人工膝関節置換術症例における膝蓋下脂肪体に対する治療効果の検証

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  • ―膝関節可動域および筋力の変化と膝蓋下脂肪体組織弾性との関係性―

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【はじめに,目的】人工膝関節置換術(TKA)症例の関節可動域(ROM)制限や筋力低下には様々な原因があげられ,膝関節周囲の脂肪体硬化も原因の一つである。膝蓋骨直下に存在する膝蓋下脂肪体(IFP)は,膝関節の疼痛やROM制限に関与するとされている。本学術集会第50回大会において,我々は,健常者と比べてTKA群のIFP柔軟性が有意に低下し,膝ROMと関連することを報告した。臨床において,IFPの柔軟性改善によって膝ROMと筋出力が向上することを経験する。そこで本研究の目的は,超音波エコー(US)を用いて,TKA症例のIFP治療前後での柔軟性を評価し,膝ROMおよび筋力との関係性を比較検討することとした。【方法】対象は,TKA症例14例21膝(男性4人,女性10人,平均年齢71.8±8.6歳)とし,IFP治療前後におけるIFP組織弾性,膝ROMと筋力を測定した。IFP組織弾性は,US(ACUSON S3000,SIEMENS社製)のShear Wave Elastography(VTIQ)にて,膝伸展位(E)と120°屈曲位(F120)にて治療前後で各3回測定し,その平均値を算出した。膝伸展筋力はmicroFET2(日本メディックス社製)を用いて,膝関節90°屈曲位で5秒間の最大等尺性収縮を2回行い,平均値の体重比(kgf/kg)を算出した。IFPの治療は,IFP柔軟性改善操作を5分間実施した。算出したIFP治療前後の組織弾性を比較し,ROMおよび筋力と比較した。統計処理は対応のあるt検定,Mann-Whitney's U testを用い,有意水準を5%未満とした。【結果】IFP組織弾性(治療前:治療後)は,Eが3.88m/s:3.11m/s(p<0.01),F120が5.71m/s:4.78m/s(p<0.05)と,IFP組織弾性が治療後に有意に低下した。膝屈曲ROMは,106.9°:113.3°,膝伸展ROMが8.48°:5.52°,膝伸展筋力が18.0 kgf/kg:22.4 kgf/kgであり,治療後に有意に改善した(p<0.01)。【結論】IFPは,柔軟性豊富な組織であり,膝関節運動に伴う機能的変形がUSやMRIで確認できる。今回の結果より,TKA症例において治療後にIFP組織弾性が有意に低下し,膝屈伸ROMも有意に改善した。これは,IFPの柔軟性改善が膝ROMを改善することを証明し,我々の治療法を支持する結果となった。また,膝伸展筋力もIFP治療後に有意に改善した。大腿四頭筋の収縮張力は,膝蓋靱帯を通じて脛骨へ伝わり膝伸展がなされる。膝蓋靱帯直下に存在するIFPの柔軟性低下は,大腿四頭筋の収縮張力を減弱させ,膝伸展筋力を低下させるものと推測される。従って,IFPの柔軟性改善は,膝ROMだけでなく膝伸展筋力も改善させることから,IFPへの治療が有効であると考えられる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680553283712
  • NII Article ID
    130005417229
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0255
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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