当院の急性期脳卒中患者におけるNIHSSスコアと転帰先の関連性
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【はじめに、目的】 National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS)は、急性期脳卒中患者に対する重症度総合評価スケールとして使用されており、脳卒中治療ガイドライン2009でも使用が推奨されている(グレードB)。脳卒中発症直後より用いることができる数少ないスケールの一つであり、患者の状態に関係なく数値化できるという特徴がある。近年では国内でのNIHSSの使用頻度も増加傾向にあり、NIHSSスコアと転帰先との関係に対する先行研究も多く見られている。当院も急性期脳卒中患者に対してNIHSSを使用しているが、NIHSSスコアと転帰先との関連はその病院の特徴や特性を加味する必要があると強く感じる。そこで今回は脳卒中急性期患者のNIHSSスコアと転帰先との関連から、当院の特性を他施設や全国平均との比較より明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は平成23年11月から平成24年10月までに当院に入院し、入院時にNIHSSを測定した急性期脳卒中患者のうち、除外対象を除いた371例とした。対象者は今回が初発であること、転帰元が自宅であることとし、除外対象は死亡例、入院中に状態が悪化・再発した例、くも膜下出血例、リハビリテーションの実施に大きな影響を与える重篤な合併症を有する例、NIHSSを含む各情報がカルテにて調査不可能な例とした。調査項目は疾患名、転帰先(自宅、回復期、その他へ転床)、転帰までの日数、入院時NIHSSスコアとし、後方視的にカルテを用いて情報収集を行った。転帰先(自宅、回復期、その他へ転床)の違いでのNIHSSスコアのカットオフ値の算出にはROC曲線を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての患者に対し、入院時に評価の内容と結果の取り扱いについて同意を得た。【結果】 転帰までの平均日数は自宅群14.2±11.8、回復期群21.1±12.8、その他群32.8±23.7 全体で18.0±14.7日となった。またNIHSSスコア平均は自宅群3.00±4.12、回復期群8.60±6.63その他群22.41±10.53点となった。自宅群、回復期群による入院時NIHSSスコアでのROC曲線の曲線下面積は0.61、転帰先の違いでの妥当なカットオフ値はNIHSS8点であった。また回復期群とその他群でのROC曲線の曲線下面積は0.75、転帰先の違いでの妥当なカットオフ値はNIHSS16点であった。【考察】 先行研究でも脳卒中患者に対しNIHSSを用いた早期からの転帰予測が可能であることや、カットオフ値の設定しているものは複数見られている。特に急性期から自宅へ退院する群のカットオフ値として6点と設定している研究が多い。今回の当院の結果は急性期から自宅退院群のNIHSSスコアカットオフ値は8点となった。その要因として、当院の施設特性が挙げられる。当院はSCU12床を有し、超急性期での重点的なケアはもちろん早期からの集中的な理学療法の介入が可能である。理学療法開始までの日数も全国平均と比べると少なく、早期からの集中的な介入が身体機能向上につながっているものと考えられる。また、転帰までの平均日数も全国平均より少ないが、早期介入効果に加え、当院では急性期病棟の他回復期病棟、療養病棟も併設している為、状態が変わりやすい急性期脳卒中患者を適切な時期に転帰先を選択できることが考えられる。 今回のカットオフ値からの逸脱例を調査すると、8点以上で急性期から自宅へ退院した例では急性期内での身体機能の向上や自宅での十分なマンパワーなどが認められた。また、8点以下で回復期への転帰例では復職や家事動作等までの必要性、高次脳機能障害、運動失調などが認められた。特にNIHSSのスケールの特性上、高次脳機能障害や運動失調は把握しにくく、実際の症状に比してスコアは低く出やすい印象を受ける。これらの項目は、NIHSSスケールが急性期脳卒中患者の状態を数値化する上で比較的反映しにくい部分を示していることが示唆される。 今回は入院時のNIHSSスコアでの検討であったが、上記に述べたように急性期脳卒中患者は状態が変化しやすいため、入院初期のNIHSSスコアだけでなく、急性期内の経時的なスコアと転帰の関係性や患者の身体機能との関係の検討が今後必要になってくるものと思われる。【理学療法学研究としての意義】 最近の急性期病院では早期介入、早期退院の流れや急性期、回復期、維持期の専門的な病院といった機能分化も進んでいる。NIHSSは患者の状態に問わず数値化が可能なスケールであり、超急性期の時点から転帰先の予測をすることで、患者の長期的な予後を見据えることができる。その結果、適切な時期により質の高い理学療法を提供できるのではと考える。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48102094-48102094, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680553192192
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- NII Article ID
- 130004586158
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed