アンケートからわかる、虚血性心疾患症例の生活習慣

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抄録

【はじめに、目的】当院では、日本循環器学会や日本心臓リハビリテーション学会など,9つの学会の合同研究班による「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」(以下ガイドライン)をもとに、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)症例に対して心臓リハビリテーション(以下心リハ)を行っており、入院中の運動療法と並行して再発予防のための生活習慣指導の取り組みを実践している。その取り組みとして、ガイドラインにて動脈硬化危険因子の是正において重要となる項目(高血圧、高脂血症、体重管理、禁煙)などに関してアンケートを実施している。今回、このアンケート結果をもとに、虚血性心疾患症例における生活習慣の自己管理に関連する要因を検討し、症例に対する教育・支援方法について知見を得ることを目的とした。【方法】対象は平成23年3月1日から平成24年7月31日までの間に当院循環器内科病棟にて入院加療を要し、心リハを実施した虚血性心疾患症例56名(うち男性46名、平均年齢65.5歳±11.5)とした。これらの症例に対して『生活習慣に関するアンケート』を実施した。アンケート項目としては上記ガイドラインを参考とし、塩分・コレステロール・体重管理・水分管理・血圧管理・服薬管理・禁煙・ストレス・リスク管理・運動実施頻度・強度など計19項目とし、対象にはそれぞれの項目について2~3段階の評価をして頂いた。また、データ分析にあたっては調査協力が得られた者のうち、アンケートの各設問に無記入項目がないものを有効回答とした(有効回答数53例)。【倫理的配慮、説明と同意】対象となる症例に対して、文章にて本研究の内容を説明し、書面にて同意を得た。また、本研究はヘルシンキ宣言に基づく当院倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】減塩が大切であると83%の症例が答えているも、34%は塩分管理を行っていなかった。コレステロールの非管理群は21%であった。心機能が低下すると体重増加することは79%の症例が知らず、水分の過剰摂取が良くないことについても47%が知らないという結果となった。ただし53症例中、水分管理を必要とされている36症例のうち92%は水分管理を行っていた。28%の症例が入院前に喫煙していた。ストレスを感じている症例は全体の47%であった。リスク管理として、64%の症例が胸部症状の出現時の対応策を知らないと答えた。入院前生活において72%の症例が運動を行っており、もっとも多かった運動頻度は「週7日」(28.9%)、ガイドラインにて推奨されている運動頻度(週3回以上)で運動を行っている症例が76.3%であった。【考察】各症例へのアンケートから、ガイドラインにて推奨されている運動習慣のある者でも虚血性心疾患を発症しており、運動療法のみでは疾病を予防しきれないことが伺える。そのため発症リスクとなる塩分・コレステロールなどの栄養管理指導も重要と考える。当院では、管理栄養士による個別の栄養指導も実施しており、当科で行っているアンケート結果をもとに栄養科との共同指導を行っていくことを検討していく。また、「心臓の調子が悪いと体重がふえること」や、「水分を摂りすぎることが良くない」ことなど、心不全症状に対する自己管理を促すための指導も必要と考える。禁煙に関しても、禁煙の重要性を理解しながらも喫煙してしまう症例も存在することから、禁煙外来の紹介や行動変容へのアドバイスなども重要と考える。健康日本21では「虚血性心疾患発症予防として、ストレスを感じる人の減少」をめざしており、目標値を49%以下と設定されている。本研究では目標値を達成されているが、再発予防としてのストレス減少方法の指導も生活習慣指導の一環として組み入れていきたい。リスク管理面では、胸部症状出現時の対応を把握していない症例が60%超えることから、可能な限りの早期治療が行われるように対応の指導も行っていく必要性が示された。【理学療法学研究としての意義】虚血性心疾患症例が自ら生活習慣を是正し再発予防につなげるために、より効果的な指導方法・内容の検討が行える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48102025-48102025, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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