踵部のトリムデザインを工夫したシューホーン型短下肢装具の有効性の検討

DOI
  • 平山 史朗
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 島袋 公史
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 東 未都美
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 深野 晃平
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 高田 稔
    (有)高島義肢製作所
  • 渡邉 英夫
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科

この論文をさがす

抄録

【はじめに、目的】脳卒中発症後、初回に製作される短下肢装具 (以下、AFO) は、我々の全国アンケートの調査では、シューホーン型AFOが5割以上を占めていたことを第47回本学会で報告した。このAFOはトリムラインの違いなどからデザインは多様であり、また背屈・底屈への機能も多彩である。我々は、脳卒中における一般的に好ましい AFO は、立脚初期の踵接地から足底接地までは、AFO の足関節部が底屈に動き適度な制動効果があり、立脚中期には下腿三頭筋の痙縮があっても底屈が起こりにくく、膝の反張傾向が予防できるもの、さらに背屈へはフレキシブルに動き必要な制動があるものと考えている。この目的に向かって AFO の一つのデザインの工夫として、踵部のデザインを板状にしたヒールプレート型シューホーンAFO (以下, 大牟田式AFO と仮称) を試作し、従来のシューホーンブレースと比較することで、その有効性を検討したので報告する。《大牟田式AFOのデザインと機能》大牟田式 AFO は踵部を足底板様のプレートとして残し、踵部の後方は三角形に開窓したデザインである。踵プレート部は補強のため、通常のコルゲーションを足部から踵部まで延長した。立脚初期の踵接地ではこの踵部のプレート部が撓み底屈制動の効果があり、立脚中期には足関節は簡単には底屈せず背屈へは撓みやすい機能を有している。【方法】大牟田式 AFO の機能を検証するために、従来のシューホーンブレースと今回試作した大牟田式AFOの二つのAFO をポリプロピレン 5mm の材料を用いて初期背屈角度 5°で製作 した。検証方法は1)AFOの背屈及び底屈への可撓性の測定と、2)実際に脳卒中片麻痺患者に装着しての歩行分析の双方を行った。 前者はAFO を横にして下腿部を固定し足底面の MP 関節部をハンドヘルドダイナモメーター(アニマ株式会社, ミュータス F1)を用いて原型から背屈、底屈へそれぞれ 5°、10° 撓ませるのに必要な力 (N) を計測し比較した。また、後者については、対象を60代男性の脳卒中片麻痺患者 (発症後7.7ヶ月を経過、下肢の麻痺は中等度で、歩行はT-Caneにて監視レベル)とし、歩行分析の方法は大転子部、膝関節裂隙部、外果部から下ろした垂線と足底部が交わるところ及び第5中足骨頭部の各々にマーキングを施し、平行棒内での歩行を矢状面よりデジタルカメラ(FUJIFILM社製 FINEPIX JV 100)で撮影して、立脚初期の踵接地期、立脚中期、踵離地期、足指離地期、遊脚中期のそれぞれの画像を目視にて抽出し、画像処理ソフト ImageJを用いて、各マーキングより求められる各相の膝及び足関節の角度を測定した。歩行条件は快適歩行とし、双方のAFO装着に加え、裸足の3つの条件で比較検討した。【倫理的配慮、説明と同意】倫理的配慮として本人には症例報告についての旨を説明し了承を得ている。【結果】1)可撓性の測定は背屈においては 5°、10°ともに大差はないが, 底屈については大牟田式 AFO が底屈10°で大きな値を示した。2)歩行分析については膝関節については3条件とも類似の軌跡を示した。足関節では当然のことながら遊脚中期で裸足が底屈位を示した以外に、立脚中期で大牟田式AFOが他の条件と比べ背屈位であった。【考察】大牟田式AFOは踵部のヒールプレート部が撓む事で立脚初期の底屈制動の効果が出るようなデザインに工夫した。実際は足関節部でプラスチックが底屈するわけではないが、ちょうど義足のSACHヒールの様な効果だと考える。可撓性の測定結果より底屈制動力はシューホーンブレースより、優れていることが示唆されたが、症例に装着して検証したところ、期待される立脚初期での特異的な底屈への動きは認めなかった。このことについては今後の課題ではあるが、今回、比較に用いたシューホーンブレースが、汎用されているものよりはややフレキシブルだった影響によるものかもしれない。しかしながら、立脚中期で必要な背屈への撓みが得られていたことについては従来のシューホーンブレースと比べ有効であったと考える。まだ、製作件数は少ないが、脳卒中の病態に応じて底屈、背屈への望ましい撓みを得ることができるトリムデザインについては今後も検討が必要であり、臨床応用も重ねながら問題点などの検討もしていきたい。【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺患者に対するAFOの選定や適合判定に我々理学療法士(以下、PT)が果たす役割は大きい。今回、新たな機能を付加したシューホーン型AFOの試作に関わり、その機能と有効性について検討したが、AFOの機能を検証してPTに発信していくことは有意義と考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100466-48100466, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ