筋骨格モデルによる健常成人歩行の筋活性度推定とその妥当性の検討

DOI
  • 喜多 俊介
    埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学専修
  • 小栢 進也
    大阪府立大学地域保健学域総合リハビリテーション学類理学療法学専攻
  • 藤野 努
    埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学専修
  • 久保田 圭祐
    埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科リハビリテーション学専修
  • 国分 貴徳
    埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
  • 金村 尚彦
    埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>人体には関節の自由度に対し多くの筋が存在し冗長性を持つため,運動に対して筋がどのような働きをしているのかを複雑にする。現状一般的に行われている三次元動作解析と筋電図による計測では,筋の活動時期や量を運動と比較するのみで,筋がどの関節のどの運動に働いているかを確証することは困難である。一方で筋の働きを実証する方法として筋骨格シミュレーションがあり,特定の筋の出力を増減させるなど生体実験で行えないシミュレーションが可能である。筋骨格モデルでは筋冗長性の配分問題に対し最適化手法を用いその解を得る。一方でシミュレーション結果の妥当性が課題となっている。本研究の目的は筋骨格モデルで推定される筋活性度と筋電図を比較し,シミュレーションの妥当性を検討することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は健常成人男性3名,課題は至適歩行速度で30秒間歩行した。計測機器は17台の赤外線カメラによる三次元動作解析装置(VICON;100Hz),床反力計付きトレッドミル(BERTEC;1000Hz),表面筋電図12ch(DELSYS;1000Hz)を使用した。マーカーはPlug in Gait fullbody AImodelを用いた。表面筋電図電極は左右の脊柱起立筋,右側の腹直筋,大臀筋,中臀筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,半腱様筋,大腿二頭筋長頭,大内転筋,内側広筋,外側広筋,腓腹筋内側頭,長腓骨筋,前脛骨筋,ヒラメ筋の計16筋に貼付した。OpenSimを用い順動力学筋骨格シミュレーション解析を行った。モデルは23自由度92筋を持つモデルを使用し,被験者の体格と姿勢に合わせたモデルを作成,計測した運動学データから動作を再現した。モデルの運動と床反力の一致度を高める余剰力を算出し,筋活性度を計算した。最適化問題の目的関数は筋活性度の二乗和を最小化するものであった。得られたデータを歩行周期で時間正規化し4歩分を加算平均した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>対象者の1名はシミュレーション過程の誤差により除外した。対象者とモデルの歩行時の関節角度変化はほぼ一致したが,骨盤と膝関節がそれぞれ前傾,屈曲位で推移した。筋活動においても概ね一致したが,計測データでは脊柱起立筋が対側踵接地で大きな活動を示す一方,モデルで遅延した。また,大臀筋は計測データ・モデル共に立脚期前半の両脚支持期に活動したが,モデルで活動が延長した。外側広筋はモデルで足底接地の活動を示さなかった。大腿直筋は立脚期前半の活動がモデルで長く,遅延した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究で計測した筋活動は先行研究と類似しており,今回のシミュレーション結果は概ね妥当であったと言える。一方で相違点もあり,原因としてモデル作成の際に胸椎屈曲などの姿勢を正確に再現できなかった事や,最適化の過程で筋の同時収縮が再現されなかった事などが挙げられる。これらを改善するモデルや計算手法が今後の課題であるが,生体実験で行うことができないシミュレーション研究は理学療法の発展に貢献できると考える。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554860800
  • NII論文ID
    130005608576
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0493
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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