在宅での自主トレーニングが継続しやすい高齢者の特性について
Description
【はじめに】 介護保険を利用した訪問リハビリテーション(訪問リハビリ)の需要は年々増大しており、より質の高いサービスを提供する為にもエビデンスの構築が急務である。現状、利用者一人に対する訪問リハビリの平均的な訪問頻度は1~2回/週であり、訪問リハビリを除いた生活時間における運動習慣が要支援・要介護者における身体機能の維持改善に重要であると考えられ、よって各利用者に対する自主トレーニングの指導方法や自主トレーニングの定着は重要視される。本調査では、訪問リハビリ利用者の自主トレーニングの継続状況について調査を実施し、習慣化しやすい利用者の特性を明らかにする事を目的とした。【方法】 対象は屋内移動が自立している訪問リハビリの利用者58名であり、そのうち過去に担当セラピストが自主トレーニングの指導を実施した41名(年齢76.1±10.0歳、男性24名、女性17名)に対し、1)基本情報(年齢、性別、主疾患、発症からの期間、FIM運動項目、認知症の有無、睡眠障害の有無、FIM運動項目)、2)自主トレーニングに関するアンケート(継続状況、指導内容)2)過去一年間の転倒経験、3)Berg Balance Scale(BBS)、4)Life Space Assessment(LSA)、5)Modified Falls Efficacy Scale(MFES)について調査を実施した。対象者を担当セラピストが指導した自主トレーニング内容を継続している群(継続群)及び継続していない群(非継続群)の2群に分け、両群間において比較検討した。統計処理にはR2.8.1を使用し、両群間の比較にカイ二乗検定及びウィルコクソンの符号順位検定を用いた。なお、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 この研究はヘルシンキ宣言に基づいて、対象者には、本研究の目的と内容を十分説明し、同意を得て行った。【結果】 継続群(21名)と非継続群(20名)を比較検討した結果、1)継続群が非継続群より有意に認知症と睡眠障害が少なかった。2)継続群が非継続群より有意にBBS得点が低く、また、MFES項目の「軽い買い物を行う」と「バスや電車を利用する」においても継続群の方が非継続群と比べ有意に点数が低かった。3)両群間において年齢、性別、主疾患、発症からの期間、FIM運動項目、転倒経験、LSA、MFES合計点においては有意差を認めなかった。【考察】 今回の調査において自主トレーニングを継続に関した利用者の特性について分析した結果、非継続群より継続群が認知症及び睡眠障害が少なかった。これらから、自主トレーニングの内容や目的を理解できる認知能力や自主トレーニングを継続できる体調管理が必要であると考えられ、自主トレーニングの継続状況の改善にも体調の変化や認知機能面を考慮する必要性が示唆された。両群間においてFIM運動項目とLSA合計点、転倒経験において有意差を認めなかったが、継続群が非継続群よりもBBS得点が有意に低くまた、MFESの項目における屋外での生活活動に対する自己効力感が低かった事から動作能力や転倒経験に関係なく、転倒リスクが高く、屋外での動作に対する自己効力感が低い対象者は、自主トレーニングの継続が定着しやすく、転倒リスクが低く、屋外での活動に対する自己効力感が高い対象者が自主トレーニングの継続が定着しにくいと示唆された。一般的に高齢者の姿勢制御能力とLSA合計点には関連が強いとされているが、今回の対象者は在宅で生活し、比較的高い動作レベルのため、介護者や生活環境といった外的因子が関与しやすく、両群間において差を認めなかったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 自主トレーニングに関した報告は少なく、継続状況における在宅高齢者の特性を明らかにする事で、運動習慣の定着を促進し、在宅高齢者における身体能力の維持・改善に繋がると考える。
Journal
-
- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
-
Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48101099-48101099, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
- Tweet
Keywords
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680551294848
-
- NII Article ID
- 130004585430
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed