姿勢変化によるサイドステップ速度の変化

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抄録

<p>[はじめに,目的]</p><p></p><p>バスケットボールなど多くの球技では,主に一対一の場面で相手の動きに素早く対応するために「構え」姿勢をとる。指導者の多くは腰を落とせと指導するが,どのような姿勢がディフェンス動作において最も動きやすいのかについては不明である。股関節,膝関節の屈曲角度を変え外的刺激後にサイドステップを行い,リアクションタイムやその際の筋活動の変化を見ている研究は多いが,自分のタイミングでサイドステップを行ったときの研究は少ない。そこで,今回は股関節,膝関節の屈曲角度を変化させ,自分のタイミングでサイドステップ動作を行った時のステップ速度や筋活動の変化などを検討し,関節角度の変化がサイドステップ速度に及ぼす影響を解明することを目的とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>[方法]</p><p></p><p>対象は,健常男子学生11名。ステップ動作は,開始位置と目標点(40cm)を設定角度で右方向へ一歩行った。計測は設定条件下で計10回(各施行5回ずつ)行った。設定角度は,股関節膝関節を30°(30°条件),70°(70°条件)とした。角度は検者が任意で選択した。開始の合図後,被験者は5秒数えた後にサイドステップを最大努力で行った。三次元動作解析装置,床反力計,表面筋電図を用いて,関節角度,床反力,移動足の大殿筋(GMa),中殿筋(GMe),大腿直筋(RF),内側ハムストリングス(MHam),前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(G)の筋活動を求めた。その後に離地から前後50msecで抽出し,その筋電図を15Hzで移動平均を行い,絶対値化を行った後に整流化しRMSを求めた。また,サイドステップの距離,時間を求め,そこからサイドステップ速度を算出した。統計学的検討は,統計ソフトSPSSを使用し,正規性を見たのちにWilcoxon符号順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>[結果]</p><p></p><p>各条件でのステップ速度(mm/msec)に有意差は得られなかった。30°条件と70°条件での筋活動量の差は,70°条件でRF,GMa,GMeが有意に増加していた(P<0.05)。その後,有意に増加していた筋で離地前後の筋活動量の差を比較すると,GMa,GMeで離地後に筋活動量が有意に増加していた(P<0.05)。各条件での離地の前後50msecにおける関節の動きだしは,30°条件では股関節が離地後に最大屈曲となっていたが,70°条件では股関節が離地前に最大屈曲となっていた。</p><p></p><p></p><p></p><p>[結論]</p><p></p><p>今回の研究では,股関節や膝関節の屈曲角度によるサイドステップ速度の変化はみられなかったが,屈曲角度を深くすることで,GMeだけでなく,GMaも股関節外転作用に加わったことが示された。また,関節の動き出しに変化が起こることも示唆された。これにより,筋活動も変化する。これらの変化による動作全体の協調性をみることで,なぜその姿勢がよいのかについての重要なデータになりうると考えた。素早いサイドステップの最適な姿勢について示唆することはできなかったが,姿勢による筋活動量や関節の動き出しの変化についての課題を提示することができた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554687104
  • NII論文ID
    130005608545
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0509
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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