福山型先天性筋ジストロフィーの粗大運動機能と年齢との関係について

書誌事項

タイトル別名
  • Gross Motor Function Measure(GMFM)を用いての検討

説明

【目的】<BR>福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama-type Congenital Muscular Dystrophy;以下FCMD)は筋ジストロフィー病変と脳奇形の病態より複雑・多様な臨床症状を示し、発生率は10万人に2.9人と報告されている。我が国固有の疾患であることなどから研究対象となることが少なかった.1975年に上田らにより報告された「福山型先天性筋ジストロフィー症における運動機能レベル」を用いることでFCMDの特徴的な機能を簡易的にとらえる事は可能であるが、粗大運動機能を総合的かつ詳細に捉えることは困難で、FCMD粗大運動機能の年齢的変化を十分に把握することは難しい。そこで今回、Gross Motor Function Measure(以下GMFM)を用いFCMDの粗大運動機能の評価を試み、年齢との関係について検討した。<BR>【方法】<BR>対象は当院通院中の福山型先天性筋ジストロフィー児者39名、男性21名、女性18名、平均年齢10.0±4.3歳(2-20歳)とし、全て1名の理学療法士がGMFMを用い、粗大運動機能について評価した。GMFMは項目Aの臥位と寝返り、項目Bの座位、項目Cの四つ這いと膝立ち、項目Dの立位、項目Eの歩行、走行とジャンプの正常な運動発達を基準とした5領域から構成されている。最初に、主に脳性まひで使用されているGMFMをFCMDに用いることについて、再現性、信頼性、妥当性を検討した。再現性は2回評価できた9名、男性7名、女性2名、平均年齢7.3±3.2歳(4-13歳)でテストリテスト法により、級内相関係数ICC(1.1)を検討した。信頼性は項目AからEの合計88項目について内的整合性をCronbach’sα係数にて、妥当性は上田らによる「福山型先天性筋ジストロフィー症における運動機能レベル」とGMFMの得点との相関についてPearsonの相関係数にて検討した。最後にGMFMの結果と年齢との関係について、散布図を作成しPearsonの相関係数にて検討した。統計学的分析には統計ソフト(SPSS statistics18)を用い有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR>本研究は東京女子医科大学安全倫理委員会および首都大学東京荒川キャンパス研究安全委員会の承諾を得て行い、本人および保護者には書面にて説明し、同意の署名を得た。<BR>【結果】<BR>1.テストリテスト法の評価間隔は平均4.0±2.2ヵ月で、再現性は項目Aで0.990、項目Bで0.985、総合で0.993であった。信頼性は0.956、妥当性は項目Aで0.885(p<0.05)、項目Bで0.917(p<0.05)、総合で0.947(p<0.05)といずれも高い結果となった。<BR>2.GMFMの項目C-Eで得点できたのは39名中3名(8%)のみであり、大部分において四這い以上の機能を獲得できていなかった。年齢的な傾向としては、2歳は点数が低くばらつきがあり、15歳以降は点数がほぼ0点であった。3歳から15歳におけるGMFMの点数と年齢との関係は、総合はR=-0.602(p<0.05)で中等度の負の相関を認め、項目AはR=-0.703(p<0.05)で強い負の相関を認めた。なお項目BはKolmogorov-Smirnovの検定で正規分布を認めず、散布図より点数が高いグループと低いグループの2つに分けられた。<BR>【考察】<BR>GMFMは、再現性・信頼性・妥当性すべてにおいて、FCMDの粗大運動機能の尺度として使用できることが確認された。GMFMの結果と年齢との関係からは、3歳から15歳にかけて粗大運動機能は徐々に低下し、15歳以降は粗大運動が困難になる傾向が確認できた。特に項目Aの臥位・寝返りは年齢との相関が高く、年齢による変化に対し感度が高いことがわかった。項目Bの散布図が示す2つのグループは、座位保持能力の有無を現わし、2つのグループ共に年齢に伴う点数の変化は少なかった。このことより、一度獲得できた座位能力は維持しやすいことがわかった。その一方で、GMFMではFCMDの坐位の特殊性を十分に反映できない事が示唆された。しかし、GMFMを用いFCMDを評価することは粗大運動機能を総合的に評価できるだけではなく、本研究が年齢との相関を示したことで重症度の判定や予後予測の一助となり、今後の理学療法に有効であると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>FCMDの粗大運動機能と年齢との関連について、GMFMを用いその傾向を明らかにすることができた。今後縦断的な評価を行うと共に、FCMDの粗大運動機能の特殊性についても検討していきたいと思う。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), BeOS3040-BeOS3040, 2011

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549423872
  • NII論文ID
    130005017002
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.beos3040.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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