- 【Updated on May 12, 2025】 Integration of CiNii Dissertations and CiNii Books into CiNii Research
- Trial version of CiNii Research Automatic Translation feature is available on CiNii Labs
- Suspension and deletion of data provided by Nikkei BP
- Regarding the recording of “Research Data” and “Evidence Data”
側腹筋の筋厚と骨盤アライメントの関連性について
Description
【目的】 近年,側腹筋(腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋)に着目した研究が数多く行われている。側腹筋は体幹の安定性に関与しており,骨盤アライメントにも影響を及ぼしている。骨盤アライメントの非対称性は全身の姿勢や動作に影響を及ぼしやすく,側腹筋と骨盤アライメントの関連性を調べることは臨床的に意義のあることである。日常生活において,利き手による影響もあり非対称な側腹筋の活動を強いる場面は多い。この非対称な筋活動により,骨盤アライメントの非対称性が出現するものと考えられる。そこで,本研究では右利きの健常者を対象に安静な座位姿勢における側腹筋と骨盤アライメントで左右に違いがみられるかを検討することを目的とした。【方法】 対象は,右利きの健常成人男性15名(年齢21.7±0.6歳、身長170.9±4.4cm、体重63.6±6.5kg)とした。測定肢位は,両上肢を体側に下ろして,座面高が40cmの背もたれのない椅子に安静に座った姿勢(以下、自然座位)とした。運動課題は,前方に置いた目標物に視線を合わせた自然座位を保持することとした。両側の側腹筋の筋厚の測定には超音波診断装置My Lab25(日立メディコ社製)を使用した。測定部位は金子らの方法に準じて,肋骨弓と腸骨稜の中間点と中腋窩線の交点としてプローブをあてた。モニター上で側腹筋の境界が明瞭になった所で,安静呼気終末時の側腹筋の筋厚を左右各3回計測して画像を得て,平均値を代表値として用いた。次に,自然座位における骨盤アライメントの測定に超音波方式三次元動作解析システム(ZEBRIS社製)を使用し,左右の上前腸骨棘(以下ASIS)と上後腸骨棘(以下PSIS)を触診にて確認した後,専用ポインターを用いて各指標点を3回ずつ測定した。水平面の骨盤アライメントでは,両側のPSISを結んだ線の延長線上とASISとPSISを結んだ線のなす角度を左右で各々算出した。また矢状面の骨盤アライメントでは,ASISとPSISの高さの差を高低差として左右で各々算出した。統計処理はExcel2010を使用して,側腹筋の筋厚と骨盤アライメントの左右の比較は対応のあるt検定を用いて行った。次に側腹筋の筋厚と同側の水平面および矢状面の骨盤アライメントではPearsonの相関係数を算出して相関分析を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者には研究の内容を十分に説明して,本人に承諾を得た後に計測を実施した。【結果】 腹横筋の筋厚は右側3.66±1.06mm,左側4.07±1.08mmであり,左側が右側よりも有意に厚かった(p<0.05)。内腹斜筋の筋厚は右側11.25±2.79mm,左側9.14±3.44mmであり,右側が左側よりも有意に厚かった(p<0.05)。一方,外腹斜筋の筋厚は右側8.17±1.76mm,左側8.14±2.68mmであり,明らかな左右差を認めなかった。水平面の骨盤アライメントは右側59.90±5.97度,左側59.41±5.01度であった。矢状面の骨盤アライメントは右側53.85±20.91mm,左側54.23±20.40mmであった。水平面および矢状面の骨盤アライメントに,明らかな左右差を認めなかった。また,側腹筋の筋厚と水平面および矢状面の骨盤アライメントに有意な相関は認めなかった。【考察】 右利きの健常者では,左側の腹横筋の筋厚が厚く,右側の内腹斜筋の筋厚が厚いという特徴がみられた。一方で矢状面および水平面の骨盤アライメントに左右差は認めなかった。これは,日常生活において右手の使用頻度が高い右利き健常者の一つの身体特性を示している可能性がある。つまり,健常者では筋厚の左右非対称性があるものの水平面および矢状面の骨盤アライメントの均衡は保たれていると考えられる。日常生活における側方リーチ動作では利き手側の側腹筋により運動が開始され,非利き手側の側腹筋により姿勢をコントロールしているといわれている。側腹筋の中でも腹横筋は脊柱の安定性に関与しており,姿勢をコントロールする上で重要な役割がある。そのため非利き手側である左腹横筋が姿勢コントロールをする上で側腹筋の中でも優位に働く必要があると考えられる。また,腹横筋と内腹斜筋は協調して上前腸骨棘を内側へ引く作用があり,健常者では左腹横筋が優位に働く代わりに,右内腹斜筋を優位に働かせて左右の水平面の骨盤アライメントの均衡を保っていると考える。今後,健常者と腰痛の症例との違いを比較検討することにより,より詳細な側腹筋と骨盤アライメントの関連を検証することができると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 健常者では側腹筋の非対称性があるものの骨盤アライメントの均衡は保たれていることがわかった。骨盤アライメントを評価する上で,非対称性の有無を確認することは臨床において重要と考えられる。理学療法の評価と治療において,側腹筋や骨盤アライメントの非対称性を知ることは臨床的に意義のあることであると考える。
Journal
-
- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
-
Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Cb0743-Cb0743, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
- Tweet
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680549521024
-
- NII Article ID
- 130004693069
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed