食道癌術後の咳嗽力に影響する要因の検討

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抄録

<p>【目的】食道癌手術は,外科手術の中でも侵襲が大きく,また反回神経麻痺も起こりやすく,咳嗽力が低下し呼吸器合併症を生じやすいとされている。咳嗽は,そのメカニクスから肺機能,呼吸筋力,声帯機能が影響する事は明らかであるが,術後のどの要因が咳嗽力低下に強く関係しているか明らかになっていない。また,術後は病態が刻々と変化する事から,咳嗽力に関与する要因も変化すると考えられるが,これも明らかにされていない。そこで今回,術後の咳嗽力に関与する因子について,経時的に検討したので報告する。</p><p></p><p>【方法】対象は,食道癌患者の診断にて外科手術施行した22名(男性17名,女性5名,年齢:68.7±6.8歳)とした。術前と術後1,2,3,4,7,14病日に肺活量(VC),呼気筋力(PEmax),咳嗽時呼気流量(CPF)を測定し,咳嗽時痛はvisual analogue scale(VAS)を用いて評価した。また,CPF測定時の流量波形から呼気上昇時間(EPRT)を算出し,声帯機能の指標とした。解析方法:咳嗽時痛以外の測定値は全て術前値を基準とした100分率で表した。CPFと各測定項目との相関分析を全期間および病日毎に行った。有意水準は5%とした。</p><p></p><p>【結果】CPFは,全期間ではPEmax(r=0.629),VC(r=0.323)と正の,咳嗽時痛(r=-0.686),EPRT(r=-0.499)と負の有意な相関を認めた(p<0.01)。特に咳嗽時痛とPEmaxとは強い相関を認めた。またCPFは第1-3病日はEPRTと,第7病日は咳嗽時痛と有意な負の相関を認めた(p<0.05)。病日毎の解析では,CPFとVC,PEmaxとは相関を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】CPFは咳嗽のメカニクスからVC,PEmax,声帯機能は影響する事は間違いなく,実際に多数報告されている。今回の全期間での解析でもこれら全てと関連を認め,食道癌術後では特に咳嗽時痛とPEmaxの影響が大きいと考えられた。しかし病日毎の解析では,術後早期に関連していたのはEPRTのみであった。食道癌では反回神経麻痺を生じやすい事や,術後早期は挿管による一時的な声帯の麻痺も生じやすいため,これらの影響が考えられた。また病日毎の解析において,いずれの項目もCPFと関連が低かったのは,個人によって各要因の回復度合いが異なることを示唆しているものと推察された。</p>

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  • CRID
    1390282680554813312
  • NII論文ID
    130005608844
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0787
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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