筋萎縮後の再荷重による微細筋損傷と炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーとの関連

DOI
  • 勝田 若奈
    帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野 国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション科
  • 廣瀬 昇
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 帝京大学神経内科
  • 相原 正博
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科
  • 斉藤 史明
    帝京大学神経内科
  • 萩原 宏毅
    帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野 帝京科学大学医療科学部理学療法学科 帝京大学神経内科

抄録

<p>【はじめに,目的】長期間にわたる不動は廃用性筋萎縮の原因となるため,早期より運動療法が広く実践されている。しかし,運動療法による再荷重は骨格筋に対し機械的刺激を加えるため,本来改善させるべき骨格筋に微細な損傷が生じ筋萎縮を増悪させうる。したがって,萎縮筋に対する適切な荷重量を設定することが臨床上重要になるが,有用な指標が存在しないのが現状である。筋萎縮の機序には,炎症性サイトカインや酸化ストレスの関与が報告されている。運動時や運動終了後に炎症性サイトカインが上昇し,好中球をプライミングして活性酸素を放出し,酸化ストレスにより筋損傷を誘発するとされている。今回,筋萎縮後の再荷重の過程で生じる微細筋損傷と炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーと関連を検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】10週齢のC57BL6系雄マウスを,コントロール群(以下,Co群),ギプス固定群(以下,CI群),再荷重群(以下,RL群)に分けた。ギプス固定は右側後肢を,膝関節伸展位,足関節底屈位にて2週間固定を実施した。マウスは前肢と一側後肢でケージ内を移動でき,餌と水は自由に摂取できるようにした。再荷重群は,ギプス固定期間終了後に再荷重を1日行った。実験期間終了後に採血し,また前脛骨筋,腓腹筋,ヒラメ筋を摘出した。摘出筋は,筋湿重量計測後に凍結横断切片を作成し,ヘマトキシリン-エオジン染色にて観察した。マイクロアレイ法にて,摘出筋の遺伝子発現を網羅的に解析した。また,血液サンプルより血清を得た後,炎症性サイトカインであるIL-1β,IL-2やTNF-α血中濃度,酸化ストレスマーカーであるヒドロペルオキシド含有量,還元度を定量化した。</p><p></p><p></p><p>【結果】筋湿重量,平均筋線維径は,Co群と比較して,CI群,RL群とも低値を示した。再荷重による微細筋損傷は,腓腹筋のHE染色では明らかではなかった。血清での炎症性サイトカインの値は,IL-1β,IL-2,TNF-αもCI群で最大値を示した。骨格筋では,IL-1β発現量はCI群で増加,RL群で低下,IL-2発現量は著変なし,TNF-α発現量はRL群で低下した。血清ヒドロペルオキシドはCI群<Co群<RL群の傾向を示した。骨格筋マイクロアレイでは,Ncf1,Ncf2はCI群,RL群で発現量が増加した。Nox4はCI群で発現量が増加した。</p><p></p><p></p><p>【結論】廃用性筋萎縮と再荷重の過程で,炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーにユニークな変動がみられた。これらのプロセスに炎症や酸化ストレスが関係し,病態のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。今後,微細筋損傷との関連を,損傷を受けやすいとされるヒラメ筋や,デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルである mdxマウスを用いて,さらに詳細に検討する予定である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554934272
  • NII論文ID
    130005608713
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0733
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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