温熱療法による関節拘縮進行抑制効果の検証

書誌事項

タイトル別名
  • ラット膝関節固定モデルを用いて
公開日
2010
DOI
  • 10.14900/cjpt.2009.0.h4p1245.0
公開者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

説明

【目的】<BR>関節拘縮は,ギブス固定や長期臥床などにより発生する。関節拘縮による関節可動域の減少は,原疾患による障害に加えてさらに大きな障害を来し,日常生活動作(ADL)を制限する。また,一度生じた関節拘縮は改善困難であることから臨床上発生予防が重要とされている。関節拘縮の進行予防およびその治療には,徒手的な関節可動域運動と,その前処置として温熱療法が広く用いられて来た。一方で,関節拘縮に対する温熱療法が関節包の変性や軟骨破壊を促すという結果が報告されている。今回我々は,関節拘縮の進行予防として温熱療法の有効性を明らかにするため,関節可動域変化および関節構成体変化をラット実験的関節拘縮モデルを用いて検証した。<BR>【方法】<BR>実験動物として12週齢の雄性ウィスターラット15匹を用い,対象関節を膝関節とした。ラットは無作為に関節固定のみを行うコントロール群,関節固定期間中に温浴(40°C)を行う40°C群および不感浴(35°C)を行う35°C群の計3群に5匹ずつ分けた。関節固定は龍田尚美らによる膝関節創外固定法を用いた。ラット左下肢の左大腿骨から左脛骨にかけキルシュナー鋼線を刺入し90°屈曲位に固定した。関節固定後は3日目より1日1回15分,週5日の頻度で浴水負荷を5週間実施した。関節可動域は関節固定処置前と関節固定処置から5週間経過した時点で測定した。関節可動域の測定は自作の関節運動負荷装置を用いた。<BR>実験終了後,ペントバルビタールナトリウムの腹腔内過剰投与により安楽死させ左膝関節を摘出した。摘出した左膝関節でパラフィンブロックを作成した後,HE染色後組織学的評価を実施した。統計学的解析にはystat2006を用い,分散分析にはKruskal-Wallis検定,多重比較検定にはBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。尚,実験期間中のラットはプラスチック製のケージ内にて飼育し,関節固定処置後も両前肢と右後肢でケージ内を自由に移動できるものとした。水と餌は自由に摂取可能であり,手術後1週間は傷口からの感染を防ぐため水に抗生剤を投与した。<BR>【説明と同意】<BR>本研究は吉備国際大学実験動物倫理審査委員会による承認を受けて実施された。<BR>【結果】<BR>膝関節可動域;固定処置前の膝関節可動域はコントロール群,35°C群,40°C群の3群間に有意差は認められなかった。5週間経過後の膝関節可動域は,40°C群がコントロール群,35°C群に対して有意に大きく(p<0。05),コントロール群と35°C群の間には差は認められなかった。 <BR>組織学的評価;関節軟骨および関節腔,滑膜,関節包の厚さの評価を実施したが3群間において有意な差は認められなかった。関節軟骨では軟骨表面に紡錘型細胞からなる線維組織が見られた。軟骨細胞自体には変化はなかった。関節腔は,滑膜の関節腔内への軽度の侵入がみられたが,狭小化や癒着は見られず,十分な広がりを維持していた。滑膜組織は3群ともに滑膜表層に線維増生を認め,40°C群においては微小血管の軽度の拡張とうっ血を認めた。関節包において変化はなかった。<BR>【考察】<BR>今回の研究結果により,温熱療法は関節拘縮進行抑制効果を有することが明らかになった。先行研究において,エルゴメータと温熱療法を併用した群において有意に関節可動域減少が抑制され,温熱療法がエルゴメータによる運動負荷の関節拘縮進行抑制作用に対して相乗効果を持つことが報告されている。今回,我々の結果は,温熱療法単独でも関節拘縮進行抑制効果を持つことを示した。また組織学的所見においても温熱療法負荷による関節構成体の変性像は認められなかった。これより関節不動による関節拘縮の進行に対して温熱療法単独の適用が有効である可能性が示唆された。本研究では温熱療法の関節拘縮進行抑制効果を裏付ける組織学的所見を得られなかった。今後は,筋組織などさらなる詳細な評価を行い,温熱療法による関節拘縮進行抑制効果の機序を明らかにしていきたい。本結果は齧歯類であるラット使用のものであるが,同じ哺乳類としてヒトも同様の結果を示すことが予想される。ヒトでの適用を考えて至適温度や時間などの条件の違いによる効果も検証し臨床適用につなげていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>関節拘縮は短期間の関節不動でも形成され進行する。しかし,骨折等の後では一定期間の関節不動を余儀なくされる。温熱療法単独での適用が関節拘縮進行抑制効果を持つならば,このように臨床において関節可動域運動を実施出来ない期間においても早期より関節拘縮発生予防に努めることができる。このような観点から本実験の臨床的意義は大きい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), H4P1245-H4P1245, 2010

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550141184
  • NII論文ID
    130004583042
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.h4p1245.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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