女子バドミントン選手における足関節捻挫と足部機能・足圧中心制御の関係

DOI
  • 大谷 遼
    医療法人友和会 鶴田整形外科 リハビリテーション部
  • 小野寺 久美
    医療法人友和会 鶴田整形外科 リハビリテーション部
  • 秀島 聖尚
    医療法人友和会 鶴田整形外科 リハビリテーション部
  • 小松 智
    医療法人友和会 鶴田整形外科 リハビリテーション部
  • 平川 信洋
    医療法人友和会 鶴田整形外科 リハビリテーション部
  • 峯 博子
    医療法人友和会 鶴田整形外科
  • 青柳 孝彦
    医療法人友和会 鶴田整形外科
  • 可徳 三博
    医療法人友和会 鶴田整形外科
  • 鶴田 敏幸
    医療法人友和会 鶴田整形外科

抄録

【はじめに、目的】 足関節捻挫(以下、捻挫)は発生頻度の高いスポーツ外傷である。その原因として再発を引き起こす足関節の慢性足関節不安定症 Chronic Ankle Instability(以下、CAI)が挙げられる。CAIは「機械的不安定性」と「機能的不安定性」からなる。機械的不安定性は解剖的・組織的変化とされている。一方で機能的不安定性は、足関節捻挫により生じる筋・神経・姿勢制御機能の低下とされているが詳細は明らかではない。そこで本研究では、CAIにおける機能的変化の詳細を明らかにする為に捻挫の既往を有するスポーツ選手の足部機能・足圧中心制御の特徴を把握し、その特徴が捻挫の受傷に与える影響を検討する事を目的とした。【方法】 対象は高校生女子バドミントン選手とし、捻挫の既往がある15名(既往有り群)既往の無い15名(既往無し群)とに分類した。足関節可動域・足趾開排能・静止立位重心動揺・および前後左右方向へ随意足圧中心移動距離の測定をWii balance board(任天堂株式会社製)にて行い、デジタルカメラで撮影した動画からImageJ(NIH製)を用いてLeg-Heel angle(以下、LHA)を計測し、LHA変化量を求めた。両群間の比較には対応のないt検定を、各項目の関連についてはPearsonの単相関を用いた。そして、評価実施後半年間において捻挫を受傷した者10名(受傷群)と元々既往がなく半年間捻挫を受傷しなかった者10名(健常群)とに分類し、評価時のデータを比較分析した。なお,統計学的処理にはSPSS ver11.0を使用し,危険率5%未満をもって統計的有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の実施に際して、ヘルシンキ宣言に基づき対象者にその趣旨を十分に説明した上で同意を得た。また、本研究は当院の倫理委員会による承認を得た上で実施した。【結果】 評価実施時における捻挫既往の有無による比較では、身長・体重・関節可動域・静止立位重心動揺は両群間に有意な差は認められなかったが、捻挫群は健常群と比べて静止立位における足圧中心位置が後方に位置し(既往有り群38.5%/既往無し群42.1%,p<0.05)側方への随意足圧中心移動距離が小さく(21.4cm/23.4cm,p<0.05)足趾開排能も低く(0.76%/11.5%,p<0.05)それぞれ有意差が認められた。また、側方への足圧中心移動距離と安静時足趾開排に正の相関が認められた(R=0.656,p<0.05)。 また、評価後半年間の間に足関節の捻挫を受傷した受傷群は10名で、健常群は10名であった。評価時のデータを比較すると、受傷群は健常群と比べて足趾開排能が低く(受傷群0.76%/健常群11.5%,p<0.05)、静止立位における足圧中心位置が後方に位置し(39.2%/44.1%, p<0.05)、側方への足圧中心移動時において健常群はLHAが回内(+)方向に変化するのに対し、受傷群は回外(-)方向に変化しており(+2.85°/-2.07°, p<0.05)それぞれ有意差が認められた。身長・体重・関節可動域・静止立位重心動揺および随意足圧中心移動距離に有意差は認められなかった。【考察】 捻挫の既往のある選手は静止立位時において足圧中心が後方に位置していた。捻挫に伴い距骨の前方偏位や前方関節包の肥厚が生じる。加えて、関節位置覚の変化により底屈位をとり易くなることで、後方荷重になったと考えられる。また、捻挫の既往のある選手は足趾開排能が低かった。足趾の開排には母趾外転筋をはじめとする足部内在筋がはたらくが、足部内在筋は重心の前方荷重時に働くとされており、足関節捻挫に伴う後方荷重によって足部内在筋の活動が低下し、足趾開排能力が低下したと考えられる。このような足趾開排能の低下した状態では足圧中心を大きく移動させることができず、捻挫発生のリスクが高まると考えられた。しかし、評価後に捻挫を受傷した選手の特徴をみると、側方への足圧中心移動距離は健常群と差は無かったが、側方移動時にLHAが回外方向に変化することが分かった。足圧中心を大きく移動する事が出来たとしても、後方荷重に加え側方移動時に後足部の回外が伴えば捻挫のリスクは高まる。捻挫受傷のリスクとして足圧中心制御に着目することは重要であるが、それに加え足部がどのような対応をしているのか考慮することが重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、Wii balance boardやデジタルカメラを用いた足関節捻挫のリスク評価の有用性が示唆された。こうした評価は高価な機器を必要とせず臨床場面において実施しやすい為、今後スポーツ現場を含めた多くの場面での臨床応用が期待できると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101485-48101485, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680551490560
  • NII論文ID
    130004585711
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101485.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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