物理療法に関する理学療法学生のアンケート調査

DOI
  • 滝本 幸治
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 岡部 孝生
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 宅間 豊
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 井上 佳和
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 宮本 祥子
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 竹林 秀晃
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
  • 宮本 謙三
    土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • 臨床実習前後の意識変化に着目して

抄録

【目的】物理療法は,運動療法とともに理学療法の両輪をなす治療法である。臨床で幅広く使用され多くの効果が期待できるが,その一方で臨床にて用いられる物理療法の位置づけが軽視されている印象を受けることも少なくない。原因として,物理療法関連の学会発表や学術論文が他領域と比較して少ないことに加え,基礎研究が大半であり臨床的視点に立った検討に乏しいことなどが考えられる。また,物理療法の診療点数が低いことなども,この現状に拍車をかけているものと思われる。このような現況において,理学療法学生(以下,学生)が物理療法に対してどのような認識や関心を抱いているかは,今後の物理療法の発展に大きな影響を及ぼす要因である。また,臨床実習(以下,実習)での物理療法経験を通して,物理療法に対する意識に変化が生じることも十分考えられる。そこで今回は,実習前後における学生の物理療法に対する意識調査を行い,今後の物理療法教育について検討する知見を得ることを目的とした。<BR><BR>【方法】対象は,土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科に在籍し,平成20・21年度に4年生であった56 名とした。なお,当該学生は3年次配当科目である物理療法学(計60時間)を履修済みの者である。方法は,対象者に対して自記式アンケート調査を実施した。アンケートは選択および記入式で,物理療法に関する1.知識面,2.技術面,3.イメージおよび認識面,4.実習での希望および経験に関する項目で構成された全18問で,筆者が作成したものである。アンケートは,4年次配当科目である臨床総合実習(1080時間)前後の計2回実施した。アンケート結果は表計算ソフト(Microsoft Office Excel 2003)に入力し集計した。集計データは,単純集計とともに実習前後別にクロス集計を行い,Mann-Whitney’s U testにて実習前後の相違について検討した。また,学生が実習で経験してみたい物理療法と実習で経験した物理療法の相違についてもχ2検定(m×n分割表)を用いて検討した。いずれも有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】対象者には,本研究の目的を説明し同意を得た上でアンケートを実施した。また,実習前後の比較を行うために対象者を同定する必要があったため,学籍番号の記載の必要性についても同意を得た。<BR><BR>【結果】知識面について,実習前後を問わず半数以上の学生が物理療法の種類について「ある程度説明できる」と回答,物理療法の生体に及ぼす作用機序については「あまり説明できない」と回答した。物理療法の適応,禁忌についての質問は,実習後に「ある程度説明ができる」の回答率が上昇した(いずれもp=0.02)。技術面については,すべての質問(情報収集,患者への説明,準備,機器の着脱や操作,効果判定)で実習後に好ましい回答が得られた(いずれもp<0.01)。物理療法に対するイメージに関する質問は,実習前後で有意な相違は認めず,物理療法の有効性や必要性,興味・関心が高いことを示す結果であったが,臨床での使用頻度に関する印象については約半数が「あまり多くない」と回答した。物理療法の体系別にみた学生が実習で経験したい物理療法は,電気療法(37%),温熱療法(27%)が上位を占めたが,実習で経験した物理療法は,温熱療法(41%),電気療法(22%)であり,学生希望と実習経験との間に相違を認めた(p=0.02)。<BR><BR>【考察】学生は,学内における物理療法学の修学において,物理療法全般における必要性や有効性を高く認識しており,その認識は実習後にも継続されていることが分かった。また,物理療法に関する知識面や技術面において,実習での経験を通して自覚的な実践能力の向上に寄与できたことは,臨床実践につながる好ましい実習環境が提供されていたことが考えられる。しかし,実習後においても物理療法の臨床での使用頻度が多くないと認識している学生が半数近く存在し,実習前に学生が希望した物理療法が実習で十分に経験できていない結果が得られた。したがって,臨床で実施できる物理療法は各施設によって限定されるが,限られた物理療法機器を積極的に施行し,学生に対する新たな興味・関心を開拓していくことも必要と思われる。加えて,臨床実践を通して物理療法の作用機序を正しく理解させることは,卒後の臨床活動に継続させるための要件であると考える。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】物理療法について理学療法士を志す学生がどれだけ興味を抱き,必要性や有効性を理解しているか把握することは,今後の物理療法の発展を考える際に必要な情報である。今回の知見は,教員および臨床実習指導者ともに物理療法教育を再考する資料となるものである。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), F4P2306-F4P2306, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550642816
  • NII論文ID
    130004582930
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.f4p2306.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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