バウンディング運動が呼吸機能に及ぼす影響

DOI

抄録

【目的】近年、体幹筋が呼吸機能に及ぼす影響についての報告がなされている。腹筋群は主な呼気筋であるが、その中でも外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋といった側腹筋群は呼吸機能と密接な関係があると言われている。我々は第44回日本理学療法学術大会にてボール上座位で上下に跳ねるエクササイズ(以下、バウンディング運動)が端座位最大側方移動距離に及ぼす影響について検証した。その結果、バウンディング運動により体幹筋の活性化が得られることが示唆された。そこで今回、バウンディング運動が呼吸機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】対象は健常成人44名とし、バウンディング群22名(A群:男性8名、女性14名、26.81±4.71歳)とコントロール群22名(B群:男性12名、女性10名、26.22±5.38歳)に分けた。呼吸機能測定はスパイロメータ(ミナト医科学社製Minato Autospiro AS-302)を使用し、測定項目は肺活量(VC)、予備呼気量(ERV)、予備吸気量(IRV)、努力性肺活量(FVC)とした。バウンディング運動に使用したボールはThera-Band社製のProfessional Exercise Ball、直径55cmであった。バウンディング運動は両上肢を胸の前で組み、骨盤中間位とし、前方の一点を注視した姿勢を開始肢位とした。運動中は骨盤中間位を保持するよう意識してもらい、100回/分のリズムで1分間実施した。B群はバウンディング運動開始肢位と同肢位にて1分間の椅子座位保持をした。呼吸機能測定は、A群ではバウンディング運動前後で計測し、B群では椅子座位保持前後にて計測した。統計処理は各測定項目についてバウンディング運動前後、椅子座位保持前後でそれぞれ対応のあるt検定を用い比較し、有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、被検者に実験の目的・方法及び危険性などを説明し書面で承諾を得た。<BR>【結果】B群は全項目で有意差はなかった。A群においてFVC値がバウンディング前(3.68±0.92L)とバウンディング後(3.75±0.95L)で有意な増加が見られた。その他の項目で有意差は認められなかった。<BR>【考察】バウンディング運動後にFVC値が増加したことからバウンディング運動による呼吸機能への影響が示唆された。先行研究において体幹筋が活性化されることで呼吸機能が向上するとされている。今回の研究においてもバウンディング運動により、体幹筋が活性化されたため呼吸機能が向上したと考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】今回の研究により、COPD疾患などのFVCの低下が見られる症例に対し、バウンディング運動を運動療法として用いることで、呼吸機能の改善が認められることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A4P3056-A4P3056, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550234752
  • NII論文ID
    130004581953
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a4p3056.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ