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後方外乱刺激後のステップ動作制御に対するT字杖の効果の検証
Bibliographic Information
- Other Title
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- 脳卒中片麻痺患者モデルにおける検討
Description
【目的】<BR> 脳卒中患者の転倒率は,健常高齢者の2.0倍,大腿骨頚部骨折の発生率は2~4倍とされている。転倒に伴う骨折は日常生活動作,QOLの低下につながり,脳卒中患者の転倒予防は非常に重要な問題であると考えられる。<BR> 脳卒中患者の転倒には姿勢制御障害の関与が大きいとされ,臨床場面では,姿勢制御能力を補助し,転倒予防の目的でT字杖を処方することが多い。脳卒中患者に対するT字杖の姿勢制御への効果に関する先行研究において,静的立位時の重心動揺減少,後方動揺後の重心動揺減少などが報告されている。しかし,実際にバランスを崩しステップが出現する強さで外乱が加わった際の,姿勢制御に対するT字杖の効果については十分に検討されていない。<BR> 本研究の目的は,健常者を対象に脳卒中片麻痺の障害モデルをつくり,代償的なステップ動作が起こる強さで後方への外乱を加えた際の,姿勢制御における杖の有効性について検討することである。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,健常男子大学生25名(21.6±1.5歳)とした。<BR> 脳卒中片麻痺患者の障害モデルとして,利き足側の上下肢に片麻痺体験装具を装着させた。開始肢位は,両踵を肩幅に広げた立位で,麻痺側踵は挙上させ,加重量を約40N以内とした。T字杖使用時は,肘関節30度屈曲位で,小趾の前外側15cmに付くようにした。外乱刺激は,自作の滑車を用いた外乱負荷発生装置により対象者の腰部を一定の強さで後方に引くことで,対象者に代償的な後方へのステップ動作を出現させた。<BR> Force platform(FDM system, Zebris)を使用し,ステップ動作時の足圧中心(center of pressure: COP)を測定した。後方ステップ動作時のCOPの軌跡をS1~S3の3相に分け,以下のように定義づけた。S1相は,外乱によりCOPが後方に動き始めたときから,ステップ側の最も前外側に位置するまでとした。S2相は,S1相の終わりからCOPが支持側に向かって移動し,支持側の最も外側に位置するまでとした。S3相は,S2相の終わりからCOPが後方に向かって移動し,ステップ側が接地するまでとした。この各相の時間と,各相におけるCOPの移動の総軌跡長,最大速度,最大加速度を算出した。測定は1度T字杖使用時の状態で練習した後,T字杖不使用時,使用時の順で,それぞれ1回ずつ測定した。<BR> 統計解析は,T字杖不使用時,使用時の各測定項目の比較を,対応のあるt検定を用いて行った。有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR> すべての対象者に対し,本研究の主旨について説明し同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> S1相の時間は杖使用時に有意(p<0.01)に短縮した。また,COPの移動の最大速度が杖使用時において有意(p<0.05)に増大した。最大加速度についても杖使用時に増大する傾向(p=0.053)が認められた。S2相においては,最大速度(p=0.092),最大加速度が,杖使用時に増大する傾向(p=0.060)が認められた。S3相においては,最大加速度(p<0.05)が杖使用時において有意に増大した。最大速度は,杖使用時において増大している傾向(p=0.057)が認められた。<BR><BR>【考察】<BR> 本研究の結果,T字杖使用時は不使用時と比較して,S1~S3相のCOPの速度,加速度の増大がみとめられた。ステップ動作のような動的な姿勢制御においては,COPの振幅,移動速度が大きいほど姿勢反応を調節する能力が高いとされることから,T字杖使用により外乱に伴う後方ステップ時の姿勢制御能力は高くなったと解釈できる。<BR> 後方ステップ時のS1相におけるCOPの軌跡は,歩行開始時における逆応答現象と類似したCOPの軌跡を示す。外乱後COPはステップ側前方へ移動し,その反作用でステップ動作時に支持側への重心移動が生じると考えられる。このことから,S1相はステップ反応が出現するための重要な準備期間であると考えられる。本研究において,T字杖使用によりS1相のCOPの移動速度,加速度に著明な効果が認められた。これより,T字杖使用によりステップ動作が出やすくなったと考えられる。<BR> T字杖使用により各相におけるCOPの速度,加速度が増大した理由は,T字杖使用による非麻痺側前方向の支持基底面の拡大,体性感覚のフィードバックの強化により,姿勢制御能力が高くなったと考察する。<BR> 本研究の結果より,脳卒中患者においてもT字杖使用により「実際,バランスを失った時」のステップ動作における姿勢制御が改善する可能性が示唆された。今後,脳卒中患者においても検証していく必要がある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】 <BR> 本研究は,脳卒中患者に対してT字杖を処方する際の一つの判断基準として重要な情報となると考えられる。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), H4P2364-H4P2364, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550086144
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- NII Article ID
- 130004583063
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed