ACL再建術後患者における反重力トレッドミル『Alter G』の有用性についての検討
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- 木本 龍
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 宮原 小百合
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 河野 めぐみ
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 篠原 竜也
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 渡邉 昌
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 宗村 浩美
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 常泉 美佐子
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 菅原 成元
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 輪座 聡
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 遠藤 洋毅
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 大隅 雄一郎
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 柴田 大輔
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 鈴木 洋平
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション部
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- 菅谷 睦
- 帝京大学ちば総合医療センター リハビリテーション科
Description
【はじめに、目的】 反重力トレッドミル『Alter G』とは ,NASAで宇宙飛行士の訓練用として開発されたトレッドミルであり,空気圧により利用者を持ち上げて免荷量を調整でき,部分体重免荷トレッドミルトレーニングが可能となるリハビリテーション機器である.現在,プロサッカーチームの『マンチェスターユナイテッド』や『ACミラン』,NBAの『レイカーズ』などに導入され,主に整形外科やスポーツリハビリテーションの分野で使用されている. 当院では2011年10月より導入し,多くの患者のリハビリテーションに使用してきた.しかし,『Alter G』は新しいリハビリ機器のため,その適応や設定方法,効果については十分確立されていない.今回,ACL再建術後の患者において,『Alter G』の使用の有無による在院日数や退院時の移動能力,筋力推移を比較・検討し,『Alter G』の効果や今後の使用方法について検討したので報告する.【対象、方法】 使用群は『Alter G』が導入された2011年10月以降にACL再建術を受けられた12名(平均年齢:30.3歳,男性6名,女性6名). 未使用群は『Alter G』が導入される以前に手術を受けられた12名(平均年齢:29.5歳,男性7名,女性:5名). 両群ともに手術は内視鏡下にて内側ハムストリングス自家腱を使用した4重束のシングルルートであり,後療法は術後2週間までは1/2PWB,2週後よりFWBとし,FWB開始後に問題がなければ退院という当院のクリニカルパスに沿ってリハビリを実施した.『Alter G』を使用しての歩行練習を追加した以外には両群に差はなかった. 診療録より基礎情報(年齢・性別),在院日数,退院時の移動能力(手放し歩行or松葉杖歩行),筋力推移について調査し,2群で比較検討を行った.筋力測定はミナト医科学株式会社製の『COMBIT CB-2』を使用し,術前・術後1ヶ月・3か月・6か月の時点で膝伸展および屈曲筋力を測定した.なお,各速度は60deg/secと180deg/secの2条件とし,最大筋力の患健比で評価をした.統計処理は,在院日数の比較はマンホイットニーU検定を,退院時移動能力の比較はχ二乗検定を,筋力推移の比較は分散分析(Post-hoc test: Bonferroni)を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,当センター内で倫理検討を行い,本研究の内容を患者に十分説明した後,同意を得た.【結果】 在院日数の比較では,使用群は17.0日,未使用群は19.4日と有意に使用群の方が短かった. 退院時の移動能力の比較では,使用群は手放し歩行9人,松葉杖歩行が3人に対し,未使用群は手放し歩行5人,松葉杖歩行が7人であり,使用群の方が手放し歩行で退院できた人数が多く,統計上有意差を認めた. 筋力推移に関しては,術後1ヶ月時点のみ,使用群の方が膝屈曲筋力は有意に高かったが,膝伸展筋力や術後3か月・6か月時点の膝屈曲筋力では2群間で差は認められなかった.【考察】 使用群は在院日数が短いにもかかわらず,退院時には手放し歩行獲得者が多かった.これは『Alter G』を使用することによって,空気圧で下肢にかかる体重を調整でき,術後早期から手放し歩行での練習が可能なことが影響していると思われる.両群共に術後2週までは1/2PWBであり,松葉杖歩行での生活となるが,使用群は術後早期から手放しでの部分体重免荷歩行練習が可能となり,FWB開始となった術後2週直後に手放し歩行が獲得できる症例が多かった. また,筋力推移に関しては,術後1ヶ月時点の膝屈曲筋力のみ有意に高かった.これは,当院では内側ハムストリングス自家腱を使用する手術であるため,術後早期の膝屈曲筋力の低下が著明であるが,『Alter G』を使用し部分免荷することによって,体重支持や下肢の振り出しに関わるハムストリングの筋活動量が減少し,術後早期からハムストリングスに対して愛護的な歩行練習ができるためと考えられる.しかし,術後3か月・6か月時の筋力は2群で有意差が認められなかった.これは,部分体重免荷の先行研究によると,部分免荷歩行は通常歩行時よりもハムストリングスや大腿直筋の筋活動量が低下することが報告されており,FWBが痛みなく可能になった後は『Alter G』を使用せず,積極的に荷重させた方が筋力の回復は良好なのではないかと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 ACL再建術後の患者において,『Alter G』での部分免荷歩行練習は,術後の早期退院・早期手放し歩行の獲得が可能となり,急性期の筋力回復にも適していると考えられる.しかし,免荷することで下肢の筋活動量が減少することを考慮すると,FWBが可能になってからは積極的に荷重させた方が良い可能性が示唆される.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48101538-48101538, 2013
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680552041344
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- NII Article ID
- 130004585751
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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