腰椎変性疾患に対する運動療法の意義

DOI
  • 小俣 純一
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科 弘前大学大学院 保健学研究科
  • 対馬 栄輝
    弘前大学大学院 保健学研究科
  • 遠藤 達矢
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科
  • 鶴見 麻里子
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科
  • 遠藤 浩一
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科
  • 岩渕 真澄
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科
  • 白土 修
    福島県立医科大学 会津医療センター準備室・福島県立会津総合病院 整形外科・リハビリテーション科
  • 伊藤 俊一
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • - Oswestry Disability Indexに影響を及ぼす因子からの検討-

抄録

【目的】近年,高齢化社会が進むにつれて変形性関節症・脊椎変性疾患などの運動器疾患患者は急増している.日常の臨床においては,腰椎変性疾患によって人生の質(QOL)に支障を来たしている患者が多く見受けられる.その中で,患者のQOL評価を実施することは非常に重要であると考えるが,一般的に用いられているとはいい難い.腰椎変性疾患患者のQOL改善に必要なアプローチ方法を明らかにすることは,治療の質の向上につながるであろう.また,疾患特異的QOL評価としてOswestry Disability Index(ODI)は,多くの報告で有効な評価手段であることが示されている. そこで本研究では,腰椎変性疾患患者における如何なる因子がODIに影響を及ぼすかを解析し、腰椎変性疾患に対する運動療法の臨床的意義を検討することを目的とした.【対象と方法】対象は会津医療センター整形外科を受診した腰椎変性疾患患者43名とした.男性22名,女性21名,平均年齢66.9歳であった.評価項目は,ODI,機能的項目として体幹屈曲筋力および伸展筋力,Finger Floor Distance(FFD),疼痛の項目として腰痛安静時VAS,腰痛動作時VAS,生活の項目として生活様式(寝具と生活),農作業の有無とした.体幹筋力をHand Held Dynamometer(HHD;徒手筋力計モービィMT-100;酒井医療社製)を用い、椅坐位にて屈曲筋力および伸展筋力を測定した.3回の測定から得られた平均を採用した.生活様式の評価は、寝具においてベッドまたは布団,生活においては椅子または床であるかを質問して生活様式の評価とした.統計的解析は,ODIの総点数を従属変数,患者基本情報,機能的項目,疼痛の項目および生活の項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を用いて解析した. 【倫理的配慮】本研究は,ヘルシンキ宣言に沿って行われた.また,福島県立会津総合病院倫理委員会の承認を受けて実施している.【結果】評価項目の結果は,体幹屈曲筋力12.4±3.6kg,体幹伸展筋力14.1±3.6kg,FFD63.7±15.5mm,安静時VAS25.7±23.7mm,動作時VAS65.9±23.9mmであった.生活様式は,ベッド51.2%,布団48.8%,洋式の生活34.9%,和式の生活65.1%,農業有りは46.5%,なしは53.5%であった.ODIに対する影響力(標準偏回帰係数)は,体幹伸展筋力が0.393(p<0.05)、安静時VASが0.373(p<0.05)であった。【考察】ODIは、腰痛患者に対する疾患特異的QOL評価法として最も有用なものの一つである。その影響因子を検討することは、腰痛患者に対する適切なアプローチを選択する上で極めて重要である。本研究から、体幹伸展筋力と安静時VASが最もODIに影響を与える因子であることが判明した.この結果は、体幹伸展筋力の向上と疼痛軽減が腰痛患者のQOL改善ために重要であることを示した。これらは運動療法の最大の目的でもあり、その臨床的意義の拠り所になると考える。本研究では,生活様式にも着目して検討を実施したが,生活様式の違いは,QOLに対する影響力を見出せなかった.ODIは機能的パラメーターである体幹伸展筋力と痛みのパラメーターである安静時VASの影響を捉えることが可能であり,ODIのような疾患特異的評価を用いることが重要な評価であることを示した.さらに,体幹伸展筋力や疼痛に対する運動療法アプローチが腰椎変性疾患患者のQOLに変容に影響を示す可能性があると考えられる.しかし,実際の臨床においては、機能やQOLには多くの因子が関与しており、評価項目の再検討も必須である.【理学療法学研究としての意義】腰椎変性疾患患者におけるODIは筋力または疼痛と有意に関連し,腰椎変性疾患患者の筋力や疼痛に対するアプローチによってQOLの変容を来す可能性がある.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101084-48101084, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680551284608
  • NII論文ID
    130004585419
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101084.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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