筋力増強における神経性要因および筋肥大性要因の分析

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  • ―最大筋出力時のウェーブレット変換による筋電図周波数解析および筋厚の変化―

抄録

【目的】筋力が増強されるメカニズムとして,運動単位の動員や発射頻度の変化による神経性要因に加え,筋肥大性要因が考えられている。本報告では,6週間の筋力増強運動の過程において,神経性要因については表面筋電図の周波数解析に離散ウェーブレット変換を適用し,筋厚の変化については超音波画像診断装置を用いて,これら2要因に対して筋力増強の継時的変化を解析することで,健常者の筋力増強メカニズムの一端を明らかにすることを目的とした。【方法】健常成人男子12名を対象とした。測定項目は右上腕二頭筋等尺性最大筋力(BioDexで測定),最大筋出力時表面筋電図(電極はランドマークとの距離関係で決定し毎回同一箇所を確保,皮膚電気抵抗を5kΩ以下に前処置,電極間距離1cmで貼付),安静時筋厚(超音波画像診断装置MyLabFiveで測定)とした。測定回数は,運動開始時から毎週月曜日と終了後の合計7回。筋力強化は毎週火曜日から金曜日までの4日間実施した。毎週月曜日に測定した最大筋力の70%を筋力強化の負荷量として設定し,1セット10回,1日3セットを実施した。筋電図解析は切出した5秒間の筋電波形に対して離散ウェーブレット変換(Daubechies N=10のウェーブレット関数を使用)を行い,1ms毎の瞬時周波数スペクトルの中央値とそのスペクトルの積分値を算出し加算平均した。統計処理(SPSS for Windows)には,それぞれの変化について一元配置分散分析を行い,多重比較にはTukey法を用いた(有意水準は5%未満とした)。【結果】1.上腕二頭筋の最大筋力を分散分析した結果,有意差(p<0.01)が認められた。多重比較では,開始時に対して2週以後の全てにおいて有意(p<0.01)に増加した。2.瞬時周波数スペクトルの中央値は開始時に対して2週目に周波数が低下,3-4週にかけて上昇,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。3.瞬時周波数スペクトルの積分値は開始時に対して2週目に筋活動量が増加し,3-4週にかけて低下,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。4.上腕二頭筋厚における多重比較の結果は,初回測定に対して5-6週において有意(p<0.05)に筋厚が増加した。【結論】1.2週-3週における筋力変化は,筋収縮に参加した筋線維は低周波成分(typeI群)が主であり,その筋活動が高くなった結果である。3週-4週の期間では,高周波成分(typeII群)が動員され始めた。2.5週-6週における筋力の増加は,主に筋肥大によるものと考える。3.本研究の結果から,表面筋電図周波数解析に対して離散ウェーブレット変換を適用すると,最大筋出力変化とその要因である神経系要因について把握できる可能性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554928512
  • NII論文ID
    130005417544
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0612
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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