理学療法士養成校の学生における疼痛の実態

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抄録

【目的】職場での腰痛は,保健衛生産業では最近の10年間で腰痛発生件数が2.7倍にも増加している。就業前に腰痛がみられる場合も多く,先行研究では理学療法士養成校の学生210名において,68%に腰痛経験があり,6か月以上痛みが継続した者が41%いたとの報告がある。また筆者も第23回埼玉県理学療法学会にて,理学療法士養成校における学生の腰痛の実態と運動習慣の関連について報告し,29%が腰痛を有しており,運動習慣との相関もみられた。このように腰痛についての先行研究は散見されたが,理学療法士養成校における継続した研究は見当たらない。そこで理学療法士養成校における学生の腰痛の実態と運動習慣について,前回報告した学生の再調査を行うことで1年後の変化を捉えることと,疼痛の実態調査を目的とした。【方法】理学療法士養成校(専門学校)の2年生39名(19.9±0.4歳,男性31名,女性8名)を対象とした。調査内容は,アンケートにて疼痛の有無,疼痛の部位,疼痛の誘因,疼痛のNRS,疼痛の出現時期,学業への影響の有無,運動習慣の有無,運動の頻度とした。【結果】何らかの疼痛を有していたのは23名(59.0%)であり,疼痛部位は腰部17名(43.6%),肩10名(25.6%),頸部6名(15.4%)が多かった。疼痛の誘因は,長時間の座位が多く,腰部では10名(58.8%),肩では5名(50.0%),頸部では100%であった。疼痛のNRSは平均4.6±1.6であった。疼痛の出現時期は腰部では中学が7名,高校5名,専門学校5名,肩は高校が6名,専門学校3名,中学1名,頸部は専門学校3名,高校3名であった。学業への影響は,腰痛で7名,肩痛で3名,頸部痛で4名が有りと答えた。運動習慣のある者は13名(33.3%),無い者は26名(78.8%),運動の頻度は月1回が8名と多かった。腰痛の有無と運動習慣の有無,疼痛の有無と運動習慣の有無には相関はみられなかった。【結論】腰痛に関しての筆者の先行研究との比較では,1年生にて45名中13名(28.9%)で有していたが,約1年後の2年生の時点では,39名中17名(43.6%)と増加していた。また,運動習慣がある者は42.2%から33.3%に減少していた。専門学校で腰痛が出現した者が5名おり,長時間の座位で誘発される者が多いことから,長時間の座位が何らかの影響を与えていると考えられた。1年間で腰痛を有する者が増えており,運動習慣は減り,長時間の座位が筋・筋膜性腰痛を生じさせていることが予想される中,学業への影響も出ていることから,就業前や授業中,休み時間に何らかの対策を行う必要があると考えられた。理学療法士は予防理学療法を実施していく側であるため,学生の段階から腰痛をはじめとする疼痛に対する自分自身での予防や,腰痛改善のための方法について習得していく必要があると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680552578816
  • NII論文ID
    130005417040
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0097
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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