FTAに影響する下肢骨アライメントの検討

  • 佐藤 俊彦
    IMSグループ新葛飾病院リハビリテーション室
  • 上野 亜紀
    IMSグループ新葛飾ロイヤルクリニックリハビリテーション室
  • 田中 啓充
    IMSグループ新葛飾病院リハビリテーション室
  • 鶴岡 浩司
    IMSグループ新葛飾ロイヤルクリニックリハビリテーション室
  • 西江 謙一郎
    IMSグループ新葛飾ロイヤルクリニックリハビリテーション室
  • 安廣 重伸
    IMSグループ新葛飾病院リハビリテーション室
  • 柚上 千春
    IMSグループ新葛飾ロイヤルクリニックリハビリテーション室
  • 江戸 優裕
    IMSグループ新葛飾ロイヤルクリニックリハビリテーション室 国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻福祉援助工学分野

Description

【はじめに、目的】 FTAはX線画像を用いた膝関節アライメントの評価法として最も一般的な項目である。FTAの増大は歩行中の膝関節外反モーメントの増加の原因となり(石井2003)、膝関節内側裂隙の圧縮応力の増大に繋がり(木藤ら2008)、更には変形性膝関節症(以下、膝OA)の進行を加速する要因になるとされる(Andriacchiら2004)。このような観点から、膝OA症例においてFTAの評価は臨床上特に重要視されている。しかし、FTAは大腿骨と脛骨の長軸同士が成す角度であるため、その間の膝関節面の形状を十分に評価することができない。この点を補完する評価指標が、FC-FS(大腿骨長軸と大腿骨内外顆の接線のなす外側の角度)、TP-TS(脛骨長軸と脛骨高原の線のなす外側の角度)、FC-TP(大腿骨顆部の接線と脛骨高原の線のなす外側の角度)であり、FTAはこれらの総和によって決定される。 本研究では、FC-FS、TP-TS、FC-TPのうち、FTAの構成に大きく寄与する骨アライメントを明らかにすることを目的とした。また、膝関節アライメントに関与する下肢の骨アライメントについても検討したので報告する。【方法】 対象は、2009年8月から2011年10月に当院で、内側型膝OAに対して片側の人工膝関節全置換術(以下、TKA)を施行した症例のうち、X線画像の使用に承諾を得た29名(平均年齢75.3±6.8歳、女性24名・男性5名、右側施行14名・左側施行15名)とした。対象者のTKA施行に際して、医師の処方の下、術前検査の目的で放射線技師により撮影されたX線画像を用いて、以下の9項目を計測した。 計測項目は膝関節ではFTA、FC-FS、TP-TS、FC-TPとした。その他の下肢の骨アライメントについては、大腿骨頚体角、Sharp角、CE角、脛骨長軸と内外果の最突出部を結ぶ線のなす外側角(以下、内外果傾斜角)、及び脛骨長軸と距腿関節の脛骨天蓋のなす外側角(以下、脛骨天蓋傾斜角)を計測した。 統計学的分析には、FTAを従属変数、FC-FS・TP-TS・FC-TPを独立変数としたstepwise重回帰分析を行った。また、各項目間の膝関節アライメントとその他の下肢骨のアライメントの関係について、ピアソンの積率相関係数を求めて検討した。有意水準は危険率5%(p<0.05)で判定した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の主旨を説明し、X線画像の使用に書面で同意を得た。【結果】 計測の結果、FTAが183.1±4.1°、FC-FSが84.4±3.2°、TP-TSが94.8±3.5°、FC-TPが4.1±3.2°、頚体角が125.8±7.3°、Sharp角が35±5.6°、CE角が46.2±7.7°、内外果傾斜角が100.7±5.8°、脛骨天蓋傾斜角が94.0±5.1°であった。 stepwise重回帰分析により得られた重回帰式において分散分析の結果は有意であった。FC-TP(p<0.01)、FC-FS(p<0.01)、TP-TS(p<0.05)の順で、偏回帰係数が大きかった。決定係数はR2=0.87であった。 また、膝アライメントに対する下肢骨アライメントの関係について、ピアソンの積率相関係数を求めた結果、TP-TSと内外果傾斜角度(r=0.48)、FC-TPとSharp角(r=-0.47)に有意な相関が認められた。FC-FSと各項目では相関は得られなかった。【考察】 重回帰分析の結果より、FC-TP 、FC-FS、TP-TSの順でFTAに大きく影響する事が分かった。つまり、大腿骨と脛骨の関節面のなす角度が、FTAに最も大きく影響していた。 また、相関分析より、TP-TSと内外果傾斜角度に正の相関がみられた。内外果の傾斜の増大は、腓骨の下制を意味しており、それにより歩行時に膝関節を外方化される事が考えられる。この下腿の外方傾斜が、脛骨高原の内側荷重面の摩耗を引き起こし、TP-TSを増大させていることが推察される。 また、FC-TPとSharp角には負の相関がみられた。両者の因果関係は、ある程度先天的に決まっている腸骨臼蓋の形態(Sharp角)によって、膝関節の内外反のアライメント(FC-TP)が後天的に変化してくると考える。臨床では、臼蓋形成不全がある場合、大腿が内旋し、膝関節の外反を伴うことを多く観察する。これは、今回の結果と一致する。【理学療法学研究としての意義】 本研究より、FTAのX線評価とともに、FC-FS、TP-TS、FC-TPを評価することで、股関節、足関節の骨形態、アライメントの変化と関係があることが示唆された。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549405568
  • NII Article ID
    130004692475
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ab0707.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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