一過性の全身振動トレーニングが歩行に与える影響

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  • パーキンソン病、慢性期片麻痺患者における即時効果での検討

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【はじめに、目的】 全身振動(Whole Body Vibration:以下WBV)トレーニングは、振動するプラットホーム上で立位を取り、全身に振動刺激を与えるトレーニング方法である。WBVトレーニングは、当初宇宙飛行士やアスリートの筋力増強訓練として用いられてきたが、近年では筋骨格系だけでなく、神経系など様々な作用が生じることが分かっており、医療分野では、骨形成促進、疼痛緩和、痙性抑制などへの応用が検討されている。なかでも、パーキンソン病(Parkinson`s Disease以下:PD)に対するWBVトレーニングの効果として、振戦や筋固縮の症状緩和、歩行障害、バランス機能の改善が報告されている。しかし、WBVトレーニングの刺激強度・時間等の方法は、様々で,まだ統一された見解がなされていない。特に振動周波数については、先行研究ではPDや脳血管疾患(以下:CVA)に用いられるのは6~10Hzが中心である。しかし、Golaszeski ら (2002) は、振動刺激を加えて「緊張性振動反射」による拮抗筋抑制を引き起こすには 50Hz が適していると報告している。また筋緊張抑制において岩月ら(1991)は、40Hz近傍が最適であるとしている。このように振動刺激法の有効性が明らかになってきているが、振動刺激の振幅や周波数については検討の余地がある。そこで今回、PD、CVA患者に対し、先行研究より高い周波数でのWBVトレーニングの効果を歩行の改善状況から検討した。【方法】 対象は、当院デイケアに通所し、PD、CVA利用者のうち、実験の内容・主旨が理解可能で、歩行がFIMで6点以上(屋内で補助具を用いた歩行自立レベル)のものに対して、測定を行った。対象者内訳は、PD患者10名(男性6名、女性4名) 平均年齢70歳(±8.1)、CVA患者10名(男性6、女性4名) 平均年齢69.6歳(±9.1)、コントロール群10名(男性5、女性5名) 平均年齢71.2歳(±8.7)。 使用機器は、WBVトレーニング機器として、振動刺激装置(Power Plate Pro5、Power Plate International社製)を用いた。 PD群、CVA群そしてコントロール群の3つの群でWBVトレーニングを行い、その前後での10m歩行時間と歩数を計測し、そこから歩行速度と歩幅、歩行率(歩数/時間)を算出した。 歩行速度は、至適速度とし、各被験者の任意の速度とした。振動刺激装置上での姿勢は、前方の安全バーを把持した状態での、軽度膝関節屈曲位での直立立位姿勢とし、刺激の強度は50Hz、刺激時間は60秒とした。統計処理に関しては、WBV刺激前後の10m歩行時間、歩行速度、歩幅、歩行率について、各群間比較を対応のあるt検定を用いて行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】被験者に実験の趣旨、目的を十分に説明し、同意を得たうえで実験を行った。【結果】PD群では有意に振動刺激後、10m歩行時間(P<0.01)、歩行速度(P<0.01)、歩幅(P<0.01)、歩行率(P<0.01)は有意に改善した。CVA群では、振動刺激前後では、10m歩行時間(P<0.01)、歩行速度(P<0.01)、歩行率(P<0.01)において有意に改善した。歩幅においては改善しなかった(P>0.05)。コントロール群では、いずれの項目においても改善しなかった(P>0.05)。【考察】 先行研究において、Brogardhらは(2012)CVAではWBVの効果がみられないと報告している。その他の先行研究でも6~20Hz領域で行われ、効果が無いという報告が見られる。これに対して、局所的な振動刺激の効果において、太田ら(2008)は、持続的緊張下の筋が30Hzで緊張が低下したと報告している。また岩月ら(1991)は、運動ニューロンの抑制には40Hz付近の振動刺激が効果的であるとしている。したがって、CVAにおけるWBVトレーニングを行う際、低い周波数では効果が少ないことが考えられる。 今回、PD群、CVA群において高周波の振動刺激が、歩行改善に効果を示した。現在、WBVトレーニング機器としてPDに対して、Power Plateのような高周波を用いたものはない。その要因として、Hansら(2007)の先行研究によると低周波数(約5~12Hz)では、クールダウンやリラクセーション効果があるという報告が関係していると考える。しかし、今回先行研究と同様に、PDにおいても50Hzの周波数は歩行の改善に効果を示した。したがって、PDやCVAといった中枢神経系疾患の歩行に対するWBVトレーニングには高周波が有効であることが示唆される。【理学療法学研究としての意義】 今回先行研究と異なる高周波数でのWBVトレーニングが、PD、CVAに有効的であることが示唆された。このことから、Power PlateはPD、CVAの治療に効果があると考えられる。

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