一側下肢の運動スキル向上は対側下肢に転移するのか

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  • 表面筋電図を用いた検証

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>cross-education研究では,片側の筋力強化により,非筋力トレーニング側の筋力増強が認められるなど,筋力増強に関わる知見が多い。しかし,運動学習にどのような影響を及ぼしているのかは不明である。そこで,本研究は片側のスキル獲得が対側下肢の運動制御に影響するのか,運動学習初期から中間層におけるcross-educationの効果を表面筋電図(EMG)を用いて検証することを目的とする。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は下肢に疾患を有さない右利きの健常成人16名(男性6名,女性10名,平均年齢21.5±1.03歳)とした。課題は,半径5.5cmと7.5cmの二重の円内に,母趾裏に固定したチョークで円を描写させることとした。開始肢位は股関節,膝関節60°屈曲位での座位とし,円の中心が足関節底背屈中間位での母趾の高さとなるように配置した。なお,右下肢は時計回り,左下肢は反時計回りに描写することとした。</p><p></p><p>測定は,右下肢で二重円内に円を連続3回描写できるまで練習し,その前後で左右下肢のEMGおよび動画を記録した。無線式筋電図計測装置テレマイオDTS(NORAXON社製)を使用し,電極は左右それぞれ前脛骨筋,腓腹筋外側頭,長母趾伸筋,大腿直筋,内側ハムストリングスの10筋に貼付した。解析は,動画より課題の円を上縁から90°毎に4分割(時計回りに右下肢は0~90°:phaseA,90~180°:phaseB,180~270°:phaseC,270~360°:phaseD,左下肢は0~90°:phaseD,90~180°:phaseC,180~270°:phaseB,270~360°:phaseA)し,それぞれの区間毎に平均振幅を算出した。統計学的分析はそれぞれの区間に対し2要因(2条件:練習前,練習後×2測定肢:右,左)の繰り返しのある二元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>phaseAでは長母趾伸筋,大腿直筋,前脛骨筋の練習前後で主効果が認められた(p<0.05)。phaseBでは大腿直筋の練習前後で主効果が認められた(p<0.05)。phaseDでは長母趾伸筋の練習前後で主効果が認められた(p<0.05)。また,腓腹筋外側頭,内側ハムストリングスとphaseCを含むその他の要因において主効果,交互作用は認められなかった。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>運動学習により,右下肢の運動スキル向上が左下肢に転移するのか,学習前後のEMGを区間毎に比較した。結果より,それぞれの区間において対象筋は異なるものの,いずれも両下肢ともに練習の前後で筋活動の増加が認められた。本研究における反復練習課程は,運動学習初期から中間層に対応すると考えられる。すなわち本研究結果により,意識化を伴う運動知識や運動技能の獲得期において,一側下肢の運動スキルが対側下肢へ転移されることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680553976576
  • NII論文ID
    130005608592
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0645
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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