足関節背屈角度が着地時の下肢各関節に与える影響
説明
【はじめに】足関節背屈制限は下肢ダイナミックアライメントに影響を及ぼし、円滑なスポーツ動作の阻害や二次的外傷の発生機転になる。足関節には荷重時の衝撃吸収能、運動伝達や運動制御、身体機能制御など重要な関節機能がある。そのため、足関節の機能低下が他関節に与える影響は極めて大きい。足関節捻挫後、選手は足関節可動域制限を有したままスポーツ復帰する事が多い。根地島らによると、片脚着地は両脚着地より膝関節屈曲角度が減少し外反角度が増加するため、前十字靭帯損傷のリスクが高まると報告した。Bodenらは、一般的な損傷パターンに片脚着地動作を上げている。着地動作の先行研究は、足関節背屈角度に着目したものは少ない。本研究は、足関節背屈角度と着地時の下肢各関節に与える影響を検証することで、障害予防の一助とすることを目的とした。【方法】対象は両足関節に整形外科的疾患をもたない、健常男性11名22肢(年齢24.4±1.9歳、身長1.74±0.05m、体重65.2±7.4kg)とした。足関節背屈角度は27.4±7.8°であり、35.2°以上をA群(2肢)、35.6°未満19.6°以上をB群(17肢)、19.6°未満をC群(3肢)と分類した。計測機器は、VICON MXシステム(VICON、カメラ7台、200Hz)、床反力計OR6-7(AMTI、2枚、1,000Hz)、使用ソフトはVICON NEXUS1.6.1を用いた。マーカは、Helen Hayes Markersetの35ヵ所とした。測定方法は、足関節背屈角度を、日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会により決定された関節可動域表示ならびに測定法に準じて測定した。運動課題として対象は30cm台に乗り、静止立位の姿勢から床反力計に向けて自由落下させた。片脚での着地後、同側での片脚跳びを行い着地するまでの計測を行った。着地後の片脚跳びは素早く・高く跳ぶように教示した。対象は測定前に十分に練習を行った。運動課題は、三次元動作解析装置および床反力計を用いて計測した。解析項目は、下肢各関節角度、関節モーメントを算出し、着地点、着地最下点、離地点の値を抽出した。各期の規定は、着地期:30cm台からの垂直落下し床反力計に足部が接地した点、着地最下期:身体重心の最下点、離地期:床反力計から足部が離れる点とした。各データを二元配置分散分析で比較検討し、有意水準を5%未満とした。【説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に準じ事前に対象者に研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得たうえで研究を開始した。【結果】着地期において、足関節角度(底屈・背屈)ではA群-28.7±4.7°、C群-18.4±7.3°となり、A-C群間において有意差を認めた。膝関節角度(外反・内反)では、A群7.8±0.2°、C群15.0±2.0°となり、A-C群間において有意差を認めた。膝関節モーメント(外反・内反)では、A群8.8±27.6Nmm、C群-6.9±6.7NmmとなりA-C群間に有意差を認めた。股関節モーメント(外転・内転)では、A群-6.7±17.2Nmm、C群-13.7±10.6NmmとA-C群間で有意差を認めた。着地直後では足関節底屈角度が膝関節・股関節において外反・内反ならびに外転・内転方向に関与する。着地最下点において、足関節角度(底屈・背屈)では、A群22.2±1.9°、C群27.8±2.0°となり有意差は認められなかった。股関節角度(屈曲・伸展)、膝関節角度(屈曲・伸展)ではともにA-C群間での有意差が認められた。股関節・膝関節モーメントでは屈曲・伸展においてA-C群間に有意差を認めた。足関節角度での有意差は認められないが膝関節・股関節の矢状面での動きに有意差を認める結果となった。離地期においては、足関節角度(底屈・背屈)、股関節モーメント(屈曲・伸展)において有意差を認めた。【考察】本研究では、足関節背屈角度が着地動作時の下肢各関節に与える影響を検証した。着地期では足関節角度においてA-C群間では背屈角度だけでなく底屈角度においても有意差を認めた。また、足関節の矢状面での角度が股関節・膝関節の前額面での角度ならびに関節に作用する力に影響を与えると考える。着地最下点では足関節角度と股関節・膝関節に関係は認められなかった。足関節背屈角度だけでなく足関節底屈角度が、障害の要因になると示唆された。そのため、足関節背屈角度だけでなく足関節底屈角度にも着目する事が重要と考えた。【理学療法学研究としての意義】今回の研究により、足関節角度が下肢における二次的障害を引き起こす要因となると示唆された。足関節角度は臨床やスポーツの現場でも容易に計測できる。足関節可動域制限を防ぐことが下肢関節の障害予防に繋がる事となる。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2012 (0), 48102176-48102176, 2013
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680553108096
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- NII論文ID
- 130004586212
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可