後方突進現象を呈するパーキンソン病患者に対してスクワットプログラムが及ぼす影響についての検討
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【目的】パーキンソン病(以下PD)は易転倒性の疾患であり、1年間の転倒発生率は68.3%に及ぶと報告されている。PD患者の転倒は、疾患の重症度との関連が強く、姿勢反射障害・歩行障害が出現する改訂Hoehn&Yahr重症度分類(以下H&Y)3以上で危険性は高くなる。今回、H&Y3・4のPD患者を対象とし、姿勢制御である重心のコントロールを目的としたスクワット動作が、姿勢反射障害の評価指標となる後方突進現象に及ぼす影響について検討した。<BR>【方法】本研究の対象は、歩行が自立レベルであり、姿勢反射障害の指標となる後方突進現象が認められるPD患者とした。H&Y3のPD患者をA群、H&Y4のPD患者をB群とした。A群10名(男性1名・女性9名、年齢68.6±7.1歳、罹病期間10.8±5.0年)、およびB群8名(男性3名・女性5名、年齢73.9±6.9歳、罹病期間11.3±5.5年)であった。評価項目はPull Test、Timed Up and Go Test(以下TUGT)の2項目とした。Pull Testは臨床場面において、姿勢反射障害の評価に頻繁に使用される。検者は被検者の後方に位置し、被検者の両肩を後方に引き、その際の姿勢反応をUnified Parkinson's Disease Rating Scale Part3を用いて評価した。後方突進現象の評価は、0.正常 1.後方突進現象あるが自力で立ち直れる 2.後方突進現象あり転倒、として計数値とし処理した。評価はリハビリテーション実施前、ベッド上での他動・抵抗運動実施後、スクワット動作実施後の3条件で測定した。持ち越し効果を考慮し、各運動後の測定に関しては、測定間に1週間の期間を設けて実施した。リハビリテーション実施前についてはそれぞれの運動療法前に測定した。<BR>【説明と同意】対象者には本研究の主旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。<BR>【結果】1.Pull Test(1)リハ実施前-ベッド上運動前:A群1.4±0.5・B群1.9±0.4、スクワット動作前:A群1.5±0.5・B群1.9±0.4 (2)ベッド上運動後:A群1.3±0.7・B群1.9±0.4 (3)スクワット動作後:A群0.2±0.4・B群1.8±0.5であった。A群において、リハ実施前・ベッド上運動後と比較し、スクワット動作後で有意な差が認められた(p<0.01)。B群においては各測定間に有意な差は認められなかった。2. TUGT(1)リハ実施前-ベッド上運動前:A群10.1±2.9秒・B群29.6±18.5秒、スクワット動作前:A群10.4±3.0秒・B群30.8±19.0秒(2)ベッド上運動後:A群9.3±2.2秒・B群26.4±13.8秒(3)スクワット動作後:8.8±2.0秒・B群29.7±17.3秒であった。A群において、リハ実施前と比較し、ベッド上運動後・スクワット動作後で有意な差が認められた(p<0.01)。また、ベッド上運動後と比較し、スクワット動作後で有意な差が認められた(p<0.01)。B群においては各測定間に有意な差は認められなかった。<BR>【考察】今回、重心コントロールの促通目的でスクワットを実施させたが、H&Y3では効果が認められ、H&Y4では効果が認められない結果となり、H&Yの違いにより、リハビリテーション効果に大きな差が認められた。PDは進行性の疾患であり、H&Yに応じてリハビリテーションの目標設定・アプローチの方法も異なってくる。H&Y3では日常生活は自立し介助の必要は有しないが、H&Y4になると独歩が困難となり、日常生活に介助が必要なレベルまで機能が障害される。リハビリテーションのエビデンスとしては、振戦や固縮などの一次的機能障害である主徴を改善させる効果は認められないと報告されている。進行性疾患であるPDにおいて、介入をより早期から積極的に行うことで、一次的障害と活動量減少による二次的機能障害との悪循環による症状の進行を予防することが非常に重要であると考えられる。TUGTはPD患者において、運動機能や歩行能力、転倒の危険性との関連が報告されており、A群においてリハビリテーション前と比較し、各運動後に成績がよかったことで、運動効果が得られたと考えられる。また、A群ではスクワット動作後のPull Test結果において改善が認められた。これは、立位での重心コントロールを意識的に行わせた結果、大脳皮質や大脳基底核を始めとする中枢神経系による姿勢調節機序の活性化をもたらせた為と考えられる。スクワット動作により、股関節屈曲・体幹前傾による重心の前方コントロールが促通されたことで、後方突進現象が改善したと考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】PDにおける転倒の主原因となる姿勢反射障害が、H&Y3の患者に対して、スクワット動作プログラムにより改善されることはPD患者の転倒改善に貢献すると考えられる。<BR>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), AcOF1016-AcOF1016, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550700544
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- NII Article ID
- 130005016680
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed