インターバルトレーニングにおける回復期運動負荷量が心臓自律神経活動に及ぼす影響
説明
【はじめに】 インターバルトレーニング(IT)は高負荷の運動期と低負荷の回復期を反復する負荷方法である。運動期負荷強度は諸家により定められている(Meyer 1996、Puhan 2004)。また運動期と回復期の時間配分も運動期:回復期=1:2が有効とされている(Meyer 1996)。一方、回復期の運動負荷量(Load of recovery phase: Lre)については根拠ある定義づけが不十分である。【目的】 本研究の目的は、ITにおけるLreが心臓自律神経活動に及ぼす影響を検討することである。【説明と同意】 本研究参加に際し研究者は対象者に対しヘルシンキ宣言に則り説明文書を用いて十分な説明を行い、同意を得た上で実験を行った。【対象と方法】 対象は健常男性6例。平均年齢(31.3±4.3才)、平均身長(171.4±1.3cm)、平均体重(62.6±3.8kg)。嫌気性代謝域値(AT)測定のためramp負荷での心肺運動負荷試験(CPX)と短時間最大運動能力(maximum short-time exercise capacity: MSEC)測定のためsteep ramp testを行った。ITにおける運動期負荷量は50%MSEC(Meyer 1996)とし、Lreは0watt(Lre0)、AT負荷量の50%(Lre50%AT)、AT負荷量(LreAT)の3種類とした。各Lreでの運動前、IT中(IT10, IT20)、IT後安静10分(R10)、20分(R20)、30分(R30)で心電図R波間隔(RR)、心拍変動(HRV)、収縮期血圧(SBP)を測定した。HRVから高周波成分HF、低周波成分LF、低周波成分と高周波成分の比LF/HFを算出し、各Lreでの心臓自律神経活動の指標とした。【統計解析】 解析は各LreでのHR、SBP、HF、LF、LF/HFに対し1元配置の分散分析を行い、有意差が見られた場合にTukeyの多重比較検定を用いた。危険率5%未満を有意と判断した。【結果】 ATおよびMSECのHR及び負荷量は97.0±9.2(beats/min)、122.2±8.9(watt)および158.3±20.7(beats/min) 、283.3±34.2(watt)であった。Lre0での平均心拍数、平均負荷量は100.4±4.9(beats/min) 、46.9±5.7(watt)。同様にLre50%ATでは117.9±9.4(beats/min) 、80.4±6.5(watt)、LreATでは145.7±8.7(beats/min) 、114.8±8.8(watt)。以下に各Lreにおける運動前、IT10、IT20、R10、R20、R30のRR、SBP、HF、LF/HFを示す。RR(ms)およびSBP(mmHg)はITで生じた有意差はR20には消失した。HF(msec2)はLre0:909.8±391.2、295.7±407.0*、217.4±283.9*、343.7±206.4*であり、R20、R30は有意差は無かった。Lre50%ATでは 773.1±324.6、127.2±201.7*以降R30まで有意差は持続し、LreATでも656.0±261.8、16.1±9.6*、4.0±1.8*、以降R30まで有意差が持続した。LF/HFはLre0およびLre50%ATで有意差は生じなかった。一方LreATでは運動前 2.6±2.1に対しIT10において16.1±12.0*と有意な上昇を示した(*:p<0.05)。【考察】 Lre0ではRRは副交感神経活動(PNA)の抑制に伴って減じ、その抑制はIT後20分には回復することが示唆された。Lre50%ATでのPNA抑制は運動後30分以降も持続し、LreATではPNA抑制に加え交感神経活動の亢進が示唆された。これらより自律神経活動の速やかな回復が得られる回復期運動負荷量は0wattであることが示唆された。【理学療法研究としての意義】 ITは負荷設定が煩雑であるため臨床現場で普及していない。本研究は根拠ある負荷設定の一助となり、今後のITの実践に貢献するものと考える。なお本研究は平成21年度科学研究費(研究課題番号:21933013)の助成を受けたものである。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2011 (0), Db0549-Db0549, 2012
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550372736
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- NII論文ID
- 130004693289
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可