股関節深部筋に対する股関節内旋トレーニングの即時効果

  • 曽田 直樹
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 平成医療専門学院理学療法学科
  • 池添 冬芽
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
  • 市橋 則明
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

Bibliographic Information

Other Title
  • 姿勢制御能力および姿勢アライメントに及ぼす影響について

Description

【目的】股関節疾患の問題点として股関節の不安定性が理学療法の対象となることが多い。不安定性を有する患者に対して、近年、小殿筋や梨状筋などの股関節深部筋に対するトレーニングが注目されている。股関節深部筋である小殿筋や梨状筋は、股関節回旋させる以外の機能として歩行時の骨盤回旋を制御する役割や姿勢制御に関与する筋としての役割が報告されている。しかし、それら深部筋に関するトレーニング効果やその方法に関する報告はほとんどない。そこで我々は小殿筋のトレーニングとして、股関節外転位での股関節内旋運動を行い、姿勢制御能力や姿勢アライメントへ与える影響を検討した。また一般的に深部筋に対して低負荷運動が有効とされていることから負荷量の違いがどのような効果の違いを生じるかを同時に検討した。本研究の目的は、負荷量の違いによる股関節内旋トレーニングが姿勢制御能力および姿勢アライメントに与える影響について明らかにすることである。<BR>【方法】対象は健常女性27名(年齢21.4±1.8歳)とした。対象者を無作為に低負荷トレーニング群10名(以下低負荷群)、高負荷トレーニング群8名(以下高負荷群)、コントロール群9名の3群に分類した。トレーニング方法は、低負荷群では黄色のセラバンド(日本メデックス)を用いメトロノームにて120/minのペースとし、高負荷群では、黒色のセラバンドを用い40/minのペースで股関節内旋運動を行った。各群とも腹臥位、股関節最大外転位、膝関節屈曲位での股関節内旋運動を可動域全範囲で行い、1セット20秒間とし3セット行った。コントロール群はトレーニングを実施しなかった。運動機能として姿勢制御能力と姿勢アライメントを評価した。姿勢制御能力においては静的及び動的姿勢制御能力を評価した。静的姿勢制御能力では重心動揺計(ANIMA社製)を用いて10秒間の片脚立位を行い、総軌跡長(以下LNG)、重心動揺面積を測定した。測定は2回行い平均値を採用した。動的姿勢制御能力では、不安定板による傾斜角度の変動を評価した。Dyjoc Board plus(酒井医療株式会社)を用いて10秒間の片脚立位を行い、総角度変動指数(測定中に傾斜した角度の合計)、前後左右角度変動域(前後左右の平均傾斜角度)を測定した。また姿勢アライメントの分析は、反射マーカーを両側の肩峰,両側の上前腸骨棘、右大転子、右膝関節に貼り付け2台のデジタルビデオカメラにて撮影。画像解析ソフトImage Jおよび三次元ビデオ動作解析システム(DKH社製Frame-DIASIV)を用いて解析を行った。静的アライメントでは、前額面上における片脚立位時の骨盤及び体幹の傾斜角度を計測した。骨盤傾斜角度は、両脚立位時の骨盤傾斜角度を基準とし片脚立位時の骨盤傾斜角度を評価した。なお体幹も同様の手順で評価を行った。また動的アライメントでは、椅子からの片脚での立ち上がりにおける前額面上における骨盤傾斜角度の変位量を算出した。各評価項目のトレーニング前後の比較にはWilcoxon検定を用いた。また各トレーニング(3群)間の比較には、トレーニング前後での変化率を用いkruskal-Wallis検定を行い、有意であった場合に多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】対象者には本研究の趣旨を説明し文書にて同意を得た。<BR>【結果】対象者の身体特性および運動機能の初期値に有意な違いはなかった。低負荷群においてトレーニング後に静的重心動揺におけるLNG、静的アライメントにおける前額面上の骨盤および体幹の傾斜角度が有意に減少した。高負荷群においては、静的重心動揺におけるLNG、不安定板における総角度変動指数、片脚での立ち上がりにおける前額面上の骨盤傾斜角度の変位量が有意に減少した。コントロール群では、すべての項目で有意な差は認められなかった。3群間の比較では、静的アライメントにおいてコントロール群と低負荷群とに有意な差が確認できた。また不安定板においてコントロール群と高負荷の間に有意な差が確認できた。<BR>【考察】本研究の結果から股関節内旋トレーニングの即時効果として、低負荷群・高負荷群ともに片脚立位における重心動揺が減少したことより、静的姿勢制御能力の向上に効果があることが示唆された。これは、股関節内旋運動が深部筋である小殿筋の支点形成能力を向上させ、股関節外転筋群をより効率よく働かせることができた可能性が考えられる。さらに低負荷では、静的アライメントにおける前額面上の安定性を向上させ、逆に高負荷では、動的姿勢制御や動的アライメントにおける前額面上の骨盤の安定性を向上させることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】股関節不安定性は、股関節の痛みや歩容などに悪影響を及ぼす要因とされている。本研究の結果より股関節内旋トレーニングは、股関節の前額面上の不安定性を改善させることができるトレーニングであると考える。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550540544
  • NII Article ID
    130004582196
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c1sh2024.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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