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足関節運動制限が歩行初期接地時の衝撃吸収機能に与える影響
Description
【はじめに、目的】 歩行における足関節の機能には,初期接地時に生じる衝撃を吸収し,重心の下降運動を前進運動へ変換する機能がある.高齢者においては,可動域制限や歩行中の底背屈運動の減少が報告されており,上記の足関節機能が障害されている可能性がある.またRadin et al(1997)は,初期接地時の衝撃が関節痛の誘因になる可能性を示しており,足関節機能を検討することは,高齢者の二次的傷害を考えるうえで重要である.しかしながら,高齢者の歩行解析では,足関節も含めた多関節の可動域制限や筋力低下など,多くの要因が影響するため,足関節運動制限のみの影響を検証することは困難である.本研究では,健常成人において,足関節装具を用いて足関節運動を制限し,初期接地時における衝撃力,下肢筋活動量,さらには前進運動へのエネルギー変換について検討した.【方法】 対象は健常男性10名(年齢25.4±4.0歳:平均値±標準偏差)とした.足関節運動制限は,プラスチック短下肢装具(底背屈0度)を両側に装着した.課題は速度60m/minの歩行をトレッドミル上で行った.課題は十分な練習後に裸足歩行,足関節制限歩行の順で行った.測定機器は小型無線加速度計(ワイヤレステクノロジー社)と筋電図記録用システム(Delsys社)を用いた.加速度計は第三腰椎棘突起部に弾性ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度計から得られたデータは10歩行周期分を加算平均した.初期接地に生じる衝撃力として,上方加速度の平均値を算出した.また前進運動へのエネルギー変換を検討するため,力学的エネルギー交換率を算出した.力学的エネルギーは,加速度を時間で積分して得られた速度と変位から,運動エネルギー(Kinetic Energy: KE)と位置エネルギー(Potential Energy: PE),および両者の和である全エネルギー(Total Energy: TE)を算出した.力学的エネルギー交換率は,{1-|TE| / (|PE|+|KE|)}×100で算出し,重心が下降するエネルギーを完全に前方への推進力へ変換しているとき100%を示す.表面筋電図は,初期接地の衝撃吸収において重要な役割を担う前脛骨筋と大腿直筋を記録筋とした.能動電極を右下肢の各筋腹上に貼付し,サンプリング周波数1kHzで記録した.得られたデータは全波整流後に加算平均し,積分値を算出した.歩行周期の特定は,踵部に貼付したフットスイッチを用いた.すべてのデータ解析には,初期接地から上方加速度ピーク値の範囲を用いた.また統計解析は,Shapiro-wilk検定で正規性を確認後,裸足歩行と足関節制限歩行を比較するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会の承認後,事前に研究内容を説明し,研究参加の同意を得た.【結果】 時間距離因子において,歩行率は裸足で0.88±0.07steps/s,足関節制限で0.87±0.10steps/s,重複歩距離は裸足1.15±0.10m,足関節制限1.17±0.14mと有意差を認めなかった.初期接地時の衝撃力においては,裸足歩行1.73±0.57 m/s2,足関節制限歩行2.63±0.99m/s2と,足関節制限歩行で有意に高値を示した.衝撃吸収に作用する筋活動量において,前脛骨筋は裸足歩行49.62±18.81μVs 、足関節制限歩行は28.39±9.24μVsと,足関節制限において有意に低下を認めた.一方で,大腿直筋は裸足歩行86.80±11.21μVs、足関節制限歩行95.99±32.73μVsと,有意差を認めなかった.力学的エネルギーの交換率は,裸足歩行70.4±10.2%と比較し,足関節制限歩行で63.3±9.2%と有意に低下を認めた.【考察】 足関節運動制限では,上方加速度が増加し,また前脛骨筋の筋活動量も低下した.これは,足関節運動制限が,歩行初期接地時の衝撃吸収機能を低下させることを示唆するものと考えられる.また衝撃吸収機能の低下にともない,前進運動へのエネルギー変換も低下したことから,効率の良い歩行が困難になると考えられた.足関節による衝撃吸収作用が低下した場合,膝関節機能による代償により大腿直筋の活動が高くなると推測される.しかしながら,大腿直筋の活動には有意差が見られず,立脚初期の衝撃は有意に増加したため,初期接地時の衝撃吸収には,足関節機能が重要であると考えられた.これらのことから,足関節の運動制限は,関節に与える負担も大きく,歩行効率を低下させると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,高齢者の関節痛など二次的な障害を考える上で足関節機能の重要性が示唆された.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Ae0094-Ae0094, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550293376
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- NII Article ID
- 130004692654
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed