正中仙骨稜と大転子の体圧値は体重重量比の影響を受けない

DOI
  • 藤橋 雄一郎
    平成医療専門学院 理学療法学科
  • 曽田 直樹
    平成医療専門学院 理学療法学科
  • 辻 圭一
    平成医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法専攻
  • 堀 信宏
    平成医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法専攻

抄録

【目的】<BR>褥瘡の発生要因には「応力(圧縮応力、剪断応力、引っ張り応力)×時間×頻度」が関係し、中でも身体接地面の「圧縮応力」、「剪断応力」が大きな問題となる。「剪断応力」は、ベッドによるギャッジアップが影響し、ギャッジアップを行わない安静臥位では「圧縮応力」が重要となる。<BR>我々は第23東海北陸理学療法学術大会において、背臥位(ギャッジアップなし)で褥瘡好発部位の体圧値を測定し、褥瘡好発部位間での体圧値の違いを調査した。その結果、背臥位での褥瘡好発部位では仙骨部の体圧が最も高い値を示し、その要因として体圧値は体重重量比(臥位時には頭部7%・胸部33%・殿部44%・脚部16%の荷重がかかり、全体重の2分の1近くが殿部にかかる)の影響を受けると推測した。そこで我々は、体重重量比と各部位の体圧値の関連性を調査した。本研究の目的は、体重重量比が体圧値に影響を及ぼしているかどうかを明らかにすることである。<BR><BR>【方法】<BR>対象は健常成人43名(男性31名、女性12名、平均年齢24±5歳、平均身長168.1±8.3cm、平均体重63.3±10.4kg、平均BMI22.4±2.9)とした。<BR>体圧値の測定には、標準マットレス(PARAMOUNT BED)と簡易体圧測定器セロ(CAPE社)を用いた。被検者には、検者が用意した半袖T-シャツとトレーニングパンツを着衣させ標準マットレスに安楽な背臥位および側臥位をとらせた。<BR>体圧値の測定部位は、仙骨部の体圧値を正中仙骨稜で、大転子部の体圧値を大転子の最も突出した部位とした。これらの部位を検者が触診にて確認しセンサーパッドの挿入を行った。測定は仙骨部と大転子部の体圧値を順不同で計測した。<BR>統計学的分析は、正中仙骨稜と大転子部の体圧値と体重重量比(体重の44%)との関連性、それぞれの体圧値とBMIとの関連性をPearsonの積率相関係数を用い求め、有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR>対象者全員に今回の研究の趣旨と内容について十分な説明を行い、同意を得た。<BR>【結果】<BR>仙骨部体圧値の平均は101.0±30.2mmHg、大転子部体圧値の平均は122.3±40.7mmHgであった。仙骨部体圧値と体重重量比の間に低い負の相関(r=-0.41、p=0.006)が、仙骨部体圧値とBMIに低い負の相関(r=-0.32、p=0.037)を認めた。大転子部と体重重量比(r=0.016)、大転子とBMI(r=0.006)との間に相関は認められなかった。<BR><BR>【考察】<BR>結果から仙骨部体圧値と体重重量比および、仙骨体圧値とBMIとの相関がともに低い負の相関であり、大転子部体圧値と体重重量比および、大転子部体圧値とBMIは相関を認めなかったことから、それぞれの関係性は低いものと考える。<BR>解剖学の視点から、仙骨の両側には大殿筋や脂肪などの皮下組織が存在する。よって仙骨部周辺の皮下組織によってマットレスからの直接圧迫が少なくなったために、体重重量比と弱い負の相関を認めたと考える。一方、大転子部の周辺には中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋が存在する。これらの筋の走行は中殿筋が大転子外側面に停止し、小殿筋が大転子前面に停止する。これら2つの筋は大転子に停止するが、停止部付近は腱組織となっている。腱組織は筋腹と比べ弾性に劣る。加えて、大腿筋膜張筋は大転子の前方を下行し腸脛靭帯に停止することから、大腿筋膜張筋は大転子部を包み込んでいない。したがって大転子部周辺には腸脛靭帯や脂肪組織のみで、突出した状態となっていることで、体重重量比に関係なく大転子部は高圧を示すと考えた。また、マットレスとの接触面では、背臥位は身体幅が広く側臥位では身体幅が狭くなることで、体重を支持する面積が小さくなることも関係性を低くする要因であると思われた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>仙骨部および大転子部では、それぞれの体圧値に体重重量比やBMIとの相関は低い結果であった。よって背臥位では仙骨部のみの体圧値測定を行うのではなく、マットレスとの接触部位全体である広い面での体圧値を測定する必要があり、側臥位では大転子部の最突出部位の測定が必要であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A4P3058-A4P3058, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550237056
  • NII論文ID
    130004581955
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a4p3058.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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