急性期脳卒中患者のリハビリテーション開始時点から2週時点と4週時点の歩行予後予測

DOI
  • 船越 剛司
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
  • 公文 範行
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
  • 福田 真也
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
  • 浦谷 明宏
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
  • 馬井 孝徳
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
  • 原田 真二
    公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院

書誌事項

タイトル別名
  • 決定木分析を用いた視覚化と予測精度の検討

抄録

【はじめに,目的】脳卒中ガイドライン2009では,専門医療スタッフが早期から計画的かつ組織的にリハビリテーション(以下リハ)を行うことや,回復期への一貫した流れで重点的・包括的なリハを投与することが推奨されている。しかし,発症当初の超急性期時点から発症後2~4週間程度の早期の予後予測は,既存の予後予測では評価や予測時期が異なることから臨床応用は困難であり,急性期時点においては客観的で明確な目標が設定できない現状にある。よって,今回,脳卒中患者を対象に,発症後2週と4週時点の歩行自立可否をリハ開始時所見から決定木分析を用いて予測するツールを作成し,その予測精度を検証することとした。【方法】研究デザインは後ろ向き観察研究とした。2008年7月~2013年6月に当院脳卒中科・脳外科に入院し,リハを施行した連続3729例のうち,脳梗塞または脳出血と診断され,発症から3日以内にリハを開始した1944症例を対象とした。このうち,入院前modified rankin scale(以下,入院前mRS)3以上250例,発症後2週間以内に退院346例,死亡39例,リハ開始時に既にFunctional Independence Measure(以下FIM)の歩行項目が6点以上234例,評価項目に欠損がある160例を除外した915例を解析対象とした。解析方法は,まず,発症後2週と4週時点の歩行FIMを用い,それぞれFIM5以下を非自立群,FIM6以上を自立群とし,当院脳卒中科・脳外科データベースかつ診療録より得られた評価項目(性別,年齢,入院前mRS,脳卒中既往有無,病名,半球,病巣,発症から入院までの日数,発症からリハ開始までの日数,JCS,BRS上肢・手指・下肢,NIHSS,歩行FIM,m-FIM,c-FIM,失行有無,USN有無,pushing有無)の二群間比較を行った。次に,有意差を認めた変数で相関行列の作成と選別を行ったものを独立変数,2週と4週時点の歩行自立可否を従属変数とした決定木分析(CHAID:以下,決定木)を行い,2週と4週時点の歩行自立予測モデルをそれぞれ作成した。なお,この際,10分割サンプルによる交差検証も同時に行った。最後に,決定木で採用された変数を用いてロジスティック回帰分析(尤度比増加法)を用い,採用される変数とモデル式の有意性,予測精度の差異を検討した。統計解析ソフトはSPSS Statistics 22を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】2週時歩行自立予測モデルでは,NIHSS,入院前mRS,m-FIM,年齢,pushing有無,性別の6変数が採択され,一致率は82.1%,感度74.7%,特異度87.7%,陽性的中率74.7%,陰性的中率87.8%,陽性尤度比6.15,陰性尤度比0.29となり,交差検証は79.0%となった。4週時歩行自立予測モデルでは,NIHSS,年齢,病名,性別の4変数が採択され,一致率は86.7%,感度43.9%,特異度95.3%,陽性的中率67.6%,陰性的中率88.4%,陽性尤度比9.39,陰性尤度比0.59となり,交差検証は81.6%となった。決定木と同様の変数を投入したロジスティック回帰分析の結果は,2週と4週時の歩行自立予測モデルは伴に,性別以外の変数が採択され,モデルχ2値はp<0.05であり,それぞれ判別的中率は83.6%と86.0%となった。【考察】2週時歩行自立予測モデルは,決定木の予測モデルの一致率,分割表から得られる各指標,外的妥当性が良好であった。また,ロジスティック回帰分析を用いた解析でも性別以外の全ての変数が採用され,モデル式の有意性が保障され,同程度の判別適中率となった。よって,2週時歩行自立予測モデルは,性別を変数として用いることに関しては検討の余地があるが,良好なモデルであることが示唆された。4週時歩行自立予測モデルも類似した結果となったが,感度,陽性的中率が低い結果となっていたことから,歩行が自立しない症例の判別には有用だが,自立する症例の判別は困難であり,その使用には注意が必要と考えられた。今後,経過や併存疾患に関する変数等の投入や歩行自立に至った症例を増やした群での検証を行い,再検討を行う必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】従来の報告では,最終帰結の予測的中率は2~4週時点の評価で8~9割と非常に良好であるが,発症当初の超急性期時点では7割程度と報告されており,この間は明確な予後予測や短期的な目標設定が困難だった。しかし,今回,2週時点の歩行自立予測モデルの視覚化と予測精度の検証を行い,これが有用である可能性を示唆したことから,この曖昧だった期間に関しても,リハ開始当日のベッドサイドからより客観的かつ具体的な目標が設定でき,他職種間での共有や計画的かつ組織的なリハを提供できる可能性があると考える。

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キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680552136960
  • NII論文ID
    130005416833
  • DOI
    10.14900/cjpt.2014.1881
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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