公益事業としての研修会運営に関わったスタッフへの意識調査

DOI
  • 出口 仁
    倉敷市立児島市民病院リハビリテーション科 児島POSTの会
  • 青井 健
    倉敷市立児島市民病院リハビリテーション科 児島POSTの会
  • 中島 英彦
    倉敷市立児島市民病院リハビリテーション科 児島POSTの会
  • 松井 智子
    倉敷あいあいえんリハビリ部 児島POSTの会
  • 渡邉 精三
    児島中央病院理学療法室 児島POSTの会
  • 藤原 大輔
    やまな病院リハビリテーション科 児島POSTの会

抄録

【目的】<BR> 日本理学療法士協会・都道府県士会、あるいは任意団体により多くの研修会が開催されている昨今、各種研修会が卒後教育に果たす役割は大きい。しかし、一般市民を対象とした公益事業としての研修会主催となると、その内容にもよるが、専門職として求める知識と一般市民に啓蒙するための情報との学術的なギャップにより、運営に多大な尽力を要しながら、関わる理学療法士スタッフの関心は低下する可能性がある。<BR> 今回、我々は県理学療法士会・作業療法士会・言語聴覚士会・看護協会、および地元企業後援のもと、地域の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などで組織する会主催の公益事業としての研修会を開催し、そこに関わったスタッフの研修会運営、ひいては公益事業への意識について調査検討したので報告する。<BR>【方法】<BR> K市K地区に勤務する理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などの会員97名から組織されるK会(以下当会)の主催により、一般市民を対象とした公益事業を目的に、認知症をテーマとした研修会を平成21年8月9日に近隣の市民会館にて開催した。そこにスタッフとして関わった当会会員にアンケート調査を実施した。<BR> アンケートには、研修会および公益事業の意義、負担の程度、会への帰属意識などの項目を設定し、「全くそう思う」から「全くそう思わない」までの4段階で回答を依頼した。回答を開催前後、および主に企画・準備に関わったスタッフ(企画側)と主に当日に協力してくれたスタッフ(実働側)とで比較した。<BR>【説明と同意】<BR> 回答は無記名で学術目的のみに使用する旨を記載し、回答により当会において不利益がないことを保証し、同意を得た。なお、本研究はヘルシンキ宣言を遵守した。<BR>【結果】<BR> PT19名、OT26名、ST3名、他3名の51名から回答を得た。年代は20歳代38名、30歳代8名、40歳代3名、50歳代2名であった。ほぼ全員の50名が、研修会に参加し自己研鑽を行うことは必要であると回答したが、「私達が研修会を主催することが必要と思いますか?」に対し「全くそう思う」「ややそう思う」の合計が開催前74.5%から開催後86.3%へ高まった(Wilcoxonの符号付順位検定、P<0.01)。また「当会の一員ということに誇りをもてますか?」に対しては開催前52.9%から開催後72.6%へ(Wilcoxonの符号付順位検定、P<0.001)、「私達が公益事業を行うことは必要と思いますか?」に対しては開催前52.9%から開催後78.4%へ高まった(Wilcoxonの符号付順位検定、P<0.001)。<BR> また負担の程度については、企画側は14名中、「全くそう思う」「ややそう思う」が12名(85.7%)で、実働側の37名中「全くそう思う」「ややそう思う」の合計の23名(60.5%)を有意に上回った(Mann-WhitneyのU検定、P<0.05)。<BR>【考察】<BR> 公益事業としての研修会の開催前後で、研修会の運営および公益事業の実施への意識が高まったことが示された。今回は講師・テーマの選定の段階で我々の自己研鑽と地域のニーズに合致した内容の研修会であったことが成功につながり、ひいては会員の充実感に結びついたものと推測する。<BR> 負担の程度については企画側については講師との緊密な連絡や会場との折衝、実働側への周知など、準備段階から研修会前日に至るまで、終業後数回ミーティングを重ねたことなどの負担を強いたことが要因と考える。<BR>今後も会員のニーズを探りながら自己研鑽と社会貢献に努力していきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が平成20年12月1日に施行され、従来の社団法人は公益社団法人か一般社団法人かの選択を迫られている。前者の場合は複雑な手続きに加え、事業の内容が公益目的比率50%以上を必要とするなど多大な尽力を要するが、社会的信頼性は高くなるメリットがある。<BR> 一般市民への理学療法の認知度を高めるためにも、我々の社会貢献への意識を高めることが今後重要な要因となり、本研究の結果が公益社団法人格か一般社団法人格取得かの選択の際の参考になればと思う。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), G4P2334-G4P2334, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550502400
  • NII論文ID
    130004582988
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.g4p2334.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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