体幹機能評価に与える因子の検討

Description

【目的】<BR>臨床現場で行われている体幹筋力評価の多くは,MMTに代表される起き上がり動作の順序尺度を用いた評価である.当院では10段階に細分化した独自の体幹機能評価を用いている.本研究の目的は,当院で用いている10段階機能評価と客観的体幹筋力,脊柱柔軟性,身体的特徴の関係について検討することである.<BR>【方法】<BR>対象は本研究に同意を得た腰痛疾患を有しない健常成人男性28名(平均年齢28.3±4.9歳,平均身長171.6±4.5cm,平均体重67.5±8.9kg)である. 体幹機能評価は,船橋整形外科式体幹機能テスト(機能テスト)を用いた.船橋整形外科式体幹機能テストは, 起き上がり動作を上肢の位置や足部固定の有無にて細分化した最低1点から最高10点までの10段階評価である.客観的体幹筋力測定は,被検者を背臥位膝関節90°屈曲位,肩関節90°屈曲位とし,肩幅の広さに棒を把持させ, 被検者に上腕骨の長軸方向に向かって起き上がるよう指示した.胸骨中央にHOOGAN HEALTH INDUSTRY製ハンドヘルドダイナモメーターMICRO FET2を自家製パッドとベルトで固定し,5秒間の等尺性運動を3回試行した.測定で得られた値の平均値を胸骨中央から恥骨までの距離と掛け,体重で除したものを客観的体幹筋力(体幹筋力)とした.脊柱柔軟性は,安静立位時および胸腰椎屈曲時に両側のPSISに沿った脊柱の中線と第7頸椎棘突起及び後頭隆起までの距離を測定し,各測定値の差を算出した.身体的特徴は,BMI,身長に対する座高の割合,胴囲,体脂肪率を検討項目とした.<BR>統計学的手法は,機能テスト ,体幹筋力,脊柱柔軟性,身体的特徴をPearsonの相関係数を用い検討した.有意水準は5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>本研究は当院倫理委員会の承認を得た研究であり,被験者には研究の主旨と方法について十分な説明をし,承諾を得て実施した.<BR>【結果】<BR>機能テストと体幹筋力の間には相関係数0.199と正相関の傾向は見られたが,低い値であった.機能テストと脊柱柔軟性では第7頸椎からPSIS間距離で0.425と正の相関が見られ,後頭隆起からPSIS間距離で0.267と弱い正の相関が見られた.機能テストと身体的特徴との関係は,BMIで-0.357,座高で-0.252,胴囲で-0.187と弱い負の相関が見られ,体脂肪率で-0.520と中等度の負の相関が見られた.また, 体幹筋力と身体的特徴の関係は,BMI・座高・胴囲・体脂肪率のいずれも相関関係はみられなかった.<BR>【考察】<BR>我々が用いている10段階の体幹機能評価と脊柱の柔軟性に関連性は得られたが,客観的体幹筋力との関連性は得られなかった.10段階の体幹機能評価では,柔軟性の高い方が上部体幹の屈曲動作を大きく用いることができた.その結果,体幹筋力が低くてもより高度な動作を遂行できたと考えられる.機能テストと身体的特徴の関連性については, BMI及び胴囲と身長に対する座高の割合で弱い負の相関,体脂肪率で中等度の負の相関がみられ,身体的特徴が運動を阻害する一つの因子として考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>順序尺度による体幹筋力検査は,簡便で臨床現場において多く用いられているが,動作遂行の客観的要素の解釈に乏しい.本研究結果より,体幹機能評価は,筋力と脊柱柔軟性といった体幹の複合動作として捉えるべきであり,体幹機能評価に与える身体的特徴や機能面の差異が生じることを加味して使用する必要性を示唆するものとなった.これらの要因を探求することで,今後の体幹機能評価をより客観的にできるものと考える.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550573952
  • NII Article ID
    130004582264
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c3o2116.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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