端坐位における骨盤肢位が呼吸機能に及ぼす影響

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  • 呼吸筋力,胸郭拡張差,横隔膜移動量における検討

抄録

<p>【はじめに,目的】横隔膜は代表的な吸気筋の一つであり,Zacharkow(1988)は胸椎後弯位では肋骨下制に伴い横隔膜前方部も垂れ下がり横隔膜機能が低下すると述べている。しかし実際に横隔膜機能については検証していない。また武田ら(2015)は胸郭可動性・呼吸機能と胸椎弯曲角度・腰椎弯曲角度・骨盤後傾角度の関係について重回帰分析を行った結果,骨盤後傾角度が胸郭可動性と呼吸機能に最も影響したと報告している。このことから横隔膜機能について検討する際,胸椎ではなく骨盤肢位について考慮する必要があると考えた。そこで本研究の目的は端坐位における骨盤肢位が呼吸機能に及ぼす影響について検証することである。</p><p></p><p>【方法】対象は呼吸器系に問題がなく,喫煙歴のない健常成人男性17名とした。年齢は20.8±1.6歳,BMIは21.2±1.4kg/m2であった。測定肢位は端座位にて骨盤前後傾中間位(以下骨盤中間位)と骨盤最大後傾位とした。各々の姿勢で呼吸筋力,胸郭拡張差,横隔膜移動量の測定を行った。呼吸筋力はオートスパイロAS-507(ミナト医科学株式会社製)を使用し,吸気筋力(以下PImax)と呼気筋力(以下PEmax)を測定した。胸郭拡張差は胸郭可動域測定装置(竹井機器工業株式会社製)を用いて剣状突起レベルで測定した。横隔膜移動量はToledoらの方法を用いた。超音波画像診断装置(日立メディコ社製)を使用し門脈左枝を同定した。門脈左枝の移動距離を横隔膜移動距離とし,最大吸気から最大呼気の間で測定した。移動距離は画像解析ソフトImageJを用いて算出した。統計学的手法は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】PImaxは骨盤中間位72.3±16.1cmH2Oと骨盤後傾位74.3±21.5 cmH2Oで有意差は認められなかった。PEmaxは骨盤中間位84.7±20.2 cmH2Oで骨盤後傾位69.3±14.4 cmH2Oと比べ有意に高い値を示した(p<0.01)。胸郭拡張差は骨盤中間位4.2±1.5cmで骨盤後傾位3.6±1.1cmと比べ有意に高い値を示した(p<0.05)。横隔膜移動量は骨盤中間位5.9±1.5cmで骨盤後傾位5.0±1.6cmと比べて有意に高い値を示した(p<0.05)。</p><p></p><p>【結論】本研究の結果より骨盤中間位と比べて骨盤後傾位では呼気筋力および胸郭拡張差,横隔膜移動量が有意に低下することが判明した。我々は骨盤後傾位で骨盤中間位と比べ肺活量が有意に低下することを検証した。これらのことから肺活量は吸気筋力ではなく骨盤肢位や胸郭拡張差,横隔膜移動量に影響を受けている可能性が示唆された。また呼吸において横隔膜を効率的に用いるためには骨盤肢位も考慮する必要性が示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554868608
  • NII論文ID
    130005608877
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0768
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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