運動器疾患患者の屋外歩行自立とBerg Balance Scaleの関係

Description

【目的】<BR> 運動器疾患患者は、機能や能力の改善が早く、屋外歩行が自立する症例が多い。しかし当院では、屋外歩行が自立せずに監視に留まる症例もいた。その要因として、屋外歩行の不整地や段差などの環境に対応したバランス能力の低下が挙げられると考えた。そこで今回、運動器疾患患者の屋外歩行とBerg Balance Scale(以下BBS)との関係を調査した。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は、平成20年4月から平成21年8月に当院へ入院していた運動器疾患患者のうち、杖なしで屋外歩行が自立もしくは監視であった50例(認知症を有した者は除く)をカルテより抽出した。疾患の内訳は、股関節疾患30例、膝関節疾患10例、骨盤骨折7例、下腿骨折3例であり、性別は男性23例、女性27例、平均年齢は64.6±21.4歳であった。抽出した対象を屋外歩行が自立していた群38例(以下自立群)、屋外歩行に監視が必要であった群12例(以下監視群)の2群に分けた。また、当院のデータベースを用い、対象のBBSの合計点と各項目の得点を抽出した。検討項目としてBBSの合計点と各項目の得点を調査し、2群間で比較検討した。統計処理には、ウェルチのt検定を用い、危険率は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR> BBSを測定する際に、データの使用を各患者に説明し、了承を得た。集めたデータは、患者名が特定できないように配慮した。また、当院の倫理委員会に提出し、承認を受けた。<BR><BR>【結果】<BR> 2群間を比較し、「立位でのリーチ(前方)」、「1回転」に有意な差を認めた(p<0.05)。また、「合計点」、「片足での立位バランス」、「踏み台への足のせ」に極めて有意な差を認めた(p<0.01)。それ以外の項目には有意な差が認められなかった。 <BR><BR>【考察】<BR> 結果より、BBSの合計点と下位項目の4項目に有意な差を認めた。この結果は、高齢者や脳卒中患者を対象としたBBSと歩行との関係を示した先行研究と類似した結果となった。これより、BBSの点数が、運動器疾患患者の屋外歩行の自立度に対しても関係あることが示唆され、バランス能力が関係していると考えられる。<BR> 各項目では、「立位でのリーチ(前方)」、「1回転」に有意な差を認めた。屋外では、曲がり角などでの環境の把握や方向転換、危険回避することにこれらの動作が必要であると思われ、上記2項目の要素が重要と考えられる。4項目の中でも「片足での立位バランス」、「踏み台への足のせ」に極めて有意な差を認めた。「踏み台への足のせ」は、片脚立位でバランスを保ちながら行う能動的な動作であると考えられる。吉村らによると、片脚立位保持時間が杖なしの歩行自立度に関係していると述べている。このことからも、「片足での立位バランス」、「踏み台への足のせ」は、高度なバランス能力が必要とされると考えられ、段差や不整地などの屋外特有の環境に対応する能力として前述した2項目に比べて必要であり、極めて有意な差を認めたと考える。<BR> 以上のことから、BBSの点数が運動器疾患患者の屋外歩行自立の判断基準となり、合計点、下位項目の点数が高ければ、屋外歩行が自立に至る可能性があるのではないかと考えられる。また、屋外歩行の自立には、環境に柔軟に対応できるバランス能力が重要な要素であると示唆された。今後は、バランス能力以外にも屋外歩行の自立度に関係する他の要因との影響を調べていきたい。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> BBSが運動器疾患患者における屋外歩行自立度の判断基準の一助となると思われる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550434048
  • NII Article ID
    130004581895
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a4p2088.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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