受傷機転からみたアマチュアサッカーチームの傷害の特徴について
書誌事項
- タイトル別名
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- 傷害発生・再発予防への検討
説明
【目的】<BR> 我々はアマチュアトップレベルのサッカーチームのメディカルサポートを行っている。本研究は課題である傷害予防が可能かどうか検討することである。<BR><BR>【方法】<BR> 2004年から2009年の6シーズン。1週間以上の治療を要した症例を対象とした。調査項目は1)傷害の内容:A,傷害総数、B,外傷・障害の割合、C,発生部位の割合、D,手術件数、2)上位傷害名・受傷機転、3)足関節捻挫時のテーピングの有無。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本調査は、ヘルシンキ宣言に則りチームにおける選手・スタッフに十分に説明し同意を得て行った。<BR><BR>【結果】<BR> 1)A:傷害総数123件であった。B:外傷104件(84.6%)・障害19件(15.4%)であった。C:部位別には下肢103件(83.7%)で、大腿部40件、足関節・足部30件、膝関節21件と下肢全体の約9割を占めた。次いで頭頚顔面10件(8.1%)、体幹5件(4.1%)、上肢5件(4.1%)であった。D:手術に至ったケースは7例で、膝半月損傷3例、膝蓋大腿関節障害1例、Jones骨折1例、母趾基節骨疲労骨折1例、有痛性三角骨・距骨骨軟骨損傷1例であった。<BR> 2)大腿屈筋肉離れは15名20件で、再発や反対側を受傷した選手がみられた。受傷機転はノンコンタクトが16件(80.0%)。コンタクトが4件(20.0%)。足関節捻挫は21件で外側靭帯損傷8件、内側靭帯損傷8件、脛腓靭帯損傷3件、内・外側靭帯損傷2件であり、受傷機転は外側靭帯損傷ではコンタクト5件(62.5%)、ノンコンタクト・不明が3件(37.5%)。内側靭帯損傷はコンタクト7件(87.5%)、ノンコンタクトは1件(12.5%)、脛腓靭帯損傷はノンコンタクト2件(66.7%)、コンタクト1件(33.3%)、内・外側靭帯損傷は2件ともコンタクト後の着地での受傷であった。膝MCL損傷は11件で受傷機転はコンタクト10件(90.9%)、ノンコンタクト1件(9.1%)であった。<BR> 3)トレーナーがテーピング施行後の足関節捻挫は2件(9.5%)で受傷機転はコンタクト後の着地での内・外側靭帯損傷と内側靭帯損傷で、その他の足関節捻挫はテーピング施行なしか、選手自身で施行していた。<BR><BR>【考察】<BR> 1)のA~Cは過去の諸報告と同様の傾向であった。Dの手術件数は7件で全例復帰していた。<BR> 大腿屈筋肉離れの受傷機転は、ノンコンタクトの多くがOKCで、コンタクトではCKCで股関節屈曲強制での大腿屈筋の遠心性収縮による受傷であった。CKCでの受傷例では大腿部打撲後で大腿四頭筋力が発揮しにくい状態であり、その影響も考えられた。また全体の25%が同一選手の再受傷か反対側の発生であり、その中には復帰後に足関節捻挫や大腿四頭筋タイトネスによる伸展型腰痛を患いながらプレーしているケースもみられた。大腿四頭筋のタイトネス、それに伴う骨盤前傾はハムストリングスの緊張を高める可能性もあるといわれている。CKCでの肉離れは、大腿打撲後の発症に注意が必要であった。<BR> 足関節捻挫は、トレーナーのテーピング施行である程度予防できていると考えられるが、加えて機能的なファンクショナルトレーニングが必要である。<BR> 膝MCL損傷は、ほぼコンタクトでの受傷であり、股関節内旋・膝外反予防の筋力トレーニングが重要である。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 近年、スポーツ傷害の予防や再発防止の取り組みが積極的に行われている。傷害の受傷機転の分析や、身体機能評価を行うと共に、病院でのリハビリテーションからスポーツ現場まで一貫して関与していくことが、傷害予防・再発防止につながると考えている。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2009 (0), C4P2188-C4P2188, 2010
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549636608
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- NII論文ID
- 130004582452
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可