慢性閉塞性肺疾患患者の6分間歩行距離350mの違いにおける身体特性の比較
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説明
【目的】COPD患者の6分間歩行距離(6MWD)が350mをカットオフポイントとして生存率に影響があったと報告している(Claudia 2007)。そこで、本研究の目的は、6MWDが350m以上群と350m未満群で身体特性にどのような違いがあるのかを比較することとした。<BR>【方法】対象は、研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者34名である。対象の内訳は男性32名、女性2名、平均年齢76.3±7.4歳、一秒率(FEV1%)51.7±19.0%であった。修正MRC息切れスケール(mMRC)は、Grade1が4名、Grade2が16名、Grade3が9名、Grade4が5名であり、GOLD重症度分類は、1期が4名、2期が8名、3期が15名、4期が7名であった。なお、対象の選定においては、重篤な内科的合併症の有する者、歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者、脳血管障害の既往がある者、その他歩行時に介助を有する者、理解力が不良な者、測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。<BR>測定項目は、Body Mass Index(BMI)、肺機能検査、膝伸展筋力、呼吸筋力検査(最大吸気口腔内圧(MIP)、最大呼気口腔内圧(MEP))、片脚立位時間、Timed Up and Go Test(TUG)、重心動揺検査(外周面積、単位軌跡長、総軌跡長)とした。日常生活動作テストは長崎大学呼吸器疾患ADL質問票(NRADL)、Barthel Index(BI)、健康関連QOLテストはSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)、多次元的重症度指数はBODE Index(BODE)で評価した。<BR>統計学的解析は、6MWDが350m以上と350m未満の2群に分け、各測定項目を独立サンプルによるt検定で2群間の特性を分析した。統計学的解析にはSPSS ver.17を使用し、統計学的有意水準は5%とした。データ表記は平均値±標準偏差で示した。<BR>【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は、研究の概要を口頭、及び文書にて説明後、研究内容を理解し、研究参加の同意が得られた場合、書面にて自筆署名にて同意を得た。その際参加は任意であり、測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと、また同意後も常時同意を撤回できること、撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。<BR>【結果】各測定項目の値は、6MWDの350m以上が18名(459.5±58.5m)、350m未満が16名(216.4±101.3m)であり、その2群間においてBMI(21.5±3.3 vs 19.3±2.8kg/m2;p=0.046)、FVC(2640.0±715.9 vs 1790.6±679.3ml;p=0.001)、%FVC(85.0±26.4 vs 61.8±23.7%;p=0.012)、膝伸展筋力(34.8±10.1 vs 18.9±8.1kg・f; p<0.001)、MIP(70.0±32.4 vs 33.6±15.6cmH2O;p<0.001)、MEP(99.61±32.9 vs 49.6±29.3 cmH2O;p<0.001)、片脚立位時間(45.4±34.9 vs 14.3±19.3秒;p=0.003)、TUG(5.5±0.6 vs 9.6±3.1秒;p<0.001)、外周面積(2.0±1.8 vs 3.9±2.8cm2;p=0.037)、総軌跡長(51.1±19.4 vs 76.0±39.3cm;p=0.032)、NRADL(81±19.3 vs 48.8±22.1点;p<0.001)、BI(100±0.0 vs 81.2±21.4点;p=0.011)、BODE(3.2±1.5 vs 5.8±2.3;p=0.001)に有意差が認められた。なお、FEV1、FEV1%、%FEV1、SGRQには有意差は認められなかった。<BR>【考察】COPD患者における6MWDの350mは、身体特性にも影響があり、運動能力にも何らかの意味を持つ値であることが示唆された。しかし、それは病期の進行ではなく、混合性換気障害(FVCの低下)へ傾くことが要因となる可能性が考えられた。今後は症例数を増やし、あらゆる側面からの6MWDが意味するカットオフポイントを求めていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】6MWD、350mが生命予後のみでなく、運動能力にも影響を与える可能性が考えられ、呼吸リハビリテーションによる運動能力向上が、生命予後改善の可能性を持つことが示唆された有意義な研究となった。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2010 (0), DbPI2376-DbPI2376, 2011
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550272512
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- NII論文ID
- 130005017528
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可