円背姿勢による不安定感が立ち上がり動作に及ぼす影響
Bibliographic Information
- Other Title
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- 体幹・股関節・膝関節に着目して
Description
【目的】高齢者の脊柱後彎(円背)は,動的姿勢調節に影響していると言われている。 本研究では,若年健常女性を対象に,円背シミュレーター装着時の椅子からの立ち上がり動作と主観的不安定感と関連性について検討することを目的とした。<BR><BR>【方法】対象は整形外科的既往のない12名の若年女性(平均年齢20.8±0.4歳,身長159.4±4.5cm,体重52.4±4.4 kg)であった。測定方法は,被験者が動作中の上肢の位置および動作速度を各被験者の任意とし,42.2cmの背もたれや肘掛のない椅子から普段通り(以下、通常条件)の立ち上がりを行った。その後,円背を強制するためシニアポーズ(ダイワラクダ工業株式会社)内の円背シミュレーターを装着し(以下、円背条件),足隔は通常条件と同じにし,立ち上がり動作を行った。測定回数は全被験者が通常条件,円背条件の順序に各1回ずつ実施した。通常条件および円背条件ともに、測定開始前に自在定規を用い、円背指数を測定した。<BR>立ち上がり動作の解析には, 3次元動作解析装置(VICON460,Oxford Metrics)および床反力計(フォースプレートOR6-6,AMTY社)を用い、サンプリング周波数は100Hzとした。反射マーカーは、第7頚椎棘突起,両肩峰,第4腰椎棘突起,両外側上顆,両茎状突起下端の中央部,両大腿骨頭(ASISと大腿骨大転子を結ぶ直線の遠位1/3の位置),両膝関節外側裂隙(膝蓋骨の厚さを除く膝関節前後径の中点),両足関節外果,両第5中足骨の計16ヶ所に両面テープで貼付した。動作解析装置より全動作所要時間,体幹の前後屈角度,股関節および膝関節の屈曲・伸展角度を的に測定した。 立ち上がり動作の相を、動作開始から離殿時期まで(以下、第1相),離殿時期から動作終了(以下、第2相)の2相に分けて全動作時間に対する各相の時間・比率を算出した。また,各関節の最大屈曲角度とタイミング,屈曲最大速度のピーク時間を算出した。<BR>また、被験者には全動作終了後に動作に対する不安定感のアンケートを行った。アンケートは、両条件について、動作前(座位時)、立ち上がり動作中、立ち上がり動作完了後(立位時)の不安定感、および立ち上がり動作全体の立ち上がりにくさについてVASにて行った。<BR>統計処理にはSPSS16Jを使用し、通常条件と円背条件においては対応のあるt検定にて、通常条件に関する変数および円背条件に関する変数のそれぞれの関係性をピアソンの相関にて検定した。いずれも有意水準を5%とした。<BR><BR>【説明と同意】すべての対象者に対して本研究の趣旨と内容について説明を行い,参加の同意を得て実施した。<BR><BR>【結果】円背指数は通常条件が6.91±2.05、円背条件が13.41±3.05であり、両条件間に有意差を認めた(p<0.0001)全動作所要時間には両条件間に有意な差を認めなかったが(通常条件:2.19±0.35秒、円背条件:2.47±0.48秒),円背条件においては、座位時の不安定感と第1相所要時間の間に有意な負の相関を認めた(r=-0.593、p<0.05)。また,座位時の不安定感と体幹・膝関節屈曲最大速度のピーク時間においてそれぞれ有意な負の相関関係を認めたが(p<0.05),股関節屈曲最大速度のピーク時間には相関関係が認められなかった。下肢関節の屈曲角度においては座位の不安定感と股関節最大屈曲角度に正の相関が認められた(r=0.628、p<0.05)。全動作終了後に対象者へ動作に対する不安定感のアンケートでは,円背条件において、動作中および動作終了後の不安定感は被験者の多くが感じていたが(動作中:5.93±2.36mm、動作終了後:7.38±1.70mm)、しかし個人差が大きかったのは座位時における不安定感であった(4.89±2.56mm)。<BR><BR>【考察】今回の結果より,通常および円背姿勢における円背指数に有意差が認められ、両条件間の全動作所要時間に有意な差は見られなかったため、動作の速度による違いはなく、純粋に姿勢の違いによる比較検討が行えた。座位時の不安定感と第1相の所要時間,体幹・膝関節屈曲最大速度のピークにおいて負の相関関係を認めており,座位という動作開始前に不安定感を感じていたことにより、勢いにより早期に殿部を離床し,体幹・膝関節の屈曲速度を通常より速くすることで,動作時間を短縮し、早めに立位姿勢へ移行させようとしたのではないかと考えられた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】高齢者のように複合した障害のない若年健康女性に円背姿勢モデル用い、変形による影響のみを考慮した立ち上がり動作時のデータの提示をすることは、高齢者の立ち上がり動作の基礎資料として有用であると考えられ、さらに今回、心理的要因との関与についても考察できたことは本研究の特徴である。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), H4P3250-H4P3250, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550033152
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- NII Article ID
- 130004583075
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed