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地域在住高齢者における閉塞性換気障害が身体機能、身体能力、日常生活動作に与える影響に関する縦断的検証
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【はじめに、目的】 閉塞性換気障害の代表疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、早期診断、治療が重要となるにも関わらず、初期症状がわかりにくいなどの理由から、早期発見がなされていない。 これまで、我々は、地域在住高齢者における閉塞性換気障害が身体機能、身体能力、日常生活動作(ADL)に如何に影響を及ぼすかについて横断的に検証してきた。その結果、閉塞性換気障害者は、健常高齢者と比較して、ほぼ全ての評価指標に有意差がなく、日常生活に何ら影響を及ぼしていないことを客観的に明らかにしてきた。また、そのことがCOPDの早期発見を遅延させる要因になっていることを考察した(2011)。 本研究の目的は、次のステージとして閉塞性換気障害を有する地域在住高齢者において身体機能、身体能力、ADLが健常高齢者と比較して、どのような経過を辿るのかを1年間の縦断的分析から客観的に検証することとした。【方法】 研究デザインは、非介入、前向きコホート研究とし、追跡期間は1年間とした。調査地域は、郊外田園地域とし、測定場所は、保健センター等の公共施設とした。 対象は、健康支援事業に参加している地域在住高齢者から募集した者のうち、初回の測定から1年間の経時的変化が追跡できた192名とした。それらを研究開始時、閉塞性換気障害(一秒率が70%未満)を有した16名(78.0±7.9歳、男性9名、女性7名)(閉塞群)と健常高齢者(一秒率が70%以上)176名(72.2±6.8歳、男性37名、女性139名)(健常群)に分類し、比較した。除外対象は、既に呼吸器疾患に対する治療がなされている者、重篤な合併症を有する者、有痛性疾患により歩行が阻害されている者、研究の同意が得られなかった者とした。また、閉塞性換気障害者は、気管支喘息との可及的鑑別のために、喘息発作の既往がある者、気管支喘息の近親者がいる者を除外した。 測定項目として、呼吸機能の指標は、一秒量、一秒率、予測比一秒量とし、身体機能、身体能力の指標は、呼吸筋力、握力、大腿四頭筋力、足趾把持力、上体起こし回数、長座位体前屈、片脚立位時間、10m障害物歩行時間、最速歩行時間、Timed up go時間(TUG)、6分間歩行距離(6MWD)とした。ADLは、老研式活動能力指標、Visual Analog Scale(VAS)による主観的生活観を指標とした。 統計学的分析方法として、閉塞群と健常群の比較は、年齢、性別を共変量とした共分散分析を用いて検討した。統計学的有意水準は5%とし、解析ソフトはSPSS version19を用いた。 なお、本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業からの研究助成を受けて行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、研究の主旨と概要、結果の公表、参加の任意性、参加の中断などについて説明し、自筆署名にて同意を得た。更に、研究の倫理性について西九州大学倫理委員会の審査、承認(H21-3)を受けた後に実施した。【結果】 ベースラインから1年後の一秒量の減少は、正常群50±136ml、閉塞群48±116mlと有意差は認められなかった。最速歩行時間(p<0.05)、TUG(p<0.05)は、閉塞群が有意に低下していたものの、その他の身体機能、身体能力、老研式活動能力指標、VASには有意差が認められなかった。【考察】 Fletcherらは、健常高齢者において1年間に30ml程度、COPD患者において50~100ml程度、一秒量が低下すると報告している。本研究では、健常群が50ml低下しており、先行研究より、やや一秒量の低下が大きかった。しかし、閉塞群は、48ml低下しており、両群に一秒量の低下において有意差がなく、閉塞群においても、生理的加齢に伴う一秒量の減少の範囲にとどまっていたことが示唆された。また、身体機能、身体能力、ADLにおいて、瞬発的歩行能力の要素を有する最速歩行時間とTUGは、閉塞群が有意に低値を示していたものの、その他の測定項目に有意差は認められなかった。 これらのことから、早期のCOPD患者において、1年間の縦断的変化で、一秒量、身体機能、身体能力、ADL低下の程度は、健常者と差がなく、「COPD早期発見遅延要因」の一因となっている可能性が推測された。【理学療法学研究としての意義】 COPD患者早期発見の遅延要因とされている「ありふれた症状で、わかりにくい」との見解に対して、客観的に検証できた点において有意義な研究となった。更に、横断的分析にとどまらず、縦断的分析からも検証できたことは意義深い研究であったと考える。今後、COPD早期発見へ向けての取り組みに対する基礎データとして、対策の一助となりうることが期待される。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48100073-48100073, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680549934464
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- NII Article ID
- 130004584668
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed