート形式で本人に記入してもらい,6)~7)は整形外科医による診察を行い,8)は理学療法士が可動域テストを行った.可動域テストは,2人の理学療法士がペアになり,1人が関節の可動範囲を動かし,1人が角度計で測定した.なお事前に評価手技を確認し,肩関節の可動域テストにおいては肩甲骨をできるだけ固定する方法で行った.<BR>今回,メディカルチェックを実施した選手76名のうち,投手歴3年以上の投手30名について,1カ月以上続く痛みがあった部位を上肢と体幹・下肢に分け,各部位の疼痛が肩関節内・外旋の可動域にどんな影響を及ぼしているのかを,投球側と非投球側の角度比率(以下健側比)と疼痛がみられなかった選手の健側比と比較検討した.<BR><BR>【説明と同意】本研究については,愛媛県高野連の理事長と高校の野球部長を通じて対象者に説明し,同意を得た.<BR><BR>【結果】 部位を問わず1か月以上続く疼痛を経験していた選手は,30名のうち19名(63.3%)であった.疼痛部位は,肩が6例,肘が8例,腰が7例,股が1例,膝が6例,足が3例であった.<BR>疼痛を経験していた選手19名の非投球側の2nd内旋は65.5度2nd外旋は104.5度で,投球側の2nd内旋は56.1度(健側比86%)2nd外旋は106.3度(健側比101.7%)であった.1か月以上続く疼痛を経験していない選手11名の非投球側の2nd内旋は62.7度2nd外旋は110.9度で,投球側の2nd内旋は59.5度(健側比94.9%)2nd外旋は111.8度(健側比100.8%)であった.<BR>また上下肢の疼痛部位別に分けた内・外旋の可動域は,肩・肘など上肢のみに疼痛を経験した選手5名の非投球側の2nd内旋は67度2nd外旋は106度で,投球側の2nd内旋は55度(健側比82.1%)2nd外旋は103度(健側比97.2%)であった.腰・膝など体幹・下肢のみに疼痛を経験した選手は8名で,非投球側の2nd内旋は63.7度2nd外旋は105度で,投球側の2nd内旋は57.5度(健側比90.3%)2nd外旋は108.7度(健側比103.5%)であった.上肢・体幹・下肢に疼痛を経験した選手は6名で,非投球側の2nd内旋は66.7度2nd外旋は102.5度で,投球側の2nd内旋は55度(健側比82.4%)2nd外旋は105.8度(健側比103.2%)であった.<BR><BR>【考察】投球動作に関連のある部位に1カ月以上続く疼痛を経験していた選手の投球側の2nd内旋は健側比86%(-9.4度)と減少していた。また,疼痛を経験していない選手の投球側の2nd内旋の健側比94.9%(-3.2度)と比較しても,明らかに内旋の可動域の低下が認められる。部位別にみると,上肢のみに疼痛を経験した選手の投球側の2nd内旋は健側比82.1%(-12度),体幹・下肢のみに疼痛を経験した選手の投球側の2nd内旋は健側比90.3%(-6.2度),上肢・体幹・下肢に疼痛を経験した選手の投球側の2nd内旋は82.4%(-11.7度)であり,上肢だけでなく体幹・下肢だけに疼痛がみられても2nd内旋の可動域が減少していた.<BR>投球動作は,下肢-体幹-肩甲骨-上肢の運動連鎖による一連の動きによって行われるため,運動連鎖のどこか一つに障害を抱えただけでも上手く機能しないことはよく知られている.今回,運動連鎖に関連のある部位であれば,体幹・下肢のみの継続した疼痛でも2nd内旋角度が減少することが示唆された.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】 青少年の野球障害発生に対する要因を検討した.今後野球を継続していくための障害予防のために,継続的な疼痛を経験した選手には,特に適切な姿位や方法で関節包や筋肉を中心としたストレッチなどのコンディショニングを継続的に行う必要性を認めた.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549307648
  • NII Article ID
    130004582278
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c3o2130.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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