超音波画像による女性の横隔膜筋厚の変化と呼吸機能との関連

DOI
  • 和田 朋美
    鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 曽田 武史
    鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 松田 理咲
    鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 宮木 真里
    鳥取大学医学部附属病院検査部
  • 萩野 浩
    鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部

抄録

【はじめに、目的】横隔膜は呼吸機能に影響を及ぼす、主要な吸気筋である。近年、心不全患者における吸気筋力の低下が予後を悪化させることを示唆されており、その一つに横隔膜におけるtype1 線維の萎縮が関与している可能性を示唆されている。先行研究では、心不全患者において、超音波画像により測定した吸気筋トレーニング前後の筋厚の変化が吸気筋力の変化と相関することが報告されており、横隔膜の機能を把握することは心不全患者の呼吸能力や運動耐容能、予後を把握する上で有用な指標になると考える。これまでの横隔膜筋厚に関する基礎研究では、横隔膜筋厚は肺活量や吸気筋力との関連が示唆されているが、これらの研究は男性を対象とした検討であり、実際に女性における横隔膜筋厚と呼吸機能との関係を検討した報告は見当たらない。そこで、本研究では、女性における横隔膜筋厚と呼吸機能との関係について検討することを目的とした。【方法】対象は若年女性27 名(年齢 22.2 ± 3.1 歳、身長 157.8 ± 5.4 cm、体重 50.0 ± 6.4 kg、BMI 20.1 ± 2.1 kg/m 2 )とし、呼吸器疾患および循環器疾患の既往がある者、喫煙者は除外した。測定項目は、横隔膜筋厚、呼吸機能、腹部隆起力、第10肋骨部拡張差および腹部拡張差とした。横隔膜筋厚は、超音波診断装置Aprio MIX(TOSIBA)を用いて右中腋窩腺上の第10 肋間にプローブを垂直にあて、zone of appositionの筋厚を測定した。測定は端坐位で最大呼気位(RV)と最大吸気位(TLC)の横隔膜筋厚をそれぞれ3 回行い、その平均値を求めた。さらにTLCの横隔膜筋厚からRVの横隔膜筋厚を引いた変化量を算出した。呼吸機能の指標として、努力性肺活量(FVC)、一秒量(FEV1.0)、一秒率(FEV1.0%)、および最大呼気流量(PEF)、最大吸気口腔内圧(PImax)、最大呼気口腔内圧(PEmax)をスパイロシフトSP370-MRP(フクダ電子)を用いて測定した。腹部隆起力は、股関節および膝関節90 度屈曲位で、RVから最大吸気努力した際の上腹部の隆起力を徒手筋力計ミュータスF-1(アニマ)を用いて測定した。第10 肋骨部拡張差および腹部拡張差は、テープメジャーを用いて最大吸気および最大呼気時の周径を測定し算出した。横隔膜筋厚と呼吸機能の指標との相関はPearsonの積率相関係数を用いて解析し、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は鳥取大学医学部倫理審査委員会の承認を得てから開始し、被験者には事前に研究内容の説明および同意確認を書面にて行った。【結果】RVとTLCの横隔膜筋厚は、腹部隆起力と有意な正相関を認めた(それぞれr=0.51,p<0.01;r=0.43,p<0.05).横隔膜筋厚とその他の呼吸機能の指標、第10 肋骨拡張差および腹部拡張差との相関を認めなかった。【考察】横隔膜筋厚は横隔膜筋力の指標とされる腹部隆起力と正相関を認めた。先行研究では機能的残気量とRVの横隔膜筋厚に有意差がなかったことが示されており、このことから、TLCの筋厚は横隔膜活動量を、RVの横隔膜筋厚は横隔膜筋量を反映している可能性がある。また本研究ではPImaxおよびFVCとの相関を認めなかった。FVCやPImaxは胸鎖乳突筋などの横隔膜以外の吸気筋の作用、胸郭や肺の弾性などの他の因子も影響している。また一般的に女性は胸式呼吸が多いことが言われており、呼吸様式の違いが影響している可能性もある。今後は性別および年代による違いについて検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】横隔膜機能は肺機能や呼吸器疾患の重症度などに影響しており、超音波画像を用いた横隔膜機能評価が、呼吸筋トレーニングの効果判定や予後評価としての有用性が期待できる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48102071-48102071, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680552691328
  • NII論文ID
    130004586142
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48102071.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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