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頚部リンパ節腫脹後斜頚の特徴と介入方法の検討
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- 大西 伸悟
- 加古川市民病院リハビリテーション科
Description
【目的】<BR> 斜頚は筋性、痙性、骨関節性、リンパ性あるいは炎症性、その他等に分類される。特に整形外科領域において筋性斜頚は先天性股関節脱臼や先天性内反足と並ぶ3大疾患として挙げられており、その治療は胸鎖乳突筋に対する筋切りや筋部分切除など延長を目的としたものが多い。しかし手術療法を行ったとしても十分な改善が得られない場合があるとの報告もある。今回、頚部リンパ節腫脹後斜頚に対して介入し、胸鎖乳突筋の短縮が改善した後も抗重力位での斜頚が残存する症例を経験した。それらの症例に対し筋短縮改善後、頚部屈筋群へのアプローチを行うことで斜頚改善に効果を認めた。頚部リンパ節腫脹後斜頚の特徴と治療経過について若干の考察を加え報告する。<BR>【方法】<BR> 対象は頚部リンパ節腫脹による炎症反応と圧痛が改善した後も斜頚を呈した4名(男児1名、女児3名、)で、各症例の発症年齢は症例A:4歳8ヶ月、症例B: 5歳2ヶ月、症例C: 4歳10ヶ月、症例D:9歳10ヶ月である。治療が終了した症例から後見的に、理学療法初回時のMMTによる頚部屈曲筋力、理学療法初回時の関節可動域制限の有無、関節可動域改善に要した理学療法回数、頚部屈曲筋力改善に要した理学療法回数、全理学療法回数について調査した。なお、理学療法初回時のMMTによる頚部屈曲筋力の結果から症例A,B,Cを筋力低下群(以下,低下群)として、症例Dとの比較を行った。<BR> 各症例への理学療法は、疼痛自制内での頚部筋群に対するリラクゼーションやストレッチ、病室での自主練習指導等も加えて行った。その後、関節可動域の改善に合わせて抗重力位にて自動介助運動による頚部屈曲練習等を実施した。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究はヘルシンキ宣言の倫理規程に沿って後見的に症例を分析した。発表に出てくる症例については、本人と家族に研究の趣旨について説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR> 理学療法初回時の頚部屈曲筋力は低下群では全例MMT1レベル、症例Dは4レベルであった。理学療法初回時の関節可動域制限は低下群では患側胸鎖乳突筋短縮位での斜頚を呈していたが、症例Dは患側への頚部回旋制限のみであった。関節可動域改善に要した理学療法実施回数は低下群で平均5回、症例Dは3回であった。頚部屈曲筋力改善に要した理学療法実施回数は低下群で平均10回、症例Dは1回であった。全理学療法回数は低下群で平均10.3回、症例Dは3回であった。なお理学療法終了時には、低下群と症例Dともに関節可動域制限や筋力低下及び動作レベルは発症前の状態まで回復している。<BR>【考察】<BR> 頚部リンパ節腫脹後斜頚は、頚部リンパ節が胸鎖乳突筋の背側に位置することが起因となって、以下の原因により斜頚が起こったと考えられる。まず最も考えられる原因としては、不動による患側胸鎖乳突筋を主とした頚部屈筋群の短縮である。発症後早期では強い疼痛を伴うため、炎症部位を保護しようと患側胸鎖乳突筋が短縮位となり、さらに疼痛による防御性反応によって不動となり斜頚に至ったと考えられる。<BR> 次に、低下群において関節可動域が改善した後も抗重力位での斜頚が残った原因として患側胸鎖乳突筋の筋力低下を考えた。症例Dにおける理学療法初回時の頚部屈曲筋力はMMT4レベルであり、発症後早期の斜頚は理学療法初回時にはほとんど認めなかった。それに対し、低下群は理学療法初回時の頚部屈曲筋力がMMT1レベルであり、斜頚の回復は頚部屈曲筋力の改善に伴っていた。また、全理学療法回数においても症例Dのほうが軽症であったことから斜頚の長期化について胸鎖乳突筋を主とする頚部屈筋群の影響が考えられた。<BR> また関節可動域改善後も斜頚が残った理由として、患側胸鎖乳突筋の見かけ上の改善であった可能性を考えた。頚部屈曲練習は、背臥位にて頭部屈曲位での頚部屈曲と左右側臥位での頭部挙上を行った。特に改善効果があったのは患側を上にした側臥位での頭部挙上練習後であった。側臥位での頭部挙上練習において一側の胸鎖乳突筋を選択的に収縮させたことで収縮後の弛緩効果として改善が得られた可能性がある。いずれの原因においても、筋性斜頚に対する理学療法はストレッチなどの短縮筋に対する延長のみにとらわれることなく、頚部のアライメント改善には筋収縮に着目した介入の必要性が確認できた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 頚部リンパ節腫張後斜頚に対する理学療法の報告は非常に少ない。筋性や痙性斜頚の治療が短縮筋の延長を図るのに対し、今回の報告では筋の長さを改善させるとともに、胸鎖乳突筋を中心とする頚部の筋力増強練習が抗重力下での斜頚の改善に関与していることを示した。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), C4P1163-C4P1163, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549664128
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- NII Article ID
- 130004582415
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed