漸増起立負荷試験における座面高の違いが酸素摂取量に与える影響

DOI
  • 長澤 祐哉
    松本市立病院 リハビリテーション科
  • 中村 慶佑
    松本市立病院 リハビリテーション科 信州大学大学院医学系研究科博士後期課程保健学専攻
  • 横川 吉晴
    信州大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 大平 雅美
    信州大学医学部保健学科理学療法学専攻

抄録

【はじめに,目的】運動耐容能の評価は運動処方をする際や運動療法の効果判定に使用されている。この評価には自転車エルゴメーター(以下,CE)による心肺運動負荷試験がgold standardであるが,高価な機器と技術を必要とし,高齢者や運動障害を有する者には実施困難な場合が少なくない。我々はより多くの対象者に比較的容易に運動耐容能の評価が可能となることを目的に,日常動作である起立動作を用いた漸増起立運動負荷試験(以下,ISTS)のプロトコールを作成した。しかし,ISTSの最高酸素摂取量予測に適切な座面高は明らかとなっていない。そこで本研究は,若年健常女性を対象にISTS時の座面高と最高酸素摂取量(以下,peak VO2)の関係,さらにはISTS実施時間とISTS,CEのpeak VO2の関係を明らかにすることを目的とした。【方法】20代の健常女性13名を対象とした(平均年齢23.1±2.6歳)。ISTSは座面高の設定を腓骨頭上縁までの高さの80%(以下,80%ISTS),100%,120%,140%とし,上肢でストックを使用して実施した。各ISTSとCEの施行順は無作為化して実施した。CEのプロトコールは15W/分のramp負荷を用いて最大12分で終了とした(最大負荷量は180W)。ISTSは6回/分の起立頻度から始まり,45秒毎に2回/分ずつ漸増し,最大12分で終了するプロコールとし,起立頻度は発信音で調整した。酸素摂取量,心拍数は連続的に測定し,血圧,自覚的運動強度と下肢疲労感のボルグスケールは運動負荷直後に測定した。運動負荷試験は一般的な運動負荷試験の中止基準に該当,あるいは起立動作が発信音から3動作遅れた場合,運動負荷を終了した。Peak VO2は各起立頻度での終了前30秒間の酸素摂取量の平均値とした。各座面高で実施した際のpeak VO2の差は反復分散分析を行い,事後検定にTurkey検定を用いて確認した。さらに,80%ISTS実施時間(sec)を独立変数,80%ISTS又,CEのpeak VO2(ml/min/kg)を従属変数として回帰分析を行った。【結果】80%ISTSは13人中4人が12分間完遂し,9名は途中で起立頻度に追従できず終了となった。100%,120%,140%ISTSは全ての被検者が12分間完遂した。80%ISTS実施時間(x)と80%ISTSのpeak VO2(Y1),CEのpeak VO2(Y2)からY1=0.02x+14.4(p<0.05),Y2=0.06x-4.6(p<0.01)という一次回帰式が得られた。また,80%ISTS実施時間とCEのpeak VO2,80%ISTSのpeak VO2には各々相関係数がr=0.85,r=0.69で有意な相関が見られた(p<0.01)。Peak VO2(平均値±標準誤差)は80%ISTS(27.5±1.4),100%ISTS(23.1±1.8),120%ISTS(18.4±1.7),140%ISTS(15.4±1.7)の順に有意に高かった(p<0.01)。さらに,80%ISTSのpeak VO2はCEのpeak VO2より11%有意に低かった(p<0.01)。【結論】本研究より,ISTSの座面高が20%低くなる毎にpeak VO2は3~5(ml/min/kg)増加することが確認できた。さらに,若年健常女性では80%ISTS実施時間からpeak VO2の予測ができる可能性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680551740288
  • NII論文ID
    130005417485
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0425
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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