COPD患者における健康関連QOLに影響する身体機能の検出
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- 宮副 孝茂
- 医療法人 敬天堂 古賀病院
説明
【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)は気流閉塞が慢性的にみられる慢性炎症性であり,呼吸困難が生じ,患者の生活の質(以下,QOL)を低下させる。COPDにおける疾患特異的な健康関連QOL評価尺度には,St.George's Respiratory Questionnaire(以下SGRQ)が利用されており,質問票は50項目,Symptom(症状),Activity(活動),Impact(影響)の3つのコンポーネントに分けて,そのスコアが計算される。症状は咳,痰,喘鳴などの呼吸器関連症状,活動は呼吸困難感や身体機能を表し,影響は精神心理的社会要因に関連した領域と考えられている。スコアが低いほど良好な健康関連QOLと評価される。呼吸リハビリテーションにおける介入効果として,6分間歩行距離といった身体機能のみならず,健康関連QOLを向上させる意義は大きい。先行研究において,健康関連QOLと呼吸困難,精神機能との関係は報告されているが,健康関連QOLと身体機能との関係を示す報告は少ない。そこで本研究の目的は,COPD患者の身体機能が健康関連QOLに影響を与える要因となりうるか検討することである。【方法】対象は,呼吸リハビリテーションを実施している病状安定期にある男性COPD患者162名。対象特性は平均年齢は73.2±9.3歳,BMIは21.7±4.1,%FVCは80.0±21.5%,%FEV1.0は55.6±24.2%,FEV1.0%は51.8±17.3%であった。GOLD病期分類は軽症期が28名,中等症期が55名,重症期が60名,最重症期が19名であった。本研究は横断研究とし,健康関連QOL評価であるSGRQ,BMI,mMRC息切れ分類(mMRC),呼吸機能(%FVC,%FEV1.0,FEV1.0%),筋力評価として体重比膝伸展筋力,体重比握力評価(HHD),全身持久力評価として漸増シャトルウォーキングテスト(以下,ISWT),バランス評価としてTimed up and go test(以下,TUG),長崎大学呼吸器疾患ADL評価(以下,NRADL)等を測定した。統計解析は,SGRQと各測定項目の相関をPearsonの積率相関係数を用いて分析した。SGRQに影響を及ぼす測定項目の検索は,従属変数をSGRQ,独立変数を有意な相関が認められた測定項目とし,ステップワイズ法による重回帰分析を用いて分析した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし,解析ソフトにはSPSS ver.21を用いた。【結果】SGRQの合計点と有意な相関を認めたのは,BMI,mMRC,%FVC,%FEV1.0,FEV1.0%,%膝伸展筋力,ISWT,TUG,NRQDLであった。そして,SGRQの合計点に影響を与える因子はISWT(β=0.32),mMRC(β=0.27),NRADL(β=0.21)であった(R2=0.453,p<0.01)。【結論】COPD患者の健康関連QOLには,息切れや精神面だけでなく,全身持久力やADLが影響することが明らかとなった。加えて,COPD患者の健康関連QOLを向上させるためには,呼吸機能,筋力,バランス能力等の機能障害のみの改善では成し遂げられない可能性が示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 0821-, 2016
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680554248448
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- NII論文ID
- 130005417862
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可