糖尿病患者のもつ疼痛の実態およびその関連因子について

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抄録

<p>【はじめに,目的】糖尿病(DM)に対する運動療法は確立された治療手段であり,運動の継続や身体活動量の向上はDMコントロールにおいて重要である。しかし,DM患者における運動療法を実施していない理由の21.9%が「運動すると痛くなるところがある」であり(荒川ら,2015),臨床においても大きな問題である。DMに由来する疼痛には有痛性糖尿病性神経障害(PDN)があるが,臨床で遭遇する痛みは神経障害由来のものだけではない。今回,DMにおけるPDNならびにその他の疼痛の保有率と,疼痛に関わる因子を明らかにすることにした。</p><p></p><p>【方法】対象は当院教育入院および外来通院中のDM56例である(男性28例,女性28例,平均年齢67.3±12.1歳)。調査項目は,①患者背景因子(年齢,性別,BMI,罹患年数,HbA1c,随時血糖値,糖尿病神経障害(DN)の有無(Michigan Neuropathy Screening Instrumentにて判定),運動習慣の有無(運動行動変容ステージ尺度を使用して判定),鎮痛薬服用の有無),②疼痛評価,③身体活動量(国際標準化身体活動質問票を用いて一日の平均身体活動量をkcalに換算),④運動機能(握力,10m最大歩行時間)とした。問診にて疼痛の有無と機転を聴取し,疼痛部位に関してはPain Drawingを使用して評価した。疼痛部位が複数箇所である場合,疼痛強度が最も高い部位を採用した。また,本研究においてはDN特有の痛みを有するものをPDN有りと判定した。統計解析として疼痛の有無の2群間と各要因についての比較にはMann-Whitney U検定およびχ2検定を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】本研究において疼痛を認めるものは24例(43%)であった。疼痛の要因は,PDN(6例),整形疾患(6例),原因不明(12例)であった。疼痛部位は足趾(6例),腰部(5例),肩(4例),その他(9例)であった。また,DNを認めた23例のうち,PDNは6例(26%)であった。疼痛の有無で身体活動量や運動機能に有意な差を認めなかったものの,疼痛有群は有意に年齢が低く(有:62.8±13.8歳 vs 無:70.6±9.1歳,P<0.05),DN保有者が多かった(有:61% vs 無:28%,P<0.05)。</p><p></p><p>【結論】DM患者における疼痛保有者は4割程度認め,その要因としてはDNが関連していた。これはDNの主症状である感覚系自覚症状が疼痛に影響していたことが考えられる。しかし,細かく疼痛についても聴取してみるとDNによる疼痛以外にも腰や肩など全身にわたる疼痛を訴える患者が多かった。そのためDMの運動指導において疼痛を考慮した介入が重要である。</p>

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  • CRID
    1390282680554059264
  • NII論文ID
    130005609558
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1479
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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